研究課題/領域番号 |
21H01006
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
早川 尚男 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (90222223)
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研究分担者 |
高田 智史 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00843757)
齊藤 国靖 京都産業大学, 理学部, 准教授 (10775753)
大槻 道夫 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (30456751)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 駆動散逸系 / 非平衡統計熱力学 / レオロジー / Mpemba効果 / 粉体 / 幾何学ポンプ / ASEP / 非対称単純排他過程 / ジャミング |
研究開始時の研究の概要 |
周期駆動した際の微小系の熱機関の理論を進展させて、幾何学的位相及びその生成カレントの役割を明らかにすることと、粉体やコロイド等の駆動された非熱的な散逸多体系の非平衡相転移を統一的な視点から理論解析を行う。本研究の実行を通して広いクラスの駆動非平衡系へ新しい物理的視点を与えるだけで無く広範な応用に有用な情報を与える事が目的となっている。
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研究実績の概要 |
繰り越しもあって2年分の研究実績をまとめて報告する。研究計画の中で最も大kな経費を占めていたのはポスドクの雇用であった。先ず21年度にポスドクの国際公募をかけて1名の雇用を決め21年10月から雇用した。その後、彼は別経費で雇用することになったので、22年度に改めて国際公募によって新たなポスドクを23年1月から雇用することになった。その雇用の切り替えの間にギャップがあり計画に若干の修正が必要になったものの、最初のポスドクとは3篇の共著論文(うち2篇は出版済或いは印刷中)を出し、順調な成果を挙げることができた。 謝辞に明記した本課題に直結する研究論文は20篇あり、PRLへの出版論文もある。また査読中の論文も多数ある。また研究分担者の高田が物理学会若手奨励賞を受賞し、代表者及び分担者の指導する学生が物理学会学生優秀発表賞に輝いた。解説等は4篇あり、東京新聞やIUPAP100周年記念オンライン講演会等アウトリーチに関連した発表が7件ある。また代表者の指導する学生3名が博士学位を取得し、そのうち1名は特任助教となった。 主な研究成果は出版済のものに限定しても、1)固有値解析に基づく粉体の剛性率の決定、2)3体問題による粉体レオロジーの特徴付け、3)摩擦の前駆現象、4)不純物を持つ多種粒子非対称単純排他課程の厳密解、5)粉体剪断系のソフト化、6)濃厚コロイドへのボール落下に対する応答、7)非マルコフ過程でのポンプ効果、8)稀薄粉体ガスの理論、9)ストレス雪崩のレオロジーへの影響等、多岐にわたっている。その他、投稿済の成果として10)多成分稀薄サスペンションの理論、11)慣性サスペンションのレオロジー相転移、12)幾何学的量子熱力学の基礎理論、13)量子ペンバ効果と呼ばれる異常緩和現象の研究がある。これらの研究成果はいずれも駆動と散逸が共にある非平衡系に対する理論的研究になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響は大きく、未だに研究代表者は出張を控えている状態であるが、本研究課題で最も大きな経費を占める人件費に関して、雇用したインド人ポスドクは非常に優秀であり、出版論文1,プレプリント2の成果を出している。また彼の雇用経費を別の経費に変えた結果、もう一人のポスドクを雇用して新たなプロジェクトを立ち上げた段階である。 また代表者と分担者はZoom等を使って常に密に連絡を取っており、共同研究は順調に進んでいる。その成果として分担者の一人が若手奨励賞、代表者、分担者の指導学生2名が学生優秀発表賞を取り、更に代表者の指導下で3名の学位取得者、分担者指導下でも1名の学位取得者が出た点で概ね順調に成果を出していると言えよう。 もちろん、論文投稿後に査読意見が厳しく、対応案を作って改訂するのに時間がかかりすぎている点は反省すべきであると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は本課題の最終年度であり、成果をまとめることは必須の課題である。そのために教科書の執筆にも取り組む予定であるし、5月には久しぶりに海外出張をして2時間講演で成果を対外的に宣伝する予定である。更に代表者が代表になって国際会議を8月に行い、組織委員として大きな国際会議2つの運営に協力しつつ成果を発表する予定である。 これまでの2年間では主に粉体関係の研究成果が出てきたが、本年度は周期的に駆動した量子系の非平衡熱力学、ペンバ効果と呼ばれる高温物体の方が低温物体より低温になる異常緩和現象等に取り組むだけでなく、新たに雇用したポスドクと協力して実験的研究にも(勿論それに対応する理論研究を同時に進めつつ)取り組む予定である。更に非平衡可解格子モデルも積極的に用いて駆動散逸系の統一的理解を目指す予定である。
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