研究課題/領域番号 |
21H01136
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
佐野 栄俊 岐阜大学, 工学部, 助教 (50739472)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,730千円 (直接経費: 12,100千円、間接経費: 3,630千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | ALMA / 超新星残骸 / 宇宙線 / 星間雲 / ガンマ線 / NANTEN2 / 再結合優勢プラズマ |
研究開始時の研究の概要 |
超新星残骸における宇宙線加速の理解は、高エネルギー天文学の重要課題である。申請者はこれまでに、超新星残骸に付随する星間雲の特定が、被加速粒子の振る舞いや非熱的放射の理解に不可欠であることを示してきた。一方で銀河系内の研究対象は、星間雲の解像が容易な視直径の大きい太陽系近傍天体に限定されていた。本研究では、電波干渉計 ALMA による高解像度分子雲探査を軸に、系内天体の大部分を占める視直径0.5度以下の遠方天体にこれを拡張する。従来の10倍以上広い空間レンジで被加速宇宙線エネルギーを定量し、宇宙線加速や非熱的放射に対する星間雲の役割を銀河スケールで明らかにする。
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研究実績の概要 |
[1] W49B に付随する分子雲の特定 (Sano et al. 2021a, ApJ, 923, 15) 超新星残骸 (SNR) W49B に付随する分子雲を、ALMA ACA による CO 輝線データの空間・速度分布および non-LTE 解析によって特定・定量した。興味深いことに、付随分子雲の密度とX線再結合優勢プラズマ (RP) の電子温度との間には負の相関が見られた。当該 RP が、衝撃波と低温分子雲との熱伝導によるプラズマの急冷却によって形成されたと考えて矛盾しない。さらに、ガンマ線光度とガス密度の比較から、W49B の被加速宇宙線エネルギーが、ガンマ線 SNR のなかで最大値を示すことがわかった。宇宙線加速効率の SNR 年齢依存性を議論するうえで重要な成果である。 [2] G346.6-0.2 に付随する星間雲の特定 (Sano et al. 2021b, ApJ, 923, 15) Mopra や NANTEN2 電波望遠鏡などを駆使し、G346.6-0.2 に付随する星間雲を特定した。1720 MHz OH メーザーとの視線速度の一致やCO/HIの膨張シェル、高いガス温度が決め手だった。ガンマ線光度の上限値も与えることで、当該天体で加速された宇宙線陽子の大部分がすでに SNR から逃走していることがわかった。一方で、RP の電子温度と分子雲との相関は見られなかったため、断熱膨張により形成されたと結論した。 [3] ALMA 観測提案の受理 (PI: 4件) ALMA Cycle 8 2021 において、SNR 方向の CO 輝線観測を提案した。結果として、ガンマ線 SNR 3C397 や、大マゼラン雲の SNR など計7天体を含む4つの観測提案が PI として採択された。観測はほぼ全て完了し、次年度以降の研究推進のための必要不可欠なデータを準備することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの世界的な蔓延による ALMA 電波干渉計の運用停止など、データ取得に若干の遅れが生じたが、当該研究課題に関する成果を、申請代表者が主著の2編の査読つき論文 (Sano et al. 2021a, ApJ, 923, 15; Sano et al. 2021b, ApJ, 923, 15) として出版できたこと、並びにこれら成果をまとめた招待総説論文の出版 (Sano & Fukui 2021, ApSS, 366, 58)、さらに ALMA 観測提案4件の採択に鑑みて、上記の区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
7個の SNR について、ALMA による CO 輝線観測データが取得できたので、これらのデータ解析を進める。具体的には、干渉計データのリダクションをはじめ、SNR シェルとの比較による空間・速度分布解析や、non-LTE 近似を用いた付随分子雲の運動温度および水素分子個数密度の定量を行う。併せて、ALMA への追加の観測提案も積極的に行う。成果は査読つき論文として出版できるように準備し、それらのブラッシュアップのために、国内外の研究会で積極的に講演を行う。
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