研究課題
基盤研究(B)
地質学的な時間スケールにおいて地球表層の炭素動態を規定する第一級の制御因子の一つにケイ酸塩岩の化学風化が挙げられる。氷河によって生産される極めて反応性の高い細粒ケイ酸塩鉱物の溶解反応がCO2の消費に寄与し,これが寒冷化を促進した可能性があるが,地質イベントとの関連性に対して直接的な証拠に乏しい。本研究では海洋堆積物試料に含まれる陸源物質のリチウム同位体比を測定し岩石の風化量を復元することで,気候変動と氷床形成に対するケイ酸塩風化の変化を定量化することで,氷床量の増減と気候変動に対する岩石の分解反応がもつフィードバック効果を解明する。
気候を決定する因子として大気CO2が社会的な注目を集めている。近年,氷河によって生産される反応性の高い細粒ケイ酸塩鉱物の溶解反応がCO2の消費に寄与したことが提唱されており,これが寒冷化を促進した可能性がある。しかし地質イベントとの関連性に対して直接的な証拠に乏しい。本研究では氷河による削剥作用によって生産された物質が堆積するニュージーランドと南極海の堆積物試料の化学指標(元素比とリチウム同位体比)から,気候変動と氷床形成に対するケイ酸塩風化強度の変化を復元した。過去100万年間ではより新鮮な物質が供給されること,また氷床形成では化学風化が促進されたことが明らかとなった。
ケイ酸塩岩の化学風化によって生産された溶質が海洋に運搬されると,海洋生物の石灰化反応によって炭素が海底に固定されることで効率的な二酸化炭素の除去に寄与することが予想されるが,氷河により新鮮な物質の供給が促進されることで,より風化反応の強度が増加したことを確認した。地球上の気候レジームを左右する炭素動態の長期変動の理解に寄与する成果である。
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