研究課題/領域番号 |
21H01176
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中島 淳一 東京工業大学, 理学院, 教授 (30361067)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | スロー地震 / 地震波減衰 / 減衰 / 時間変化 / 水 / 地震活動 |
研究開始時の研究の概要 |
2000年以降,世界の沈み込み帯でスロー地震が相次いで発見された。スロー地震の発生には高間隙流体が重要な役割を果たすと考えられているが,その実像の理解は十分でない。さらに,プレートから水が脱水する深さにおいて,透水係数やその時定数などの物理パラメータを決定した研究は極めて少ない。そこで本研究では,西南日本に沈み込むフィリピン海プレート周辺(おもに深さ20-40 km)を研究対象とし,A) 地震波形解析による震源パラメータの解析と地震波減衰構造推定による水分布の空間変化の検出,およびB) 地震活動(または不均質構造)の時間変化による実効的な透水係数の見積もりを目的とする。
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研究実績の概要 |
近年の研究により、沈み込む海洋プレート表面でスロースリップが発生すると、プレート境界に溜まっていた水が上盤プレートへ放出されることが明らかになってきた。茨城県南西部のフィリピン海プレート境界においては繰り返し地震をふくむプレート境界地震が多く発生し、その地震活動の直上で地殻内地震も発生している。これらの地震活動は約1年周期で繰り返し起こっており、それらはプレート境界から放出された水が原因で発生していると解釈されている。しかしながら、放出された水の移動過程やその分布域などの理解は十分でない。今年度は昨年度までに推定していたQs構造を再精査することで、プレート境界地震とその直上の地震間のQp, Qsの高精度推定を行い、Qp/Qsの時間変化を明らかにした。得られた結果によれば,Qp/Qsは約1年周期で時間変化し,その大きさはプレート境界でのすべりレートに対応する。つまり大きなすべりが生じた期間はQp/Qsが大きいという特徴がある。プレート境界から流体が供給されると、その経路上に存在するクラックに充填され,そこでミクロスケールでの流体の移動が生じると考えられる。今回推定したQp/Qsの時間変化はプレート境界からの水の供給レートに起因すると考えるとその周期性を説明できる。一方で、流体を含むクラックの存在範囲やその休刊スケール(特徴的な長さ)などに関する情報は得られていない。今後は固液複合系の理論的・実験的研究を取り入れながら結果の解釈を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地震波減衰の振幅依存を示す観測成果が得られた。しかしながら、その定量的解釈はまだ十分でなく、次年度以降に理論モデルの構築を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに解析した地震活動について、S波スプリッティング解析を行い、速いS波の振動方向から異方性の方向を分離した2つのS波の時間差から異方性の強さを推定する。その際、2011年東北地方太平洋沖地震前後での異方性パラメータの時間変化なども考慮して議論する。これらの解析が順調に進んだ場合には,その発生に流体の寄与が示唆される上盤地震のメカニズム解の推定も行い、非ダブルカップル成分の大きさから断層運動の特徴を抽出する。
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