研究課題/領域番号 |
21H01056
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14010:プラズマ科学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
比村 治彦 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (30311632)
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研究分担者 |
三瓶 明希夫 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 准教授 (90379066)
廣田 真 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (40432900)
稲垣 滋 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (60300729)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
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キーワード | 2流体プラズマ / 2流体プラズマ / 非中性プラズマ / ネストトラップ / 差動回転平衡 / 渦のマージング / 正準フラックスチューブ / 荷電粒子トラップ |
研究開始時の研究の概要 |
プラズマを電荷をもたないが電流を流すことのできる電離気体とみなす考え方を1流体プラズマ近似と呼ぶ。この1流体近似はあらっぽいが、プラズマのダイナミクスを概ね予測できる。この近似から得られる帰結の一つが、プラズマの磁束管への凍結である。ところが、プラズマを1流体とみなさない先進プラズマ物理学では、プラズマは磁束管に凍結しているのではなく、正準フラックスチューブと呼ばれる束に凍結すると予測されている。本研究では、イオン流体と電子流体が別々の速度場を有している2流体プラズマの中で各々の流体が正準フラックスチューブに凍結しているのか、この検証実験を独自に開発したプローブと画像データを用いて実施する。
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研究実績の概要 |
通常のプラズマはイオン群と電子群から成り立っている。一般的にプラズマは全体として電気的中性状態と考えられているが、先進プラズマ物理学ではイオン群と電子群は、それぞれ独立にイオンプラズマと電子プラズマを構成しており、それらイオンプラズマと電子プラズマが、2流体プラズマ状態を構成しているという考え方が流行してきている。プラズマに対する一般的な考え方とは異なるこの2流体状態、および、その時に磁力線の周りを回転している2流体プラズマの正準フラックスチューブへの凍結の様子を可視化するための研究を遂行してきている。今年度の研究実績は以下である。 (1) 2流体プラズマ状態は、電子プラズマの密度が10^{13} m^{-3}、リチウムイオンプラズマの密度が10^{11-12} m^{-3}を使いながら、それらプラズマをネストトラップ内で重畳することにより生成される。ここでこの電子プラズマだけをネストトラップ内で回転平衡状態に緩和させているにもかかわらず、イオン群が発生するという現象が発見されていたが、そのメカニズムについては不明であった。本研究では、このイオン群がネストトラップのサイドウェル内にトラップされる電子による電子衝突電離から生じることを系統的な実験と計算により初めて明らかにした。 (2) 蛍光時間が短く、かつ大口径の蛍光盤付きMCPを装置に導入する事ができたため、プラズマの2次元断面形状の時空間ダイナミクスの詳細が分かるようになった。これに高速度カメラを組み合わせることで、複数の電子フィラメントが内向きマージングをしながら装置軸上で一つになる詳細なデータを得た。現在、金沢大学の研究者と共に、このマージング現象をスーパーコンピュターでも再現できるか、シミュレーションを開始している。 (3) 差動剛体回転平衡に関する安定性の計算も海外研究者とともにを継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電子フィラメントの渦が内向きにマージングしていく様子の詳細をワンショットデータでクリアーに観測できた例は調べている限りない。電気的に同極の荷電粒子間には反発力が働くにもかかわらず、全体の一部はマージングする。この現象は長年にわたり研究されている渦ダイナミクスの一つであり、本研究からのスピンオフになる可能性があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1) ネストトラップでの非中性プラズマの重畳という方法で2流体プラズマ物理の開拓ができるのかについては、プラズマの準平衡状態の存在の有無にかかっている。この件について実験的に確立させる。これを論文化する。 (2) 2流体プラズマ状態のもっとも極端な例に相当する反差動剛体回転平衡状態の安定性解析をPICシミュレーションで完遂する。これが、検証実験のリファレンスになる。これらはシミュレーションも実験もそれぞれ論文化する。 (3) 電子フィラメント渦についても物理学としてそのダイナミクスを確立し、論文化を目指す。 (4) ここまでに実施してきた実験とシミュレーション結果、および、学会や国際会議での議論を通じて、直線型装置での2流体プラズマ研究をトーラス配位に展開することを考えてきている。実際に、プローブ法を用いて、イオン速度場と電子速度場をプラズマ中で同時測定する方法を着想した。これに関するプロポーザルへと本研究を展開させる。
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