研究課題/領域番号 |
21H01228
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
茨木 創一 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (80335190)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 産業用ロボット / 空間精度 / 誤差補正 / レーザトラッカ / ロボット切削 / 運動精度 / 幾何学モデル / 測定 |
研究開始時の研究の概要 |
現在,産業用ロボットのほとんどは,人間が操作盤を使ってロボットを動かし,それを記憶させる,「ティーチング」によってプログラムされる.ロボットが近い将来,バーチャルモデルによるプログラミングだけで運用されるようになれば,作業の成否はロボットの空間精度が決める.可動領域内の任意の点に位置決めしたとき,指令位置と実際の位置の3次元誤差を「空間誤差」と呼ぶ.本研究の目的は,ロボットの可動領域内のどこでも,空間誤差を高い精度で予測できるモデルを構築することと,それを用いたモデルベース補正法を構築することである.応用実証として,①ロボット切削加工システム.②アーム型3次元座標測定器,への適用を目指す.
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研究実績の概要 |
1. 提案したモデルの予測精度の評価: 本研究の核は,6軸ロボットの3次元位置決め誤差を高精度に予測するために,各回転軸の角度位置決め誤差をルックアップテーブルの形でモデル化した,新しい幾何学モデルを提案したことである.また,このモデルを実験で同定する手法を構築した.2022年度は,任意の動作経路に対する,位置決め誤差(軌跡精度)を提案したモデルで予測し,実際の誤差との差をレーザトラッカ測定で比較した.この実験を,様々な動作経路や,異なる幾つかの6軸ロボットを使って,実験で検証したところ,ほぼすべて条件で,従来モデルと比べて明確に高い予測精度を示すことを確認した.また,このモデルを使った誤差補正も試験し,高い補正性能を確認した.そのため,提案した6軸ロボットの幾何学モデルの基本的な有効性は,十分に確認できたと考える. 2. 提案したモデルの改善: また,提案したモデルの予想精度をさらに改善するために,特に,手先の重量物や,ロボットのリンク自体に作用する重力が,位置決め誤差に及ぼす影響をモデル化する方法を構築した. 3. アーム型座標測定器へ適用: ロボットの空間精度が性能に直結するアプリケーションとして,アーム型座標測定器へ適用を研究した.現在,ロボットの手先に計測器をつけ,対象物の3次元形状を測定する製品が急速に普及しているが,工業製品の形状測定のデファクト・スタンダードである3次元測定器 (CMM) と比べて,測定精度は大幅に低い,と一般に認識されている.提案法によって,ロボットの位置決め誤差を正確に予測できれば,アーム型座標測定器の測定精度の向上に直結する.アーム型座標測定器のモデルを同定する方法を提案し,その実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の学術的に新規な点は,6軸ロボットの3次元位置決め誤差を高精度に予測するために,新しい幾何学モデルを提案することにある.これまでに,このモデル自体,及び,このモデルを実験で同定する方法が確立できた.また,このモデルによる3次元位置決め誤差の予測精度を,様々な動作経路や,異なる幾つかの6軸ロボットを使って,実験で検証したところ,ほぼすべて条件で,従来モデルと比べて明確に高い予測精度を示すことを確認した.また,このモデルを使った誤差補正も試験し,高い補正性能を確認した.そのため,提案した6軸ロボットの幾何学モデルの基礎は確立できたと考える. また,アーム型座標測定器に対しても,研究は当初の計画以上に進展している.アーム型座標測定器はモータ駆動ではなく,歯車を持たないため,誤差原因はモータ駆動の産業用ロボットとは大きく異なるが,回転軸の角度エンコーダの測定誤差の影響のモデル化に,本研究の基本的な考え方が応用できることを示した.提案モデルを用いたアーム型座標測定器の測定誤差の補正法を確立し,それによってアーム型座標測定器の測定精度を大きく改善できることを実験で示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度までに,6軸ロボットの誤差補正を行うための新しい幾何学モデルの提案と,それを実験で同定する手法は基本的に構築できたと考える.今後は,このモデルを基礎として,以下に示すロボットの新しいアプリケーションにおいて,ロボットの位置決め精度を大きく改善させることを目的とする. 1. ロボット切削システム:本研究の成果の応用実証として,ロボットを使った切削加工システムへ適用する.ロボットの空間精度の向上によって,大きな利益が得られる第一のアプリケーションと考える.本年度は,ロボットを使って切削試験を行うための実験システムを構築し,工作機械の精度検査に関わるISO規格に規定された加工試験などを実施し,ロボットの切削精度を実験で調べる.提案した誤差補正によって,切削加工の精度を向上できることを,実際の切削加工試験で実証することを目的とする. 2. アーム型座標測定器:ロボットの空間精度が性能に直結する第二のアプリケーションとして,アーム型座標測定器へ適用を引き続き研究する.2022年度の研究によって,提案モデルによって回転軸の角度エンコーダの測定誤差を同定し,それをモデルに組み込むことで,アーム型座標測定器の測定精度を向上させる方法を構築した.今後は,主にアームの自重が測定精度に及ぼす影響をモデル化し,さらにアーム型座標測定器の測定精度を向上させる方法の構築を目指す.
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