研究課題/領域番号 |
21H01426
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22030:地盤工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高井 敦史 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (30598347)
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研究分担者 |
勝見 武 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (60233764)
加藤 智大 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (80943612)
Gathuka Lincoln.Waweru 京都大学, 地球環境学堂, 特定研究員 (70885582)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
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キーワード | 地盤温度 / 溶出特性 / 力学特性 / 地下温暖化 / 室内試験 / 自然由来 / 重金属等 / 地盤汚染 / 熱的作用 / 移流分散 / 変形挙動 |
研究開始時の研究の概要 |
エネルギー需要の拡大や2050年カーボンニュートラルへの取り 組み,熱を用いたサステイナブルな社会インフラ技術の普及に伴い,地盤の温度変化を伴う様々な技術が急速に発展している。一方で,そのような地盤温度の変化が地盤環境に及ぼす影響はほとんど検討されておらず,未解明な部分が多く,実験法も確立されていないのが現状である。我が国には,自然由来で重金属等(ヒ素や鉛,フッ素など)が環境基準以上に含まれている土砂や岩石が広く分布しており,建設工事に伴い発生する膨大な基準超過土を最大限に活用するため,地盤温度の変化が力学特性や溶出特性に与える影響を定量化し,物質輸送の実態を明らかにする。
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研究実績の概要 |
力学特性への影響に関連して,複数の工業粘土と自然粘土に対し,温度条件や間隙水を変化させてコンシステンシー試験,圧密試験を実施した結果,次のことを明らかにした。1) 粘性土の圧密係数は温度が高くなるほど増加し,その上昇の程度は間隙水の粘性の変化率が支配的である。間隙水の粘性に基づいた計算上の圧密係数は23℃の時と比較すると17℃,35℃,50℃,65℃ではそれぞれ0.87倍,1.27倍,1.65倍,2.12倍となり,加温による圧密促進効果が認められる。2) 粘性土の液性限界は温度の影響を受けて変化することが確認された一方,塑性限界には温度依存性が見られない。液性限界の温度依存性は,粘土毎に異なっており,それには膨潤性粘土の活性が寄与していることが考えられる。3) 本試験の温度範囲(23~50℃)では,粘土の活性度と圧密係数には相関がある。圧密係数は粘土の活性度が高くなるほど低下するが,活性度が1.0以上になると圧密係数はほぼ一定値に収束する。 溶出特性への影響に関して,40℃と20℃の恒温条件で,自然由来の重金属等を含有するドレライトと泥岩を用いてカラム式とバッチ式の溶出試験を行い,次の結果を得た。1) 泥岩を用いたカラム試験の結果,40℃でのヒ素とフッ素の最大溶出濃度は,それぞれ20℃の約3.53倍,約0.73倍であった。フッ素は高温条件で濃度の低下が確認された。2) ドレライトを用いたカラム試験の結果、40℃条件でのホウ素最大溶出濃度は20℃の約1.75倍を示し,バッチ試験でも同様の傾向が見られた。3) 公定法で定められている6時間振とうのバッチ試験のみでは岩石の総溶出関与量を適切に評価できない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,サブテーマ1:地盤材料の物理的・水理的性質の変化,サブテーマ2:地盤材料に含まれる汚染物質の溶出特性に及ぼす影響,サブテーマ3:熱―水―力学―化学連成挙動を考慮した物質輸送のモデル化の3つのサブテーマで構成される。サブテーマ1では,温度変化に伴う地盤材料の構造と透水性の変化を明らかにする。サブテーマ2では,地盤材料に含まれる自然由来重金属等の溶出特性に及ぼす温度の影響を明らかにする。サブテーマ3では,サブテーマ1と2で得られる結果を統合し,熱―水―力学―化学連成挙動を考慮した地盤内の物質輸送モデルを構築する。 令和3年度は,サブテーマ1と2を重点的に実施する計画である。サブテーマ1に関しては,計画に従い,圧密試験により粘土のコンシステンシー特性と温度圧密の関係を一般化を行った。また,透水試験装置への温度制御機能の組み込みも並行して進めており,令和4年度に円滑に実施できる実験環境を整備した。サブテーマ2に関しては,化学分析を実施できる環境を即座に整備し,バッチ溶出試験,カラム溶出試験を異なる温度条件で実施した。また,令和4年度に実施する計画であった拡散溶出試験も先行して予備的に行い,基礎データを取得している。 以上のように,計画どおりに進捗しており,順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマ1に関しては,令和4年度は特に透水試験を行い,地盤材料の間隙構造と透水性に及ぼす影響を明らかにする。また,スメクタイト系粘土鉱物のイオン交換容量に及ぼす温度の影響を評価することで,遮水性との関係を備に明らかにする。 サブテーマ2に関しては,令和4年度は拡散溶出試験を実施する。バッチ試験やカラム試験のように水の流れを伴う試験とは異なり,静置条件下での化学的拡散による物質輸送を評価する。化学的拡散は濃度勾配を駆動力として物質が移動する現象で,流速が小さい粘性土地盤において特に影響が大きくなる。そのため,特に粘性土を対象に試験を実施し,供試体表面からの拡散フラックスを求める。この試験により,自然由来の重金属等を含む粘土層近傍における帯水層の温度変化の環境影響を議論できる。 サブテーマ3は令和5年度に行うが,各室内試験の結果に統計的解釈を加えることで一般化し,溶出特性と地盤材料特性の変化を,温度を組み込んだ関数としてモデル化する。さらに,透水性と溶出量の変化から,溶出フラックスの温度依存性を定量化する。
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