研究課題/領域番号 |
21H01465
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
尾崎 則篤 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (50294541)
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研究分担者 |
金田一 智規 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (10379901)
MOJIRI AMIN 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (50882627)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | 分流式下水道 / 汚水管 / 漏水 / 市街地 / ノンポインとソース / ノンポイントソース / 漏出 / 生活排水 |
研究開始時の研究の概要 |
下水道等の整備に伴い発生源の明らかな汚染への対策は順調に進捗しているが,一方それ以外の汚染(ノンポイント汚染)は依然問題として残されている。本研究では下水の汚水管網からの漏出の可能性に着目した。解析の中で下水道普及が概成した市街地流出域からも,生活排水にしか含まれないと思われる汚染物質の流出を認めたためである。そこで本研究では市街地ノンポイント汚染の新たな,隠れた発生源の可能性として捉えその究明を行う。本研究により,管路の劣化の下流水域への影響評価も可能となり,早期の劣化箇所特定技術という新しい維持管理技術の開発にもつながる。
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研究実績の概要 |
令和3年10月までに,雨水流出口調査(無降雨時),新規導入分析方法の確立,雨水流出口調査(無降雨時)と,雨水管網調査を行い,年度末までに,年間総負荷量の初期推定,雨水流出口調査(降雨時)を行う予定であった.しかし,当初の想定に反し,一般家庭からの意図的な排水漏出が継続的に生じている可能性があることが,管網調査により判明した.そこで排水漏出のある可能性の地点を探索し,その地点について追加的に採水調査をした.その結果として,合計4箇所の漏出点(ホットスポット)の存在を見出した.1箇所めは,単独浄化槽設置家庭からの,未処理の生活雑排水の流出であると判明した.2箇所目は,過去の下水管の遺構と思われる管に誤接続され,流出が生じていると判明した.3箇所めは,洗濯機を屋外に設置している家庭からの流出と推定された.4箇所目は継続的ななんらかの流出,それによる高値はあったものの,原因は不明であった.このように分流式下水道が普及していると見なされる区域であってもさまざまに異なる原因,理由によって予期せぬ排水の雨水系への流出があることを明らかにした.ホットスポットの摘示は,本研究の,方向性としてのひとつの最終目的であり,それを偶然に近い形で見出したことは,本研究の,方法論としての基本的な有効性を示唆したものと考えている.一方,主要なホットスポットが,そこに限られるかどうか,という点は負荷量解析などに待たざるを得ず,その点は今後の課題として浮かび上がった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
負荷量算定と別に,半意図的な生活排水の漏出を見出したことは方法の基本的な有効性を示したという観点から有効であり,またそのような場所を発見したこと自体も,その研究の成果であると考えている.すなわち本研究の,大枠におけるひとつの目的が,漏出の特定であることを鑑みれば,それを結果論的にであっても見出したことは,方法の有効性の可能性を示すものといえる.またそのような可能性が調査の中で見出されたときに,その探査に注力することは,大目的に照らし合わせて必然的な方向転換であったと考えている.今後はそれを方法としてどのように体系化し,ほかの流域においても,一定の再現性をもって有無を指摘できるか,が一つの課題として浮かび上がった.一方,そのホットスポットの指摘に注力したため,当初予定していた年間負荷量の推定は,やや粗くなったといわざるを得ない.年間負荷量の推定は,前述の一定の再現性を示すための重要な方法論の柱と認識しており,方法の確立を更に急ぎたい.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,年間負荷量の推定の完遂に力を注ぐことをひとつめの柱としたい.そのためにはこれまので方法によって確立されつつある,汚染の適切なインデックスを採用し,近郊受水域市街地貫流河川において,その負荷量の推定を行っていきたい.ここで確立しつつある適切なインデックスとは,第一にはcaffine濃度,またAHTN濃度,励起蛍光強度である.励起蛍光強度は,特定の波長が風呂の入浴剤の成分に対応しており,風呂排水のインデックスに適切であるという情報を得て実施をはかるものである.ふたつめの柱は,広島市内分流区域における発生源探査である.さまざまな情報収集の中で,合流区域が主と考えていた広島市内中心部において,例外的にかなり古い分流区域があることが判明した.供用年数からしてなんらかの漏出はあってもおかしくないような状況があり,また限られた流出調査であるが,caffeineの継続的高値を見出し,その確証をふかめつつある.本地域を対象として初年度に実施したような方法論での探査を行っていきたいと考えている.
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