研究課題/領域番号 |
21H01204
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
吉村 寿紘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生物地球化学センター), 副主任研究員 (90710070)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | 風化 / 気候変動 / 二酸化炭素 / ケイ酸塩 / 氷床 / 氷期間氷期 / 気候 / 侵食 / 氷河 / 堆積物 |
研究開始時の研究の概要 |
地質学的な時間スケールにおいて地球表層の炭素動態を規定する第一級の制御因子の一つにケイ酸塩岩の化学風化が挙げられる。氷河によって生産される極めて反応性の高い細粒ケイ酸塩鉱物の溶解反応がCO2の消費に寄与し,これが寒冷化を促進した可能性があるが,地質イベントとの関連性に対して直接的な証拠に乏しい。本研究では海洋堆積物試料に含まれる陸源物質のリチウム同位体比を測定し岩石の風化量を復元することで,気候変動と氷床形成に対するケイ酸塩風化の変化を定量化することで,氷床量の増減と気候変動に対する岩石の分解反応がもつフィードバック効果を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は氷河性の侵食・風化作用を被った堆積物試料に含まれる陸源物質の化学分析から,気候変動と氷床形成に対するケイ酸塩鉱物の風化強度の時系列変化を 捉え,気候の寒冷・温暖サイクルと岩石分解反応の効率の関係性を解明することを目的としている。氷河が形成され,新鮮な岩石が削剥されることで非常に細粒な砕屑物が生産される。細粒鉱物は非常に高い反応性をもち溶解が迅速に進行する。ケイ酸塩岩の化学風化によって生産された溶質が海洋に運搬され,海洋生物の石灰化反応によって炭素が海底に固定されることで効率的な二酸化炭素の除去に寄与することが予想される。堆積物試料は陸域と海洋で生産された多様な成分の混合物であるため,これらを化学試薬によって段階的に抽出する必要がある。本研究で海洋堆積物から分離する成分は,交換性イオン・炭酸カルシウム・ドロマイト・ケイ酸塩の4つの異なる化学画分である。交換性イオンはイオン交換によって迅速に組成が変化するので,水組成や続成作用の直接的な証拠となる。炭酸塩鉱物は海水から沈殿するものと,陸域の侵食に由来するものの混合であり,前者は海水組成を反映することが知られている。ケイ酸塩の同位体比はよく制約されているが,二次変質鉱物による特定の同位体比を濃集するため風化による変質の強度を知ることができた。化学風化の気候変動への応答は数万年スケールで進行する氷期-間氷期変動よりも長期的な変動を示しており,数十万年の時間スケールで効率的な地球表層の炭素消費に寄与したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに堆積物試料は炭酸塩,ケイ酸塩,マンガン酸化物など多様な成分の混合物であるため,これらを化学試薬によって段階的に抽出する必要がある。地質時代の気候変動に伴って氷床量の大きな増減が見いだされている南極とニュージーランドの周辺海域から採取された海底堆積物を対象に化学処理を行い,風化度の判定に用いるケイ酸塩鉱物を抽出した。現在までに,ニュージーランド沖の海洋堆積物から,交換性イオン・炭酸カルシウム・ドロマイト・ケイ酸塩の4つの異なる化学画分を合計240試料抽出し,それぞれの金属濃度から古海洋環境や鉱物の風化強度の情報を抽出した。これまでに過去100万年間の風化強度の履歴を記録しており,およそ20万年以降により新鮮な物質が堆積しており,岩石の溶解反応がより効率的に進んでいたことがわかった。また交換性イオンの測定を行い,海水と接触した際の主成分イオンの収支に関するデータを得た。抽出液に含まれる微量のリチウムを単離生成し,風化指標である安定同位体比測定を行うための前処理を継続して行っている。
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今後の研究の推進方策 |
氷床量の急激な増減が見いだされている年代の海底堆積物を対象に,イオン交換態,炭酸塩2種(海洋生物が生産した画分と,陸の岩石由来の画分を分ける),ケイ酸塩の4つの化学画分を分離し,リチウムのみを液体クロマトグラフを用いて分離を行う。今年度は堆積物の炭酸塩画分の同位体組成を分析することで,過去の海水の同位体組成の復元を試みる。従来は有孔虫など特定の化石種を拾い出して行われているが,近年バルク炭酸塩堆積物もLi同位体比の優良な記録媒体となることが提唱されているため,リチウム濃度が低い炭酸塩試料の微量リチウムを陽イオン交換樹脂による事前濃縮を行うことで効率的に単離精製する。少なくとも5万年間隔で計40点の高解像度データを得る予定である。単離精製され たリチウムはICP-MSでリチウム同位体比の分析に供する。堆積物の同位体組成と未変質のケイ酸塩岩の組成を比較することで,気候変動に対応した岩石の風化の強度の時系列変化を復元する。
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