研究課題/領域番号 |
21H01369
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土井 俊哉 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (30315395)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | 高温超伝導線材 / 導電性中間層 / エピタキシャル成長 / 結晶配向制御 / 立方体集合組織Cu / 圧延再結晶集合組織 / 立方体集合組織Cuテープ / 導電性酸化物 / 高温超伝導 / 酸素拡散 |
研究開始時の研究の概要 |
高温超伝導が社会に広く普及するためには、REBa2Cu3O7(90 K以下の温度で電気抵抗が0になる)を用いた高温超伝導線材の大幅な低価格化が必要であるが、現状では既存のNb-Ti合金線材(低温超伝導物質で、4.2 Kに冷却して使用しなければならない)の50~100倍もの高価格である。R123線材を低価格にするためには、現在使用されているAgを不要にすることが求められ、そのためには高温でもRE元素、Ba、Cu、酸素を通さない新しい導電性酸化物を発見する必要がある。本研究では、酸化物中の金属イオン、酸素イオンの拡散メカニズムの解明に取り組み、更に新しい導電性酸化物の発見を目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度は、2021年度の研究結果を受けて、{100}<001>圧延再結晶集合組織Cuテープ上にNiをエピタキシャル成長させた基板上に、還元性雰囲気中で (Sr1-XLaX) TiO3、(Sr1-X NdX) TiO3の薄膜試料の作製を試みた。いずれの薄膜についても適切な成膜条件を見出し、2軸配向した薄膜を得ることに成功した。 次に導電性中間層として(Sr1-XLaX) TiO3、(Sr1-X NdX) TiO3薄膜試料を形成したLa-STO/Ni/Cu試料およびNd-STO/Ni/Cu試料の上にYBa2Cu3O7を酸素雰囲気中でエピタキシャル成長させるための成膜条件の検討を行った。組成および置換率が異なると、エピタキシャル成長させるための最適な成膜条件は異なるものの、何れの組成および置換率の導電性中間層物質についても2軸配向したYBa2Cu3O7層を持ったYBa2Cu3O7/La-STO/Ni/Cu試料およびYBa2Cu3O7/Nd-STO/Ni/Cu試料を作製することに成功した。 得られた試料のX線回折測定および試料断面の電子顕微鏡観察結果より、組成、置換率によっては導電性中間層/Ni界面にNiOが生成していることが確認できた。具体的には(Sr1-XLaX) TiO3導電性中間層の方が、(Sr1-X NdX) TiO3導電性中間層よりも酸素の透過を防止する能力に優れていることを明らかにした。また、(Sr1-XLaX) TiO3についてはx=0.05~0.15の置換率とした時にNiOが最も生成しにくいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではAサイトにTi, Cr, Mn, Al, Ga、BサイトにCa, Sr, Ba, 希土類元素を配置したペロブスカイト構造を持つ導電性酸化物を候補物質として、以下のような物質設計の指針の下で多くの導電性中間層候補物質を合成し、薄膜を作製し、その特性を調査してきた。 (a) Bサイトの主成分はTiもしくはMnとし、Aサイトの平均価数を変化させることでキャリア導入を行う。或いはTi, Mnと異なる価数の元素でBサイト置換することで、キャリア導入を行う。 (b) Cuや遷移金属元素など、イオン半径の小さな元素の拡散を抑制するために、BサイトにはTiあるいはMnとイオン半径が異なる元素を置換して、拡散経路の周期性を乱す。 (c) Baや希土類など、イオン半径の大きな元素の拡散を抑制するために、AサイトにはBaとCa、Baと希土類などイオン半径や価数が異なる元素を置換して、拡散経路の周期性を乱す。 (d) 酸素イオンの拡散を抑制するために、酸素空孔濃度を下げるように組成調整する。また、格子間に酸素イオンが侵入しにくいように、格子定数が小さくなるようなペロブスカイト酸化物を設計する。 そしてこれまでに、新しくREがLaあるいはNdである (Sr1-XREX) TiO3が低い抵抗率を持ち、YBa2Cu3O7との格子整合性も良く、酸素拡散速度が遅いことを発見している。
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今後の研究の推進方策 |
そこで本年度はこの(Sr1-XLaX) TiO3および(Sr1-X NdX) TiO3を導電性中間層として短尺の高温超伝導線材を作製し、新しい導電性酸化物が高温超伝導線材の導電性中間層として有効に機能するかの検証を行う。具体的には以下の研究を実施する。 ①Sr:REの最適比率を明らかにする。 ②{100}<001>集合組織Cuテープ上にNiをエピタキシャル成長させ、その上に(Sr1-XLaX) TiO3および(Sr1-X NdX) TiO3をエピタキシャル成長させ、更にその上に高い超伝導臨界電流密度Jcを有するYBa2Cu3O7をエピタキシャル成長させた短尺の高温超伝導線材(YBa2Cu3O7/RE-STO/Ni/Cu)を作製する。 ③作製したYBa2Cu3O7/RE-STO/Ni/Cuの超伝導臨界電流密度Jcと、YBa2Cu3O7層とCu層の間の層間抵抗(~RE-STOの厚さ方向の抵抗+界面抵抗)を評価する。 ④実用レベルの超伝導臨界電流密度Jcと、YBa2Cu3O7層とCu層の間の層間抵抗が得られる導電性中間層の組成と置換率x、および導電性中間層、YBa2Cu3O7層の適切な成膜条件を明らかにし、実用レベルの高い超伝導臨界電流密度Jcと、実用レベルのYBa2Cu3O7層とCu層の間の低い層間抵抗を達成したYBa2Cu3O7/RE-STO/Ni/Cu線材を実証する。
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