研究課題/領域番号 |
21H01398
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
津田 裕之 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (90327677)
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研究分担者 |
斎木 敏治 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70261196)
桑原 正史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 上級主任研究員 (60356954)
河島 整 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 総括研究主幹 (90356840)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 相変化材料 / 光スイッチ / 光導波路 / シリコンフォトニクス / 省電力光ネットワーク / シリコン導波路 / 光回路 / 光通信 |
研究開始時の研究の概要 |
相変化材料は、結晶相とアモルファス相間の相変化に伴って屈折率が数十%以上変化し、各相状態は室温で安定である。このため、相変化光スイッチは、超小型かつ自己保持性を有して省電力である。 相変化材料の相変化物性解明、低損失化と耐久性向上のための材料開発、光ネットワーク構成を意識した光スイッチの電気/光学最適化設計法の確立を目指す。 大規模相変化光スイッチが実現されれば、光ネットワークの大容量化、再構成可能な光ネットワークノードを構成可能となる。これによって、リアルタイムに大量の情報を伝達するネットワークが実現され、情報量あたりのエネルギーコストを大幅に低減して省エネルギー社会の実現に寄与する。
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研究実績の概要 |
GST、GSSTをシリコン光導波路上に装荷した場合の材料寸法と位相変化、損失の関係を検討した。Si光導波路上でGST、GSST等の相変化材料を装荷する部分は、長さ100 ミクロンのテーパ導波路により、2.0 ミクロンまで幅を広げる。相変化材料の幅は1.0 ミクロンと仮定する。マッハツェンダー型光スイッチをプッシュプル動作させる場合に90度の位相変化が必要である。約1.8 ミクロンのGST長が必要であり、アモルファス状態での損失が約1 dB、結晶状態での損失が約14 dBとなる。一方、GSST膜厚が30 nmの場合に、90度の位相変化が得られるとき、約1.7 ミクロンのGSST長が必要であり、アモルファス状態での損失が1 dB未満、結晶状態での損失が約5 dBとなる。GSTよりも高性能なマッハツェンダー型光スイッチを構成できることを示している。クロスポイント型では、導波路の交差部に相変化材料の円形薄膜を装荷する。プッシュプル動作のためにマッハツェンダー光回路の二つのアームには、90度の位相差を与えている。GSTの場合、直径0.86 ミクロンの薄膜を装荷すれば、交差あたり90度の位相変化が得られるので、各アームに一つのクロスポイントがあればスイッチ動作が可能である。一方、GSSTの場合は、直径0.95 ミクロンの薄膜を装荷すれば、交差あたり90度の位相変化が得られる。各アームに二つのクロスポイントがあれば良い。シリコン光導波路に直接電流を注入して加熱する光スイッチ、pn接合部を加熱する光スイッチ、TiNヒータによって加熱する光スイッチ、上部から光を照射して加熱する光スイッチとその構成要素を切り出した素子などが搭載されたシリコンベース回路の試作も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の研究が実施されているので、順調に推移していると考えられる。 1.様々な構造の相変化光スイッチに対して、最適化設計を実施することができた。対象材料として、GST、GSSTについての設計を終え、新規にMnTeに関しても装荷構造の検討を開始している。 2.シリコンベース回路を設計試作した。光照射による駆動のみならず、シリコン光導波路に直接電流を注入して加熱する光スイッチ、pn接合部を加熱する光スイッチ、TiNヒータによって加熱する光スイッチ、上部から光を照射して加熱する光スイッチのシリコン導波路部分が含まれる。 3.サブナノ秒パルスによるGe2Sb2Te5の熱的アモルファス化の検討を行い2次元的に均一な熱的アモルファス化に成功している。また、結晶多形相変化を示すMnTeに対して、フェムト秒パルス二光子励起による相変化を試み、β相からα相への変化を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
各種材料について光スイッチを試作するためのプロセスの確立を目指す。リフトオフを利用する方法とドライエッチングを利用する方法に対応するフォトマスクを用意する。損失、消光比、波長依存性、スイッチング過渡応答の計測、高繰り返し動作の評価を実施する。多数回の繰り返しスイッチングで劣化した光スイッチについて、電子顕微鏡や原子間顕微鏡による観察、SIMSによる相変化膜の組成などを計測し、光スイッチの劣化メカニズムを検討する。この結果を材料設計と素子設計に反映させて、性能向上を図る。材料特性改善のために、XGeTe、XSbTeなどの新しい相変化材料に対して、フェムト秒光パルスによる非熱的アモルファス化を試み、熱的アモルファス化との相の違いを調査する。相変化膜を多数回相変化させて組成分布、結晶構造を評価し、相変化材料の劣化メカニズムを検討し、耐久性向上方法を明らかにする。また、相変化膜は相変化に伴って体積も変化するため、相変化膜上下に柔らかい保護膜(例えば、ZnS-SiO2)が必要である。保護膜が相変化耐久性に大きく影響するので、保護膜の探索と耐久性評価も実施する。相変化スイッチによる半固定光配線、光フィルタなどの特性を半固定に調整するトリミングを利用した、複数の機能ブロックを有する再構成可能なプログラマブル光回路を検討する。
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