研究課題/領域番号 |
21H01191
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
直井 誠 京都大学, 防災研究所, 助教 (10734618)
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研究分担者 |
岩田 貴樹 県立広島大学, 公私立大学の部局等(庄原キャンパス), 准教授 (30418991)
飯尾 能久 京都大学, 防災研究所, 教授 (50159547)
平野 史朗 立命館大学, 理工学部, 助教 (60726199)
中谷 正生 東京大学, 地震研究所, 教授 (90345174)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | 前震活動 / 機械学習 / 地震活動 / 深層学習 / 深層ハッシング / 類似波形探索 / 震源カタログ構築 |
研究開始時の研究の概要 |
大地震の予測には前震が活用できると期待されるが,前震は大地震の破壊のはじまりを表す本質的な前兆ではなく,前震が本震をある確率で誘発しているだけとも指摘されている.前震が本震の本質的前兆かは,前震による本震の統計的予測能力を左右するので,この検証は重要である.本研究では,非常に小さな地震を検出できる独自の稠密観測データから,長期間・多点のデータに適用可能な手法を用いて徹底的に微小な地震を検出し,超高分解能で地震活動を調べられるカタログを作成する.前震活動と地震発生場の特徴を明らかにすると共に,地震活動モデルの高度化を行うことで,前震が大地震の本質的前兆かを検討する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,独自の稠密観測データから小さな地震を徹底的に探索して超高品質の地震カタログを作成し,大地震発生前に見られる前震活動が本質的な意味での前兆かを,現実の複雑性を適切に反映した地震活動モデルで検証することである.昨年度に引き続き,高効率・高精度の地震カタログを作成する手法の開発と改善を実施した.イベント検出・走時検測・震源決定までの一連のプロセスの改良を行うとともに,昨年度実施したP波初動極性自動読み取り手法を改良し,室内AEデータの再解析,およびその結果を用いた震源パラメタ推定を実施し,結果を国際誌にて出版した.また,走時検測に用いる深層学習ネットワークの改良に加え,日本の地震観測データの標準フォーマットとなっているWINシステムに対応した自動処理プログラムを開発し,独自の稠密地表観測データから地震カタログを作成するためのルーチンを整備した.深層学習を用いて波形の情報を効率的に圧縮し,従来手法に比べて極めて少ないメモリで大量のデータの類似度を高速で判定する技術も開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基礎となるのは,最新の機械学習技術を利用した地震カタログ作成手法の確立と進化であり,それらの整備及び実データへの適用は概ね順調に進んでいる.室内実験,および地表地震観測における連続収録波形から地震カタログを作成するための,機械学習を利用したプログラム群の整備を進めた.昨年度取り組んでいた深層学習を利用した震源カタログ作成プロセスにおける震源決定の部分については,回帰問題を深層学習で解くアプローチでは精度を向上させることが不十分であることがわかったため,進化アルゴリズムやMCMCを用いた方法を試し,高速かつ高精度で解が得られることを確認した. また,類似波形探索の効率化については,画像認識分野で用いられている方法を導入して地震学においては使われていなかった新しい手法を開発するという大きな進展がみられた.波形の類似性に基づき,地震イベントを検出する手法が近年非常に活発に用いられ,多くの成果を挙げているが,その大きな計算コストが大規模なデータに適用する際の障害となっていた.この問題を解決するため,波形間の類似性を反映した距離を学習し,64bitのバイナリコードに波形情報を圧縮する深層学習ネットワークを開発し,それを元に類似波形探索を行う技術を開発した.本手法はオリジナルの波形に比べて情報を大きく圧縮できるため,多チャンネル長期間のデータに対応する情報を容易にメモリに載せることが可能となり,従来手法では不可能な規模の波形データ間の類似波形探索が実現できる.本手法を用いることで,地震観測で典型的な100 Hzサンプリングのデータに換算して5.8年分のAE波形16チャンネルのデータ間の総当り類似度判定が,わずか半日の計算で達成できることが確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
これまで,室内実験・稠密地表地震観測における連続波形データから高品質の地震カタログを作成するノウハウ及びプログラム群の整備を進めてきた.カタログ作成手法,類似波形探索手法の改善をすすめるとともに,本研究グループで所持している独自稠密観測データへの適用を進める.また,作成した地震カタログを元に,地震間トリガリングや前震検出の解析,応力場解析等を進める予定である.
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