研究課題/領域番号 |
21H01091
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
松岡 広大 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (70623403)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2021年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | 粒子識別 / 高時間分解能 / GasPM / TOF / ガス増倍 / Photon feedback |
研究開始時の研究の概要 |
Belle II実験では、世界最高輝度のSuperKEKB加速器を使って大量のB中間子等を生成し、その崩壊を高精度で測定することで、素粒子標準理論で説明できない極めて稀な事象(新物理)を探索する。本実験の主要な挑戦は、大統計のデータ蓄積と加速器からのバックグラウンドγ線による測定精度悪化の阻止の2点である。そこで本研究では、自身が考案した高時間分解能のガス増倍型光検出器「GasPM」を応用して、事象再構成効率を倍増させかつバックグラウンドγ線を識別して積極的に排除できる新型粒子識別装置を開発する。
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研究実績の概要 |
荷電粒子およびγ線の飛行時間(Time-of-Flight; TOF)を20ピコ秒の時間分解能で測定することができれば、これまでにない高精度の粒子識別が可能となる。そのために、ガス増倍型の光検出器「GasPM (Gaseous PhotoMultiplier)」を開発している。GasPMをBelle II測定器に導入して、優れた荷電粒子識別により事象再構成効率を倍増させるとともに、バックグラウンドγ線を識別して積極的に排除することでバックグラウンドγ線による電磁カロリメータの性能悪化を防ぐことを目指している。 Ne+CF4混合ガスでGasPMを動作させることができれば、可視光領域で感度の高いマルチアルカリを光電面に使用することができ、GasPMの応用幅が格段に広がる。そのため、Ne+CF4混合ガスを導入したLaB6光電面付のGasPM試作機で宇宙線試験を行ったが、ストリーマー放電がひどく、うまく動作しないことがわかった。 ガスをレーザー試験で実績のあるR134a+SF6に、光電面を真空紫外領域で感度のあるCsI(2.0mm厚の合成石英板に蒸着したもの)に変更して宇宙線試験を行い、GasPM試作機で宇宙線によるチェレンコフ光の信号を観測することができた。光電面があるときとないときの信号頻度と信号波高を比較し、ガス電離ではなく合成石英板で発生したチェレンコフ光由来の信号(検出光子数の期待値1.1個)があることが確かめられた。 短波長のチェレンコフ光をより透過させるため、2.4mm厚のMgF2の窓にCsIを蒸着した光電面に変更した。そのGasPM試作機を宇宙線で同様に試験し、正常な動作を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
マルチアルカリ光電面を劣化させにくいことから、Ne+CF4混合ガスがGasPMで用いるガスの有力候補だったが、そのガスではGasPMを動作させることができなかった。そのため、開発方針を見直し、CsI光電面とR134a+SF6混合ガスの組み合わせに変更したため、当初計画よりも大幅に遅れてしまった。さらに、ウィズコロナによる世界的な需要急拡大に伴い、GasPM小型試作機の試験に用いる実験装置部品の調達に時間がかかり、試作機試験の開始が遅れてしまった。 しかしながら、CsI光電面とR134a+SF6混合ガスを用いた試作機で、チェレンコフ光による信号を期待通りに得ることができ、遅れながらも着実に開発を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
CsI光電面とR134a+SF6混合ガスの組み合わせで、真空紫外域の波長にしか感度がないが、チェレンコフ光を検出できることが確かめられたので、この光電面とガスをベースにGasPMの研究開発を進めてゆく。 Photon feedback(アバランシェ増幅中に生成される紫外線が光電面に当たって光電子が生成され、それが別のアバランシェ増幅を引き起こすこと)による信号が本信号と重なって波形を歪めてしまい、そのために時間分解能が悪化してしまうことが目下の課題である。まずは、photon feedbackがある中でどれだけの時間分解能が得られるかを確認する。そして、photon feedbackの影響を低減する方策とphoton feedbackの頻度を抑える方策を検討する。前者の方策として、より高いサンプリングレートの波形デジタイザを用いて、本信号とphoton feedbackによる信号を弁別することを試みる。後者の方策として、紫外線を吸収するガスを加えてphoton feedbackの頻度が変化するか測定する。
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