研究課題/領域番号 |
21H01322
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田久 修 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (40453815)
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研究分担者 |
藤井 威生 電気通信大学, 先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センター, 教授 (10327710)
太田 真衣 福岡大学, 工学部, 助教 (20708523)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | センサネットワーク / イベント検知 / 合成波形識別 / 無線センサネットワーク / LPWAN / LPWA |
研究開始時の研究の概要 |
物理環境と仮想空間をセンサ情報により一体化させる、サイバーフィジカルシステムが注目されている。しかし、災害や制御などのイベントによる物理環境の急激な変化に無線センサネットワークが追従せず、イベントが見逃され、仮想と現実で物理環境が乖離する懸念がある。本研究では、全センサの同時アクセスによる合成波形からイベントを認識する「合成波形識別法」による環境適応型無線センサネットワークを確立する。そして、イベントで急変した物理環境に適応した必要時空間粒度のセンサ情報を集約する適応センサネットワークを実現する。最終的に、仮想空間から即座にイベント対策を図る持続社会を支える観測機の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
合成波形識別法として、各送信機の固有の搬送波周波数揺らぎである周波数オフセットを特徴量とする同時アクセス送信数を識別する方法を確立した。複数の送信機が同時にアクセスした場合には、周波数オフセットにより受信信号の瞬時位相角が平均位相角を基準に揺らぎが発生する。また、複数送信機の同時アクセス時には受信電力が大きく変動する特徴が受信信号に現れる。そこで、この二つの特徴量を同時に検知するサポートベクタマシンにより、同時アクセス検出法を確立した。計算機シミュレーションによる評価により高い識別精度を達成することを明らかにした。 また、多数センサを用いた電波源の位置推定法として、電波源の受信電解強度を電波分布の指紋としてとらえることで、指紋の位置固有性から位置推定を確立する方法を検討した。この際、物理量変換一括収集法を利用し、合成波形識別法として電波の有無のみを利用した検出法における位置推定精度を明らかにした。この方法は、閾値判定となり電波伝搬中に生じる振幅歪みを除去できるため、振幅歪に高い耐性がある。さらに、周波数オフセットの特徴量を利用した合成波形識別により複数のセンサが同時アクセスする場合を弁別する方法検討した。この方法により、電波の位置固有性の分析次元を拡大することができ、他の位置で発射した場合の電波源との識別性能を改善することができる。計算機シミュレーション及び実機実験を通して、位置推定精度が改善することを明らかにした。 位置推定法の基盤となる電波環境の観測法として、Radio Environmental Map (REM)の検討を進めた。本検討では、REMの作成において有限の観測点から未観測地点を推定するため、統計的な確率モデルに基づく補間法を確立し、高い再現精度を実現した。 また、パケットの送信時間と周波数を情報により切り替える方法に、受信波形から情報を識別する検証をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成波形識別の高精度化については、周波数オフセットによる受信信号の特徴傾向の識別を機械学習で実現する方法を確立した。本成果について、論文誌1件、国際会議1件、国内学会において3件の成果発表を進めており、特に国際会議での発表では、国際会議中に発表された約100件の論文の中で最も優れた論文としてBest Paper Awardを受賞している。さらに、国内研究会においては、研究奨励賞を受賞した。このように、合成波形識別法が国内外の学会で高い評価が得られており、想定通りの成果が得られている。 また、合成波形識別法に基づく位置推定については、電波伝搬に高い耐性のある検出法の確立と高精度化した合成波形識別法による位置指紋法における電波源弁別を実現した。これらを計算機シミュレーションにくわえて実機実験において有効性を明らかにしている。これらの成果は、インパクトファクタの高いIEEEの国際学術誌に採録された。それゆえ、本研究成果が様々な研究者に周知することを実現している。 位置推定精度を向上するため、REMに関する検討を進めた。REMの検討では、電波伝搬の影響を確率的にモデル形成をすることで、高精度な未観測点の補間を実現した。本手法に関して、インパクトファクタの高いIEEEの国際学術誌に2件採録し、移動通信関連のトップカンファレンスに位置づけられるVTCにおいて成果を発表した。 以上のように、本研究課題について、研究成果を多数発表し、また、学会賞や著名な国際学術誌の発表を進めるなど、国内外で高い評価を得ている点から、十分な研究成果が得られており、計画は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
合成波形識別法の応用として、パケットレベルで情報に応じてアクセス時間や周波数チャネルを切り替えるパケットレベルインデックス変調に適用することを計画している。これは、当初計画にある、複数送信機による同時アクセスが発生した場合に、合成波形識別により認識した情報を利用して、信号分離を実現する検討である。この検討では、通信路符号化技術や観測情報の統計結果を利用するため、符号化技術及び統計解析に関する調査及び改良を進める予定である。 また、合成波形識別を利用した無線アクセス制御の改良を検討する。具体的には、パケット衝突の発生を高感度に識別することにより、衝突が発生した無線機を特定して、アクセス方法を改良する帰還制御をすることで、衝突回避を実現する。その際、数理最適化理論の適用を検討し、衝突確率最小基準により、適切なアクセス方法を設計する。この手法では、計算機シミュレーションによる評価検討を中心に、衝突の識別性能を検証する実機検証も並行して実施する。 さらに、位置推定精度を向上するためのRadio Environmental Map (REM)の高度化を進める。高精度化を実現するため、三次元地図情報の活用、過去の測定結果を利用した深層学習等の利用、他のセンシングデバイス(カメラなど)を併用した方法を検討する。計算機シミュレーション及び実機検証を実施することで検証を進める。 本研究課題の最終年となるため、合成波形識別方法についての関連内容は積極的に学会発表を進める。学術誌による紙面発表に加えて、実機実装の成果については、技術展示会などでの動的展示を積極的に進め、他の研究者への積極的な周知を進める。
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