研究課題/領域番号 |
21H01375
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
知京 豊裕 国立研究開発法人物質・材料研究機構, マテリアル基盤研究センター, 特命研究員 (10354333)
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研究分担者 |
木野 日織 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 電子・光機能材料研究センター, 主幹研究員 (70282605)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2021年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 第一原理計算 / 自動計算 / ハイエントロピー合金 / ハイスループット合成 / 自律化 / ハイスループット実験 / 原子間ポテンシャル / 結晶構造 / 機能性材料 / 機会学習 / データ駆動型材料開発 / スマート化 |
研究開始時の研究の概要 |
材料創製の分野ではデータ駆動型材料開発が注目されている。しかし、実際の材料開発は、インフォマテックスを使って予測された材料を合成し、その結果を予測モデルに還元する「材料開発サイクル」を回すことが重要である。しかし、利活用できる材料データは非常に少ない。この問題を解決するために、特定の材料分野のデータベース作成を第一原理計算の自動化で行い、機械学習などのインフォマテックス手法を使って新規材料の予測を行う。次に予想された材料を実際にハイスループット合成・計測法で評価し、教師データとしてより信頼性の高いモデルを構築する。この開発ループを回すことで新材料発見のための手法の有効性を検証する。
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研究実績の概要 |
この研究提案は最近注目されているハイエントロピー合金を機能性材料として利用するために、データ駆動型材料開発手法(マテリアルズインフォマティクス)とスマート化したハイスループット合成・評価と機械学習など融合させ、機能性材料を探索する試みである。 データ駆動型材料開発では大量の多元系材料のデータが必要になる。本研究では、周期律表からスピンにd電子をもつ元素を選び出しBCC構造とFCC構造をKKR-CPA法で計算を行うことで高速な計算を試みた。d電子系を中心として38元素の組み合わせ(38C4~7.4万通り)でハイエントロピー合金(HEA)合金等比率4元系に対して計算を進め、7万件の計算データを蓄積することができた。 求める特性をもつハイエントロピー合金の発見のためには効率的な計算が必要である。そのためにここでは多目的ベイズ最適化手法を用いて効率的に目的とする材料のデータを蓄積した。 しかし、信頼性のある材料予測のためには、もっと多くのデータが必要であることがわかった。また、ハイエントロピー合金では結晶系を固定しているために、現実的な材料予測にに一部のデータが不適切であることも分かった。 そのために、さらなる計算の高速化をめざして、機会学習を用いた原子間ポテンシャル計算を行い、多元系材料の結晶構造を高速に計算する方法の開発を進めた。 これらと並行してハイスループット実験を通じて実験データを計算データによるデータベース構築も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでは結晶構造をfccとbccに固定した4元系ハイエントロピー合金の磁性、電気抵抗など限られた範囲での計算データを蓄積してきたが、これは、計算科学でハイエントロピー合金のデータを生成することに時間がかかることに起因していた。しかし、近年、研究が進んでいる機会学習を用いた原子間ポテンシャルを用いるkととでこれまでの100倍程度、高速に多元系結晶構造が計算できることがわかった。これらの結晶系データを使った第一原理計算は、高い精度でのハイエントロピー合金のデータ生成を可能にする。このことで新材料予測精度があがり、目的とする材料が見つかる可能性が高まった。 また、ハイスループット実験でも、実験装置や計測データから利活用できるデータを生成するワークフロー、特にX線回折のスペクトルデータから視覚的に結晶構造のマップを作成きるツールの開発など進めた。 これらのツールの開発を通じて本研究の最終目的である材料開発の自動化を含む材料開発手法の完成に近づいている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題は、機会学習を用いた原子間ポテンシャルの適用範囲の拡大と多元系ハイエントロピー合金の結晶データの拡大、それを使った第一原理計算とハイスループット実験による機能性予測がどこまで可能かである。 機会学習を用いた原子間ポテンシャルは有償であるが、すでに使えるものがある。しかし、磁性などd電子の関係する原子間ポテンシャルはまだ数がすくない。これをいかに増やすかが課題である。 ハイスループット実験装置自体はおおむね完成しているが、そこからのデータ収集では、合成のプロセス条件、結晶構造計測データはほぼ、自動で計測できる。しかし、電気計測や磁化測定などは自動化しておらず、この過程がデータ収集の過程でボトルネックとなる。この部分への負担をどらだけ軽減して効率的な材料開発のワークフローを見つけることが必要である。
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