研究課題/領域番号 |
21H01358
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
都甲 薫 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30611280)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 熱電発電 / 熱電変換 / 薄膜 / 結晶成長 |
研究開始時の研究の概要 |
軽くてやわらかいプラスチック上に熱電材料を薄膜合成した「フレキシブル熱電変換シート」の社会実装には、無毒で安全かつ高い信頼性をもつエコマテリアルの選択が重要となる。本研究では、狭ギャップ環境半導体であるGe系IV族混晶の熱電薄膜としての高いポテンシャルを実証する。研究代表者のGe薄膜技術をベースとし、「混晶」「粒界」「フェルミ準位」の3要素と量子(キャリア・フォノン)輸送特性の相関を解明・制御するとともに、高環境調和型熱電変換シートとして最高性能を実証する。
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研究実績の概要 |
軽くてやわらかいプラスチック上に熱電材料を薄膜合成した「フレキシブル熱電変換シート」は、IoT社会で不可欠となる微小エネルギー(μW~mW)を利用したセンサやウェアラブル・デバイスへの応用が期待されている。その社会実装には、無毒で安全かつ高い信頼性をもつエコマテリアルの選択が重要となる。本研究では、狭ギャップ環境半導体であるGe系IV族混晶の熱電薄膜としての高いポテンシャルを実証する。研究代表者はこれまで、プラスチック上Ge膜においてキャリアの粒界障壁を劇的に低減し、多結晶薄膜として世界最高のキャリア移動度を達成した。本技術をベースとし、「混晶」「粒界」「フェルミ準位」の3要素と量子(キャリア・フォノン)輸送特性の相関を解明・制御するとともに、高環境調和型熱電変換シートとして最高性能(室温、微小温度差でμW出力)を実証することを目的とする。 昨年度は、IV族材料2元混晶(GeSiおよびGeSn)において、電気的特性を簡易に制御可能な拡散材塗布による不純物ドーピングを検討し、p型およびn型伝導制御を可能とするとともに、両材料においてGeを凌駕する優れた熱電性能を実証した。これらの知見を活かし、本年度は、3元混晶(GeSiSn)化による熱電特性の高性能化を検討した。その結果、3元混晶化が導電率と熱伝導率を共に低下させることが明らかとなった。GeSiSnの組成を最適化することによって、Ge由来の高い導電率を維持しながら低い熱伝導率を得ることに成功し、無次元性能指数はIV族半導体系熱電材料として高い値を示した。今後、プラスチック上展開に向けたプロセス温度の低減およびデバイス実証に向けて研究を推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、IV族材料2元混晶(GeSiおよびGeSn)において、電気的特性を簡易に制御可能な拡散材塗布による不純物ドーピングを検討し、p型およびn型伝導制御を可能とするとともに、両材料においてGeを凌駕する優れた熱電性能を実証した。これらの知見を活かし、本年度は、(1) 3元混晶(GeSiSn)化による熱伝導率の低減、(2)GeSiSnに対する高濃度ドーピング、および(3)組成制御による高性能化を目標として研究を遂行した。
(1) 3元混晶(GeSiSn)化による熱伝導率の低減:研究代表者のシーズ技術である多結晶Ge薄膜の熱伝導率は、熱電材料としては未だ高い。本項目では、非晶質Geの成膜中にSiとSnを蒸着することで、Ge1-x-ySixSnyの3元混晶を作製し、それらがフォノン輸送(熱伝導率)に与える影響を調査した。その結果、当初の期待通り、2元混晶よりも低い熱伝導率が得られることが判った。 (2) GeSiSnに対する高濃度ドーピング:IV族半導体で高い出力因子を得るには、キャリア密度を1019-1020 cm-3付近で制御する必要がある。本項目では、電気的特性を簡易に制御可能な拡散材塗布による不純物ドーピングを検討した。2元混晶(GeSi、GeSn)で得られた知見を活用することにより、Ge1-x-ySixSny においてもp型およびn型伝導制御を可能とした。 (3) 組成制御による高性能化:上記の研究により、Ge1-x-ySixSny においては、SiおよびSn組成が高いほど熱伝導率は低下する一方、出力因子は低下することが判明した。そこで、無次元性能指数を最大とするため、GeSiSnの組成探索を行った。その結果、p型/n型共にSi組成6%、Sn組成2%において室温における無次元性能指数はおおむね最大となり、p型で0.12、n型で0.20に達した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までにおいて、研究代表者のシーズ技術である固相成長法を用い、多結晶GeSiSn薄膜の合成と物性制御を遂行した。3年度目においては、当初の計画通り、プラスチックフィルム上への合成とデバイス実証を目指す。具体的には、以下の2項目を研究する。 (1) プラスチック上展開に向けたプロセス温度の低減 これまで、簡便な不純物ドーピング(電気的特性の制御)が可能な拡散材塗布によって伝導型およびキャリア密度を制御してきた。しかし、本法は拡散速度の遅いp型ドーパントについては、拡散にプラスチックの耐熱温度以上の高温を要する。そこで本研究項目では、プロセス温度の低減に向け、非晶質薄膜中にあらかじめドーパントを添加しておき、結晶化熱処理とともにドーパントを活性化させる手法を検討する。本法を用いた場合、単体Geにおいては低温でn型伝導制御が可能であると判っており、3元混晶に対しても有効であると期待される。 (2) フレキシブル熱電変換シートの実証 本研究の最終目標であるフレキシブル熱電変換シートの実証に向け、面内方向に温度差を設ける熱電デバイスを試作する。出力評価には、産業技術総合研究所の協力を得る。成膜やドーピング等のプロセス手順を最適化し、p/n型膜ともに劣化なく最大性能を発揮させる。出力は素子体積にも依存するため、GeSiSn膜厚と各種性能の相関を解明・制御し、デバイスにフィードバックする。
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