研究課題/領域番号 |
21H01041
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大槻 純也 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (60513877)
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研究分担者 |
吉見 一慶 東京大学, 物性研究所, 特任研究員 (10586910)
野村 悠祐 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (20793756)
品岡 寛 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (40773023)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 強相関電子系 / 磁性 / 超伝導 / 第一原理計算 / 多極子秩序 / 動的平均場法 / データ科学 |
研究開始時の研究の概要 |
未知なる機能物性の開拓とそれを実現する物質開発は、物性物理学における重要な研究テーマである。特に近年では、データ科学や機械学習を応用して、コンピュータ上で物質探索を行う方法が著しく発展している。しかしながら、その応用において重要な役割を果たす第一原理計算は強相関化合物の記述には不十分である。そのため、これらデータ科学的アプローチの応用は、「非」強相関化合物に限られている。本研究は、磁性や超伝導などの機能物性を第一原理的に記述する実用的な理論を構築し、強相関化合物の物質設計に向けた基礎を作ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、動的平均場法を用いた強相関化合物の第一原理計算法(DFT+DMFT法)の発展とその応用に取り組む。全研究期間を通した研究計画は、DFT+DMFT法に関連した理論構築とその適用範囲を検証する“基礎”と適用限界の範囲で強相関化合物の物質設計に応用する“応用”に分かれる。そのうち、本年度は基礎に取り組み、以下の成果を得た。 4f電子を含む希土類化合物は、4f電子の軌道角運動量L=3と強いスピン・軌道結合に起因した多極子の自由度を持ち、低温で様々な相転移を示す。実際に観測される多極子秩序は、転移温度が1~10ケルビン程度と小さく、また、多体効果が重要であるため、第一原理計算によって導出することは難しい。本研究では、DFT+DMFT法を応用し、我々が考案したスピン・軌道感受率の簡易計算公式を用いることで、多極子感受率および多極子相互作用の計算を実行した。具体的には、多極子秩序の典型物質であるCeB6を対象として、第一原理計算による電子構造と4f電子の軌道自由度を正確に考慮した。相互作用には回転対称性のあるスレーター型の相互作用を用い、結晶の対称性を壊さないように注意して多体効果を扱った。これにより、対称性から許される全ての多極子感受率および多極子相互作用を得た。その結果、実際のCeB6で観測されている反強四極子秩序を再現することに成功し、その転移温度も実験と同程度の大きさとなった。この結果は、DFT+DMFT法に基づく我々の計算の信頼性を示しており、今後、より複雑な希土類化合物の多極子秩序を議論する際の基礎となる。この成果を論文にまとめ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DFT+DMFT法を実際の化合物に応用し、実験を再現する結果を得ることができた。また、この成果を論文を投稿した。これにより、次年度により複雑な化合物への応用に進むことができるため、順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの研究で、多極子秩序の典型物質であるCeB6の反強四極子秩序を再現できた。最終年度となる次年度は、この手法を理論的な扱いの難しい系に適用し、理論の適用限界を明らかにする。具体的には、f電子が局在性だけでなく遍歴的な側面を持つウラン化合物またはf電子の電荷の自由度が重要となるサマリウム化合物を候補とする。
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