研究課題/領域番号 |
21H01025
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
土浦 宏紀 東北大学, 工学研究科, 准教授 (30374961)
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研究分担者 |
古賀 昌久 東京工業大学, 理学院, 准教授 (90335373)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | キタエフ模型 / マヨラナ準粒子 / 超伝導量子計算素子 / 並進・回転対称性の破れたスピン3重項超伝導状態 / ジョセフソン効果 / トポロジカル超伝導 / トポロジカル論理ゲート |
研究開始時の研究の概要 |
本申請課題は,キタエフ模型で予測される新奇物性を活用した,比較的簡便な制御性を持つデバイスの理論的提案及びその実現のための物質探索を行うことを目的とする.通常,キタエフ模型の応用というと,マヨラナ準粒子の非可換統計性を活用したトポロジカルな量子計算素子が想起される.しかし,それにはマヨラナ準粒子のbraidingという極めて実現困難な操作が不可欠である.そこで本申請課題においては,キタエフ模型を活用した,braidingを伴わない量子計算素子や,マヨラナ準粒子によるスピンまたは量子位相伝播を利用した論理ゲート等の理論的提案を行い,キタエフ模型の実用化に関する新たなアプローチを展開する.
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研究実績の概要 |
キタエフ模型には量子スピン型と1次元p波超伝導型の2種類が知られており,どちらもマヨラナ準粒子を伴う.本申請課題においては,これら二つのキタエフ模型を基にした,braidingを伴わない量子計算素子や,マヨラナ準粒子によるスピンまたは量子位相伝播を利用した論理ゲート等の理論的提案を行い,その特性やノイズ耐性の評価および,第一原理計算を援用した材料探索までを包含した,キタエフ模型の実用化に関する新たなアプローチを展開する.まず1次元p波キタエフ模型に関しては,この模型を平行に配置したワイヤー対を一つのユニットとみなし,さらにこのユニット間のジョセフソン接合素子を調べてきた.初年度の研究により,ユニット間の結合強度およびワイヤー対間の位相差を制御することにより,トポロジカルジョセフソン特性をはじめ,通常の0接合と呼ばれる特性,さらにはπ接合と呼ばれる特性が得られることを見出した.このようにジョセフソン効果の位相-電流特性を外的に制御できる系は,超伝導量子計算メモリ等への応用が期待される. また,2年目の研究により,こうした多様なジョセフソン電流特性が現れる機構を,マヨラナ準粒子の描像に基づく解析により明らかにすることができた. 続いて,量子スピン型キタエフ模型に関しては,遍歴マヨラナ粒子による磁気励起伝播の応用可能性について調べてきた.キタエフ模型における磁気励起を運ぶのは電気的に中性の遍歴マヨラナ粒子である.初年度の研究により,キタエフ模型に外部磁場を印加してマヨラナ粒子にエネルギーギャップを与えることにより,磁気励起伝播のON/OFFが可能であることを見出した.また,2年目の研究により,キャリアをドープした量子スピン型キタエフ模型において,回転対称性の破れたスピン3重項の超伝導状態が発現しうることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は,1次元p波超伝導型と2次元量子スピン型の二つのキタエフ模型をもとにした新奇デバイスを理論的に提案することである.1次元p波キタエフ模型については,この模型を対にした系に注目することで,超伝導量子計算素子への応用可能性が期待される特性を見出すことができ,その起源についてもマヨラナ準粒子描像を用いて解明することができた. また,量子スピン型のキタエフ模型についても,応用上最も重要な鍵となる遍歴マヨラナ粒子流のON/OFF制御を実現するための機構を提案することができた.さらに,この模型にキャリアドープした状況を考察することにより,従来知られていた,時間反転対称性の破れたp波超伝導のみならず,空間的な回転対称性の破れた超伝導状態が発現しうることを見出すことができた.これも,制御可能なジョセフソン素子への応用が期待される. 以上のことから,平成3, 4年度の研究計画で 提示した主要な目標を達成しただけでなく,平成5年度の研究計画を円滑に進めるための基盤が確立できたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
1次元p波型キタエフ模型については,多様なジョセフソン電流特性が得られること,およびその微視的機構が明らかになった.しかしながら,1次元p波キタエフ模型は理論的に理想化された系であり,現実の量子細線からなる系においても同様のジョセフソン電流特性が見られるか否かは自明ではない.そこで ,実験的に実現可能であるような量子細線系を想定した定式化を行い,これまでに得られたジョセフソン電流特性が実現される可能性を理論的に解析する.さらに,このジョセフソン電流特性の外部擾乱への耐性についても解析を行う. 一方で量子スピン型キタエフ模型については,遍歴マヨラナ粒子流をON/OFF制御するための機構をさらに追求し,キタエフ模型で期待されるトポロジカル相の応用可能性等についても明らかにする.さらに,この模型にキャリアドープした状況における,並進・回転対称性等が破れた新奇な超伝導状態および量子状態の理論的探索を行う.これらの成果をまとめて,2種のキタエフ模型に基づく新奇デバイス構築に関する学理基盤を確立する.
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