研究課題/領域番号 |
21H01029
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長尾 全寛 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (80726662)
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研究分担者 |
大島 大輝 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (60736528)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
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キーワード | スキルミオン / 磁気構造観察 / 顕微鏡 / ホール効果 / スピントロニクス |
研究開始時の研究の概要 |
磁気スキルミオンは安定な粒子として振る舞い、超低密度電流駆動を示すことからスキルミオンを情報キャリアとして利用する応用的価値に注目が集まっている。特に、スキルミオン間相互作用が存在する高密度スキルミオンの集団的運動は、非圧縮性トポロジカル粒子流という分野横断的な舞台を提供する可能性があり、デバイス応用を目指す上でもその解明は重要である。本研究では、高密度スキルミオンの集団的運動の特性を流体力学的アプローチによって解明する。特に、高密度スキルミオンの集団的運動はスキルミオン間相互作用に起因するスキルミオン粘性流の発現が見込まれ、超高速駆動やホール粘性などの新規輸送特性の観測が期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、高密度スキルミオン粘性流の観測及びその新規輸送特性の創出に挑戦する。磁気スキルミオンは、トポロジカルな不変量によって安定な粒子として振る舞う。特に、超低密度電流によってトポロジーに由来する独特の輸送特性を示すことから、スキルミオンを情報キャリアとして利用する応用的価値にも注目が集まっている。実際、孤立した単一スキルミオンの輸送特性解明および制御を目的とした研究が理論と実験の両面から集中的に行われてきた。一方、スキルミオン粒子間相互作用が存在する高密度スキルミオンの集団的運動による輸送特性は未解明である。高密度スキルミオンの集団的運動は非圧縮性トポロジカル粒子流として分野横断的な興味深い舞台を提供し、さらに、高速処理・高記録密度メモリ等の実現を目指す上でその解明は重要な課題である。 当該年度では、スキルミオン流の粘性の観測に取り組んだ。最初に、積層超薄膜はTa/Co20Fe60B20/Ta/MgO/Ta(以下、CoFeB)を対象に、ワイヤ状試料に狭窄を施して、磁気光学カー効果顕微鏡によってスピン軌道トルクで駆動する高密度スキルミオンの運動を追跡する実験を行った。粘性が全く存在しない場合には、スキルミオン流は直線的に発散するような流れを示すはずだが、期待される効果は得られなかった。これは、CoFeBのスキルミオン密度の低さが原因であることが考えられた。そこで、高密度スキルミオンが現れることが知られているPt/Co/Taに対象を変更した。ただし、Pt/Co/Taのスキルミオンサイズは100-200nm程度のため磁気光学カー効果顕微鏡では空間分解能が不十分である。そこで、ナノサイズの磁気構造が観察可能なローレンツ電子顕微鏡(LTEM)観察に切り替えた。LTEMでは試料端にフレネル縞が生じるため、抑制手法を開発し、フレネル縞を抑えることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初対象としたTa(5nm)/Co20Fe60B20(1nm)/Ta(0.08nm)/MgO(2nm)/Ta(5nm)では、スキルミオン密度が不十分であることが判明した。各構成層の厚さを変更して、スキルミオン密度の調整に取り組んだが、この試料はスキルミオン形成条件の範囲が非常に狭く、わずかに厚さを変更しただけでスキルミオンが消失してしまう問題に直面した。さらに、スパッタ成膜装置の元素を変更した後に戻すと、前回の成膜条件でもスキルミオン形成条件が変わってしまい、成膜環境にも非常に敏感であることが分かった。そこで、スキルミオン密度が高く、形成条件が広く、調整が容易なPt/Co/Taに対象系を変更した。ただし、Pt/Co/Taのスキルミオンサイズは100-200nm程度のため磁気光学カー効果顕微鏡(LTEM)では空間分解能が不十分であるため、観察装置をナノサイズの磁気構造が観察可能なローレンツ電子顕微鏡(LTEM)観察に切り替えた。LTEMは焦点を外して観察する手法であるため、試料端では真空領域と試料領域の平均内部ポテンシャルに違いから電子線の干渉による縞(フレネル縞)が生じて磁気コントラストと覆い隠してしまう。特に、本研究では微細加工した資料を対象とするため、両端からのフレネル縞が重畳して、さらに磁気コントラストが不明瞭になる。そのため、フレネル縞を避ける必要がある。そこで、真空領域と試料端の平均内部ポテンシャルの差を少なくするため、微細加工時に穴が開く(真空になる)まで試料を削らず、薄く残し、そこをPtで埋めることでフレネル縞を抑制することに成功した。以上の状況から、現時点で、電流印加によるPt/Co/Taのスキルミオン粘性流の観察まで到達していないため、やや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、Pt/Co/Taに電流印加を行って、スキルミオン粘性のローレンツ電子顕微鏡観察を実施する。名古屋大学超高圧電子顕微鏡施設には電流印加ホルダーが備えてあるため、このホルダーを用いる。また、Pt/Co/Taは構成層の厚さや繰り返し層数を変えることでスキルミオンサイズおよび密度の調整が容易であるため、様々な試料を作製して、本研究において適切な条件を見出す予定である。ただし、ローレンツ電子顕微鏡観察における電流印加は初めての取り組みであり、電流によって発生する磁場が、電子顕微鏡の電子線および微細加工した試料(電子顕微鏡観察のため、Ta/Co20Fe60B20/Ta/MgO/Ta 試料よりPt/Co/Ta試料の方が小さくなっている)に影響を与える可能性がある。そのため、電磁界シミュレーションによって磁場分布を求め、試料形状・サイズを検討することも念頭に置いている。 また、2022年度の研究過程において、無磁場でスキルミオンが形成される条件を見出しており、2023年度に計画していたホール粘性効果の実験において、解釈が難しくなる磁場の影響を取り除いて実験できる状況になった。そのため、無磁場でスキルミオンが形成される試料を中心として実験を行う予定である。
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