研究課題/領域番号 |
21H01164
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
柳瀬 亘 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 主任研究官 (80376540)
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研究分担者 |
平田 英隆 立正大学, データサイエンス学部, 専任講師 (30808499)
栃本 英伍 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 研究官 (40749917)
嶋田 宇大 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 主任研究官 (60750651)
渡邉 俊一 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 研究官 (60785195)
吉田 聡 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90392969)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | ハイブリッド低気圧 / 台風 / 爆弾低気圧 / メソ低気圧 / 温帯低気圧 / ポーラーロウ / 梅雨低気圧 / メソスケール低気圧 |
研究開始時の研究の概要 |
大雨や強風を集中させる低気圧は社会に大きな影響を及ぼす。気象学の発展に伴い、「凝結熱で発達する台風か、傾圧性で発達する温帯低気圧か」という古典的分類では分けられない、様々な形態の低気圧の存在が明らかにされつつある。日本周辺でも温帯低気圧化・爆弾低気圧・梅雨低気圧・ポーラーロウなどが甚大な災害を引き起こしてきた。これらは共通して凝結熱と傾圧性が相互作用して形成する「ハイブリッド低気圧」である。本研究では未解明な点が多いハイブリッド低気圧の実態の解明を目指す。ハイブリッド低気圧の理解が進めば、台風や温帯低気圧の知見と併せて、地球上の多様な低気圧をより包括的に理解できることが期待される。
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研究実績の概要 |
本課題では2つのテーマにより、ハイブリッド低気圧の実態の解明に取り組んでいる。 テーマ1では、最先端の観測手法や高解像度数値実験などを利用し、低気圧の複雑な内部構造とその形成メカニズム等を解明する。今年度は、中緯度での台風から温帯低気圧への構造変化である温帯低気圧化に関して複数の研究を進めた。(1)機械学習の一つであるランダムフォレストと発達・定常・衰弱の三つの重線形モデルを組み込んだ新しい台風強度予測モデルの精度を検証し、従来モデルが苦手としていた温帯低気圧化に伴う強度変化の予測精度を顕著に改善しうることを明らかにした。(2)日本海上で温帯低気圧化中に北日本へ暴風をもたらした台風について、高解像度数値モデルによる再現実験の結果を基に暴風構造の変化のメカニズムについて調査を行った。(3)甚大な大雨被害をもたらした令和元年東日本台風の温帯低気圧化に伴う非対称な降水集中に関する論文が国際誌に掲載された。 テーマ2では、統計的解析と理想化実験を利用し、低気圧の多様な内部構造を生み出す環境場について体系的に解明する。今年度は、(1)気象庁大気再解析データJRA-55CおよびJRA-55を用いて、日本付近の爆弾低気圧に伴う強風イベントの長期変化を解析し、2010年以降の12月に日本の太平洋側で強風イベントが増加していることを見出した。(2)日本域の高解像度数値実験の結果を利用して、現在気候・将来気候データから冬季渦状擾乱の抽出を行った。その結果、将来は循環場が擾乱の発生に不利な環境へ変化し、擾乱が減少することを明らかにした。(3)梅雨前線帯で発生・発達する低気圧の構造および力学に関する統計的な研究の論文が国際誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各低気圧の事例研究や統計的研究については順調に進展しており、2年目までに、査読付きの国際誌で6編の論文を出版、学会や研究会などで22件の発表を行い、1冊の図書を出版した。 2022年度は当初の研究計画を一部変更した。研究代表者が12月に開催された世界気象機関(WMO)の10th International Workshop on Tropical Cyclones (IWTC-10)で「相遷移」の作業部会の取りまとめに指名されたため、ここに多くのエフォートを割くこととなった。この作業部会では温帯低気圧化・熱帯低気圧化・亜熱帯低気圧などのハイブリッド低気圧に関する研究や現業の最新の知見について十数名の専門家と協力して報告書をまとめ、論文も投稿できたため、研究の最新動向の把握と国際的な連携の強化に非常に有用であった。一方で、当初行う予定であった理想化実験は翌年度以降に重点的に行うこととした。 本課題における連携として、低気圧の包括的な解説書の企画を進めた。日本気象学会の気象研究ノート(気象研究に関する教科書的な総合報告書)の編集委員会に提案した企画が認められ、日本気象学会2022年度秋季大会では企画に関連する発表を行うことで広く意見を集めた。2023年3月に行った会合では、全体の構成と執筆者を概ね確定した。また、第4回高・低気圧ワークショップを代表者・分担者が中心となって2022年8月に開催し、数十名の参加者とともに様々な現象についての研究発表と議論を行った。 全体の統括については、2022年4月に第2回目の会合を行い、1年目の進捗と2年目の方針について議論を交わした。
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今後の研究の推進方策 |
テーマ1では、温帯低気圧化や亜熱帯低気圧等の事例解析を行い、低気圧の発達や内部構造の形成のメカニズムに関する知見を積み重ねるとともに、ハイブリッド低気圧に特有な現象の解析に有用なツールを構築していく。 テーマ2では、爆弾低気圧や冬季のポーラーロウ等について、現在気候や将来気候の統計的研究に基づき環境場と低気圧の普遍的な関係性について解明を進める。また、温帯低気圧化や梅雨期の低気圧等に関する事例解析や統計的解析の知見をより普遍的なものにするため、平均的な大気場を与えるコンポジット実験、単純化した大気場を与える理想化実験を非静力学モデルを用いて行う。 連携については、気象研究ノートの出版に向けて、研究代表者・分担者が専門とする各低気圧に関する章の執筆を開始する。
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