研究課題/領域番号 |
21H01162
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
大東 忠保 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 契約研究員 (80464155)
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研究分担者 |
前坂 剛 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 上席研究員 (70450260)
出世 ゆかり 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (80415851)
櫻井 南海子 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (30435846)
加藤 亮平 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (70811868)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 積乱雲 / レーダー / 雷 / レーダー同化 / 雲レーダー / 雲・降水同化 / ゾンデ / タイムラプスカメラ / 降水レーダー / フェーズドアレイレーダー |
研究開始時の研究の概要 |
積乱雲は強雨をもたらす雲の基本単位であり、その構造と発達プロセスを概念モデル化することは重要である。しかし、この概念モデルは、1940年代頃からほとんど変わっていない。そこで、世界で唯一の雲レーダーネットワークや、フェーズドアレイ降水レーダー、雷放電路観測によって、積乱雲を特徴づける雲・降水・雷全ての高頻度3次元観測を行う。この観測をベースに同化・数値実験も組み合わせて、積乱雲の構造と発達プロセスの概念モデルを再構築する。このことは、局地的大雨の直前予測改善や、積乱雲という大雨をもたらす対流雲システムの基本単位の理解の深化に寄与する。
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研究実績の概要 |
当該年度は夏季に関東において積乱雲の集中観測を行った。環境場ゾンデ観測については、2022年8月18日から27日の10日間につくば市の防災科学技術研究所で行った。朝8時から夕方17時の間に、時間間隔は最短で1時間、1日最大10回の高頻度放球を行った(23日、24日、25日、27日)。全部で62回の放球を行い、早期に気球が破裂した2回を除く60回で、地面からの加熱の影響が大きい下層5kmを含むデータを取得した。また、うち51回では気象庁館野の高層気象観測点における8月の対流圏海面高度に近い16.5kmよりも高い高度まで観測した。ゾンデ観測と同期させて防災科研のKaバンド雲レーダー、Xバンド降水レーダー、走査型ライダー、タイムラプスカメラ、雷放電経路3次元観測システムLMA等を用いて、雲の内部構造や発達過程に関してもデータを取得した。 1日10回のラジオゾンデ観測を行った8月23日と27日の2日間を比較した。23日は衛星から層状の雲が広がっていたことが確認されたが、27日は日射がより多く対流性の雲が多かった。温度は23日は2km以下、27日は1km以下で午前中増加し成層が不安定化した。それより上空での温度の変化は大きくなかった。1日の中での気温の変化の少なかった高度1.5km以上の気温が27日の方が低く不安定なことが、対流性の雲の多さと一致した。一方で、最下層の露点温度にはあまり変化はない。したがって、最下層の水蒸気の絶対量の変化はないが相対湿度としては温度の上昇に伴う減少がみられた。 加えて、雲の発生初期を観測した過去の雲レーダーデータを同化した数値実験を行い、雨が降る前から局地的大雨を予測することに成功した。その結果をとりまとめ、論文が国際誌に掲載された。また、積雲が積乱雲に選択的に発達する過程の解明に向けて、発達する雲のみを選択的に同化する手法の開発に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の計画のうち初年度でリモセン機器やタイムラプスカメラを中心とした観測、2年度目はこれに加えて高頻度の環境場ゾンデ観測を計画していた。複数所有している雲レーダーやX帯レーダーの一部で故障があり稼働ができなかったものがあるが、大部分のリモセン機器やタイムラプスカメラを稼働させ、おおむね目的とする積乱雲とその環境場の高頻度観測データを取得するための観測を実施できた。 計画通り順調に観測を実施できた一方で、積乱雲の環境場ゾンデ観測期間における日射が多くなく、積乱雲の発生があまり多くなかった。1年間の観測ではこのような目的とする天候が継続しないということも想定済みである。環境場ゾンデ観測はこれまでほとんど取得されていない1時間おきのデータについて取得する計画であるが、3年度目に計画どおり追加の観測をやや時期を変えて実施することによって、これまでのデータを補完する日射の多い環境場の高頻度観測データの取得を行う計画である。 数値実験については雲レーダーの同化実験が進展し、データを同化するための方法や、同化インパクトについて知見が得られた。国際誌への投稿まで進み、結果が既に掲載されており、成果とその公表について想定していた計画以上に研究が進んでいる。雲レーダーを中心とする観測データについても、特に積乱雲の発生・発達初期に関する解析が一定程度進んでおり、国際誌への投稿を念頭に成果をとりまとめているところである。
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今後の研究の推進方策 |
3年度目となり、最終年度でもある2023年度は、2年度目に行った環境場ゾンデ観測の追加観測を実施する予定である。2022年度の環境場ゾンデ観測は8月の後半に行ったが、日射の強い日との比較データとして意味があるものの、強い日射を伴った事例の数としては少なかった。そのため、2023年度は時期をずらし8月上旬を中心とする時期に環境場ゾンデ観測を実施する予定である。これに合わせてリモセン機器、タイムラプスカメラを用いた観測を実施予定であるが、雲レーダー、X帯降水レーダーなど故障が相次いでいる機器については、これまで得ているデータの解析を中心に行う。 数値実験については、2022年度までに引き続き、雲レーダーデータの最適な同化手法の確立を目指して同化実験を継続する。これまでにわかってきた知見を概念モデル化するために2022年度と2023年度に計画するゾンデ観測データを用いた理想実験を計画する。特に、初期の対流の大きさや、複数の対流が発生する際の対流間の距離等の関係に着目した実験を行う。 主に、積乱雲の発生初期の発達過程を観測データを中心に解析してきた結果について、進めてきた執筆を完了させて国際誌への投稿を計画する。これらの結果と、これまでに得られている成果、数値実験により取り組んでいる結果をとりまとめ、近年の文献の調査も加えて、積乱雲の構造と発達過程についての新しい知見を概念モデルとしてとりまとめる計画である。
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