研究課題/領域番号 |
21H01479
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
神野 達夫 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (80363026)
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研究分担者 |
重藤 迪子 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (90708463)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | 火山堆積物 / 地盤構造モデル / 微動 / 地震 / 減衰特性 / 微動アレイ観測 / 加久藤カルデラ / 阿蘇カルデラ / 姶良カルデラ / 地下構造 / 地震記録 / S波減衰構造 / えびの地震 / 地下構造モデル |
研究開始時の研究の概要 |
日本は火山国であるため、火山の噴出物が堆積した地域が多く、その地下構造ならびに地盤による地震動の増幅特性は複雑である。よって、このような地域の強震動予測の精度の向上には、火山由来の堆積地盤における地盤増幅特性の精査と地盤構造モデルの高度化が重要である。本研究では、既往の研究で長周期地震動の大きな地盤増幅特性が指摘された火山由来の堆積地盤上の地震観測点やその周辺の地域において、地震や微動の観測等から推定された地下構造モデルを用いた地震動シミュレーションに基づいて、火山由来の堆積地盤で長周期帯域の地盤増幅特性が大きくなる原因と減衰特性を解明し、火山由来の堆積地盤の地盤構造モデルの高度化を行う。
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研究実績の概要 |
昨年度に加久藤カルデラ(宮崎県えびの市)において、微動アレイ観測を行い、1968年えびの地震の被災地およびK-NETえびの観測点周辺における地下構造モデルの構築を行ったが、観測された微動記録の精度やRayleigh波の基本モードと高次モードの判別が困難な点があったことなどから、構築された地下構造モデルの精度は不十分であった。そこで、地下構造モデルの高精度化を目的に、再度微動アレイ観測を行った。また、加久藤カルデラ同様、昨年度に地下構造モデルの構築を行った阿蘇カルデラ北西部でも、交通ノイズの影響からその精度は不十分であったことから、再観測を行った。両地点ともに昨年度の結果より精度の高い地下構造モデルが構築でき、昨年度の結果も含めて、それぞれ物理探査学会の第147回学術講演会で発表した。 加えて、本年度の新規観測点として、既存の研究において、長周期地震動の卓越が指摘されている姶良カルデラにおいて、その長周期地震動の成因を明らかにするために、微動アレイ観測を行い、地下構造モデルの構築を行った。 一方、地震動の特性に影響を与える地震動の減衰特性は、伝播経路のQ値として評価されるが、一般に火山の周辺ではそのQ値が小さくなること(Low-Q)、すなわち地震動の減衰が大きいことが指摘されている。そこで、観測された地震記録を用いて、九州地方の火山が地震動の減衰に影響を及ぼす領域を明らかにするとともに、各火山領域でのQ値を評価することでS波減衰構造を推定した。その結果、火山フロントに沿ってLow-Qの領域が広がっており、火山直下、もしくはその近傍で特に強いLow-Qを示すこと、桜島から東へ40 kmほどの場所にLow-Qの領域が存在すること、二重スペクトル比法を用いてトモグラフィ解析を行う場合、Q値が急激に変動している場所は減衰が小さい側のQ値の算出が不安定になりやすいことなどを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の感染拡大の懸念が払拭できなかったことから、地震計の設置に関わる現地での対面交渉が必要となる地震観測については、その実施を延期したが、既存の地震観測点による観測記録を用いた地震動の分析を行い、九州地方の火山周辺の減衰構造について検討を行った。延期した地震観測については、令和5年度5月に予定されている新型コロナウィルスの感染症法上の取り扱いの変更を受けて、上記の懸念は払拭されると思われることから、それを待って実施の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに地下構造モデルの検討を行ってきた地域(阿蘇カルデラ、加久藤カルデラ、姶良カルデラ)において、これまでに行った地震記録の分析結果、既存の地震観測点の配置や構築した地下構造モデル、ならびに過去の地震被害等を考慮して、地震計設置地点を選定し、地震観測を行う。また、この観測結果に基づいて地盤震動特性についての検討を進める。 さらに、これまでに検討した地下構造モデルを踏まえ、必要なアレイ観測や単点観測などの微動観測を実施し、地下構造モデルの精度の向上を目指すとともに、1997年鹿児島県北西部地震の被災地における地下構造のモデル化についても検討を進める。 また、昨年度までに検討を行ってきた地域において、得られた地下構造モデルに基づく3次元有限差分法による地震動シミュレーションを行い、その結果や観測された地震動の分析から、火山由来の堆積地盤を有する地域において、既往の研究で指摘されている長周期地震動の成因や減衰特性などの地盤震動特性に関する現象やカルデラ内における地震動の伝播特性について検討を行う。
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