研究課題/領域番号 |
21H01371
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
林 靖彦 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (50314084)
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研究分担者 |
鈴木 弘朗 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 助教 (20880553)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | 2層カーボンナノチューブ紡績糸 / ナノ空隙制御 / n型ドーピング技術 / DWCNT紡績糸熱電モジュール / カーボンナノチューブ糸 / 熱電発電 / n型ドーピング / カーボンナノチューブ / 熱電変換素子 / 炭素ナノ構造制御 / ドーピング技術 |
研究開始時の研究の概要 |
数層カーボンナノチューブ(CNT)基板から作製する乾式CNT紡績糸を用いて,立体的なp/n直列素子構造を作製し,軽量でフレキシブルの糸状熱電変換モジュールを実現する.そして,室温付近のわずかな温度差での熱発電を実現し,CNT紡績糸のような糸の熱発電物性の学理を探求する.具体的には,①半導体特性を示す2層CNT(DWCNT)の選択合成技術の開拓,②電流を印加してCNT紡績糸を高温処理し,CNT紡績糸内にある多数のナノ空隙に残留する炭素ナノ構造を制御してキャリア伝導と熱伝導を精密制御し,さらに,③有機材料に頼らない安定なn型ドーピング技術を開拓する.
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研究実績の概要 |
本研究では,基板上に合成した長尺・高密度カーボンナノチューブCNTを直接引き出し撚って作製(乾式紡績)するCNT紡績糸を使って,高効率で軽量・フレキシブルの熱電発電素子を実現し,低温領域の排熱から高効率に電力変換させる.このために本年度は,①CNTの精密層数制御で理想の2層CNT(DWCNT)を選択合成する技術の開発,②熱電変換効率を高めるCNT間およびCNTバンドル間ナノ空隙(界面)の精密制御とキャリア伝導・熱伝導の関連の解明,に関する研究をを実施した.具体的には,以下の通りである. 【研究1】「乾式紡績可能で高品質の長尺・高密度DWCNTアレイの選択合成」については,透過型電子顕微鏡TEMにより,CNT合成に不可欠の触媒金属の形状や粒径の変化を観察し,室温から合成初期のFe粒子形成過程,さらに,合成中の化学的活性種を明らかにした.これにより,CNT層数の制御に必要不可欠な条件を追究してきた.この結果,2層CNTの合成収率の向上を実現したが,熱化学気相成長装置(熱CVD)の都合で,当初目標を達成することはできなかった. 【研究2】「DWCNT紡績糸内の空隙内炭素構造の精密制御」については,研究1で合成した基板から作製したCNT紡績糸に通電加熱による高温処理で,紡績糸内部に残留するCNT合成に寄与しなかったアモルファスカーボンa-Cの構造変化の詳細を明らかにしてきた.a-Cは高温下でグラフェンなどの他次元炭素構造に変化することが分かった.シミュレーションにより予測した結果と良い一致が見出された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で,長尺高密度2層CNTを合成する熱化学気相成長装置(熱CVD)に必要な装置消耗部品の納品遅延により,CNT合成を一時的に停止した.このため,【研究1】「乾式紡績可能で高品質の長尺・高密度DWCNTアレイの選択合成」において,目標の2層CNTの選択合成の収率を達成できていない.一方,【研究2】「DWCNT紡績糸内の空隙内炭素構造の精密制御」については,当初予定の進捗を得ることができた.このような状況を総合して,「研究の進捗がやや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
進捗が遅れている【研究1】「乾式紡績可能で高品質の長尺・高密度DWCNTアレイの選択合成」においては,2層CNTの合成収率の目標を達成するため,気相雰囲気中でも影響を受けない光をプローブとするその場観察手法により,室温から合成初期のFe粒子形成過程の詳細を解明する.これにより,2層CNT(DWCNT)の合成モデルの提案につなげる. 【研究2】「DWCNT紡績糸内の空隙内炭素構造の精密制御」については,高温下のCNT間ナノ空隙のサイズを変え,a-Cからの1次元~3次元まで炭素材料の次元を制御する手法を開拓する.炭素ナノ構造次元の推測には,sp2/sp3混成軌道比で定量的に評価を行う.さらに,ナノ空隙の炭素構造がキャリア伝導と熱伝導へ与える効果,熱電変換効率との関連を解明する. 研究1,研究2に加え,【研究3】「有機材料開発に頼らない室温付近で安定したn型ドーピング技術の開発」を実施する.ドーピングの安定性は,【研究2】で実施する高温熱処理によるナノ空隙の構造変化が複雑に絡み合うため,炭素ナノ構造とドーピングの安定性の視点から研究を実施する.
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