研究課題/領域番号 |
21H01393
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渋川 敦史 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (80823244)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
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キーワード | 波面整形 / ホログラフィ / 生体計測 / 光遺伝学 / 空間光変調 / マウス脳 / 生体イメージング / 生体深部計測 |
研究開始時の研究の概要 |
動物個体における生命現象を細胞スケールの分解能で観察・操作する場合,光学顕微鏡が必要になる.しかしながら,一般の光学顕微鏡において,横方向(x-y)のアクセス領域(視野)は,対物レンズによって1mm×1mmに制限される.また,深さ方向(z)のアクセス領域は,生体組織の散乱現象によって1mmに制限される.本研究では,光散乱をコントロール可能にする「コンプレックス波面整形」と光散乱を劇的に抑制する「近赤外光照射」の組み合わせによって,このようなアクセス領域の制限を突破する.また,解析的モデルやモンテカルロシミュレーションを通じて,「近赤外光領域で動作するコンプレックス波面整形」の理論を構築する.
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研究実績の概要 |
―近赤外光高速波面整形システムによるマウス脳深部への集光技術の開発― 昨年度は,世界最速となる一次元空間光変調手法(1D-SLM)の開発に成功した.今年度,昨年度に出願した当該技術に関する国内特許が認定され,さらには当該技術に関するPCT出願を行った.また,開発技術の成果発表として,論文投稿を完了し,現在査読中である.今年度,世界最速1D-SLMを基盤とした高速閉ループ型の波面整形システムの構築を行っている.現状,目標とする10ミリ秒の応答速度を持った閉ループを実現しており,今後は今後1ミリ秒以下の応答速度の実現を目指す.
―マウス脳皮質全体をカバーする超広視野対物レンズの開発 昨年度は,世界最速1D-SLMを基盤とした散乱レンズの原理実証を行った.その結果,開口数0.5と5mmの視野を同時実現できる散乱レンズを実験的に実証することができた.開口数0.5のオリンパス対物レンズの視野と比べて,およそ5倍の視野拡大に成功した.この開発技術の成果発表として,論文投稿を完了し,現在査読中である.一方で,今年度,散乱レンズは,0.1%程度の極めて低い光利用効率しか達成できない事が実験的に判明した.この点は,神経細胞の蛍光計測を行う上で,本質的な問題となることが分かった.そこで,今年度は,散乱レンズのアプローチを断念し,全く異なるアプローチでマウス脳皮質全体をカバーする超広視野レンズの実現をめざした.具体的には,空間光変調器による波面補償を前提とすることで,収差を許容する対物レンズを設計することを検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
―近赤外光高速波面整形システムによるマウス脳深部への集光技術の開発― 開発した1D- SLMを基盤デバイスとして用いることで,サブミリ秒応答のフィードバックループを持つ波面整形システムを構築している.SLMやフォトダイオード,データ収録デバイスなどのリアルタイム制御を行うため,制御プログラミング言語をMATLABからC言語に変更した.また,閉ループ型波面整形システムの基盤システムの構築は完了し,10ミリ秒の閉ループを実験的に実証した.現在は,データのPCへのオンラインストリーミングやC++によるマルチスレッド処理などを行っており,さらなる閉ループの高速化を検討している.
―マウス脳皮質全体をカバーする超広視野対物レンズの開発 マウス脳皮質全体をイメージング可能にする対物レンズを開発するため,「散乱レンズ」および「自作対物レンズと波面補償の組み合わせ」の両アプローチを,光利用効率・視野の観点から比較・検討した.その結果,後者のアプローチを選択することを決定した.現状,開口数0.2および視野10mmの広視野対物レンズを実証し,本アプローチの有用性・潜在能力を示すことに成功した.今後は,レンズの構成枚数を1枚から2~3枚程度まで増やし,開口数0.5および視野10mmの超広視野対物レンズの開発を目指す.
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今後の研究の推進方策 |
―近赤外光高速波面整形システムによるマウス脳深部への集光技術の開発― マウス脳深部での光スポット生成に向けた原理実証実験を行う.具体的には,厚さ1mmの鶏の胸肉スライスを回転ステージ上で回転させることで,時々刻々と散乱応答を変化させているマウス脳深部を模倣する.開発する高速波面整形システムを用いて,このような疑似的な動的生体組織の背後に,光スポットを生成できることを実証する.
―マウス脳皮質全体をカバーする超広視野対物レンズの開発 Zemaxソフトウェアを用いて,空間光変調器による波面補償を前提とし,波面収差を許容する対物レンズを設計・作製する.広視野レンズの設計・作製が完了した後,培養細胞を用いた走査型蛍光イメージングにより,広視野レンズの空間分解能や視野特性を評価する.さらに,開発したインビボ観察用広視野レンズをマウス脳における皮質領域のイメージングに応用展開する.
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