研究課題/領域番号 |
21H01439
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22040:水工学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
瀬戸 心太 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (50533618)
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研究分担者 |
久保田 拓志 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 第一宇宙技術部門, 研究領域主幹 (90378927)
山崎 大 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70736040)
山本 晃輔 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 第一宇宙技術部門, 研究開発員 (50817179)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2022年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 洪水氾濫 / マイクロ波放射計 / 地表水 / リモートセンシング / 豪雨災害 / グローバル河川モデル / 植生下の浸水 |
研究開始時の研究の概要 |
国内外で豪雨による洪水災害が頻発している。洪水発生時における浸水の観測は、様々な手法が用いられるが、観測範囲・条件・精度などの面で一長一短がある。多くの手法は、晴天時や日中に限られたり、準備のために時間を要したりすることから、必ずしも洪水氾濫発生直後の浸水情報が得られていない。降雨量や河川水位のように、浸水域や浸水深の情報を迅速に住民に周知することができれば、避難や救助活動に有益であり、被害軽減に大きく貢献すると期待できる。本研究では、人工衛星からの観測に基づく地表水マップ作成手法をさらに改良・拡張し、全球を対象に洪水氾濫浸水域を迅速に推定する手法を確立することを目的とする。
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研究実績の概要 |
GMI,AMSR2用に開発されたNDFI推定手法をSSMISのF16・F17・F18に適用し、2013年1月から2022年12月までの10年間のデータセットを作成した。GMIについても、2014年3月から2022年12月までのデータセットを作成した。さらに事例解析を行い、SSMISではGMIと比べて、分解能が粗いが、大まかな洪水の特徴を捉えていることを確認した。 また、GSMaWSのリアルタイム処理の検討を行い、SSMISの準リアルタイム処理プロダクトは、観測から約2.5時間後に受信されるため、リアルタイム処理に向いているが、NDFIで評価したところ、輝度温度バイアスに由来すると考えられるバイアスがあることが分かった。 JAXAと東京大学が開発・運用する陸域水循環シミュレーションシステムToday's Earthが推定した氾濫面積割合とNDFIを月単位で比較した。水面のシグナルを検知しづらい森林域などではその変動がやや過小評価となっている事例もあるものの、主要河川下流部においては概ね季節変動をよく捉えていることがわかった。 マイクロ波放射計で浸水域ダウンスケーリングを行う際に参照する高解像度の想定浸水頻度データを、グローバル河川モデルCaMa-Floodを用いて全球・90m解像度で構築した(CMFデータ)。既存の可視光Landsatを用いた全球浸水頻度プロダクト(GSWデータ)では過小評価されていた植生下の浸水についても表現することが可能になった。 CMFデータとGSWデータを組み合わせて、冠水可能性の全球データを作成した。これを用いて、15秒解像度での全球地表水マップ(GSMaWS Version4)を2018年7月を対象に試作した。NDFIを冠水率に変換する際の係数の温度依存性、マイクロ波放射計による観測時の降水データの影響について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に示した実施予定項目は、①-(a)GMI,AMSR2以外のセンサへの適用、①-(b)GSMaPと大気放射伝達モデルを組み合わせた補正、①-(c)複数のデータの組み合わせによる冠水可能性の全球データの作成、②プロダクトの作成・リアルタイム処理の検討、③プロダクトとToday's Earthとの比較であった。 ①-(a)についてはSSMISへの適用を行った。①-(b)についてはGSMaPを利用して観測への影響を検討した。①-(c)についてはCaMa-Flood由来のデータとGSWデータの組み合わせで全球の冠水可能性データを作成した。②についてはGMI,SSMISのプロダクトを作成し、リアルタイム処理の検討を開始した。③についてはToday's Earthとの比較を全球で行った。 このように、ほぼすべての項目について研究を実施している。さらに、本課題の最終目標である全球高解像度GSMaWS(Version 4)の試作にも着手している。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
観測頻度を大幅に向上させるために、SSMISの利用を進める。これまでの検討で、SSMISは解像度が粗いこと、輝度温度にバイアスがあることが指摘されている。解像度については、冠水可能性データを用いたダウンスケーリングにより改善できると考えている。輝度温度バイアスについては、他のセンサを基準として補正する手法を検討する。 GSMaWS Version4について試作データの解析と作成手法の改良を行う。マイクロ波放射計の観測時に降水がある場合、NDFIや冠水率の推定に影響を与えることが分かっているが、降水強度の閾値の決定や、補正が可能かについて引き続き検討する。 GSMaWSでは、森林域でのシグナルを捉えづらいことが指摘されている。この対策として、CaMa-Floodデータの利用による冠水可能性データの改善が期待できる。一方で、マイクロ波放射計自体が森林域で感度低下することを考慮して、観測可能性について考慮し、推定値に信頼度フラグを付けることも合わせて検討する。 GMI, AMSR2, SSMISのマイクロ波放射計を活用した長期の全球データセット作成を行い、リアルタイムでの情報提供も検討する。また、GSMaWSをToday's Earthや他のプロダクトと比較して検証を行う。
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