研究課題/領域番号 |
21H01483
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
池永 昌容 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (50552402)
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研究分担者 |
五十子 幸樹 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (20521983)
榎田 竜太 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (20788624)
松田 敏 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (60278603)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | ダイナミック・マス / 免震構造 / 性能変化 / 免震 / 質量可変 / 回転慣性質量ダンパー / 性能可変 / 変位依存 / 動的加力実験 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では「変位に応じて回転慣性質量が変化するダンパー」を対象に、以下の3項目の研究を実施し、このダンパーの実用化をめざす。 (1)本ダンパー導入時の免震構造物の地震時応答低減メカニズムを解明し、ダンパーの設計手法を提案する。 (2)本ダンパーを用いた動的加力実験で、実際の性能変化挙動を評価する。 (3)振動台実験で本ダンパーを導入した免震構造物全体に対する制振性能を確認する。
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研究実績の概要 |
3年間の本研究の2年目である2022年度は、以下3項目について研究成果が出た。 (a)可変質量ダンパーのダンパー改良と数値解析モデルの提案(動的加力実験と数値解析):2021年度に製作し、動的加力実験により問題点などを抽出したダンパー装置の挙動をまず詳細に分析した。分析の結果、本システムの性能の問題点としてダンパー力の方向切り替わり時の過渡応答が、作動油の挙動と関係することが推測されるが、確定はできていない。ただし数値解析モデルに改良・追加を加えるとともに、PLSベースアナログフィルタを導入することで、問題となる過渡応答を含めた本ダンパーの動的挙動はある程度の精度で追跡できた。この問題点の解決と2023年度に計画をしている振動台実験のため、当初の研究計画で想定していた可変質量ダンパーの機構を見直した。その結果、従来の油圧方式のダンパーではなく、ボールスプラインとアンギュラーベアリングを用いた減衰性能が小さな可変質量ダンパーを製作することで、上記の過渡応答に関する問題点を解決できると判断し、その設計を行った。 (b)ダンパー単体の動的加力実験とRTHSによるパラメトリックスタディ:項目(a)の挙動に問題点が残っている状態ではあるものの、可変質量ダンパーによるRTHSを実施した。RTHSでは6階建て免震建物を数値解析モデルとし、免震層に導入するダンパーを先述の可変質量ダンパーを用いた。RTHSの実験結果とすべての要素を数値解析モデルで置き換えたシミュレーション解析結果を比較したところ、概ねダンパーの挙動を反映した建物の地震時応答を表現することができた。 (c)可変質量ダンパーの適用可能な免震構造物の検討:数値解析により、近年増えつつある超高層免震建物に対する可変質量ダンパーの適用可能性と制振性能を検証した。その結果、上部構造が50階建て程度の超高層免震構造物に対しても極めて高い制振性能を実現できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画のうち、当初の計画を一部変更し(1)可変質量ダンパーの動的加力実験結果を追跡できる解析モデルの構築とシミュレーション解析の精度向上、(2)RTHSと動的加力実験によるダンパー性能確認、(3)質量可変ダンパーの適用可能性拡大の検討(数値解析)の3項目を行った。その中で項目(1)、項目(3)について追加検討等が発生したことから、やや遅れていると判断した。 (1)可変質量ダンパーの解析モデル構築については、解析モデル構築に留まらず可変質量ダンパー自体の追加改造の必要性が明確になった。そのための追加改造を年度内に終わらせることができず、計画に若干の遅れは見られる。 (2)RTHSによるダンパー性能確認試験は2021年度の計画を引き続き行ったため、当初の予定通りに終了した。ただし現在追加のRTHS実験を計画しており、2023年度6月をめどに追加RTHS実験を終了させることができる見通しである。 (3)質量可変ダンパーの適用可能性拡大の検討については、当初計画の「(3)確率統計的手法を利用した質量可変ダンパーの性能変化開始変位の設計(数値解析)」と関連した研究として遂行している。2021年度の研究成果から、多数の地震動に対する当初計画(3)の分析は困難であると判断し、限定的な地震動に対する理論構築を目指すこととなった。この計画変更に対する代替計画を検討した結果、地震動の代わりに検討建物モデルを複数種類とすることで、構築する理論に対する一般性を担保する方針を打ち出した。この検討建物の追加は無事に完遂しており、複数建物モデルに対する数値解析結果をもとに確率統計的手法を利用を現在は検討している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗状況に基づき、研究計画のうち、やや遅れ気味の当初計画「(3)確率統計的手法を利用した質量可変ダンパーの性能変化開始変位の設計(数値解析)」を通年で行う。こちらについては、用意した複数の建物モデルに対する解析は既に終わっており、確率統計的手法を組み込んだ結果考察が主であり、共同研究者(松田)と密に協議を続ける。 可変質量ダンパーの追加改造については、2023年7月をめどに改造したダンパーが製作完了となる見通しであり、完成後さらにRTHSを用いた動的加力実験を行う。また、動的加力実験後の2023年9月には東北大学所有の振動台と免震試験体を利用し、可変質量ダンパー付き免振構造物の縮小試験体による振動台実験を実施する。こちらは当初の計画通りの日程で実施可能と考えている。 また、RTHSについて可変質量ダンパーの可変質量機構のみを取り出した形での、より機構部分に焦点を当てた動的加力実験をRTHSの追加実験として実施する予定である。この追加実験で用いる装置の開発・組立ては既に終わっており、2023年6月に事前実験を行い、問題がなければそのまま本実験も執り行う。 最後に本研究のとりまとめた成果については、数値解析結果について日本建築学会構造系論文集、製作した質量可変ダンパーについては特許出願を予定しており、特に特許出願については2023年9月を目標としている。
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