研究課題/領域番号 |
21H01512
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23030:建築計画および都市計画関連
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
後藤 春彦 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70170462)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
14,820千円 (直接経費: 11,400千円、間接経費: 3,420千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
|
キーワード | 社会的健康 / 場所の文脈 / まちあるき / ガイド付きまち歩き / 主観的健康感 / 郊外住宅地 |
研究開始時の研究の概要 |
場所の文脈を編集し共有するノウハウが蓄積された「ガイド付きまち歩き」は、参加者の空間認知量を増やし、精神的疲労の回復のみならず、「主観的健康感」の向上に寄与することを実証的に明らかにする。具体的には、主に以下の三項目を実施する。①場所の文脈の豊かな歴史的市街地において、文脈情報の抽出、編集、共有のための技術開発と普遍化を行う。②場所の文脈の乏しい首都圏郊外住宅地を対象に「ガイド付きまち歩き」による介入実験を行い、その有効性を検証する。③文脈情報を発信しやすい都市デザインのあり方を提言する。
|
研究実績の概要 |
「Step1 技術開発と普遍化」として、2021年度に行なった、ガイド付きまち歩きと主観的健康感に関するウェブアンケートについて、開発した手法に基づき引き続き分析を進めた。分析成果からは、「主観的健康感と環境認知量との関連」として、居住地周辺の主観的認知度が高いこと、憩える/思い出の/案内したい/家族と出かける/交流する場所を認知していることは、主観的健康感が良いことと関連していることを解明した。さらに、分析結果をふまえて、健康格差是正のための都市計画・まちづくりのあり方について検討した。 また、ガイド付きまち歩きの設計を進めた。対象地は東京都心部の郊外に位置しながらも、豊かな場所の文脈情報を有する歴史的市街地である越谷市旧日光街道越ヶ谷宿エリアを選定した。対象地で2021年度に行ったまちづくりオーラル・ヒストリー調査の成果内容、歴史ガイドボランティアの案内内容、地域史に関する資料から情報を収集、編纂することで、まち歩きルート、ガイドスポット、ガイド内容を設定し、ガイド付きまち歩きを計画した。加えて、先行研究を元に、ガイド付きまち歩きにおける主観的健康感の変化について、心理反応と生理反応から計測する手法を検討した。 これらをふまえ、「Step2 社会実装と検証」として、20代男女14名を対象に研究仮説の実証可能性を検討するための予備実験を2023年11月18日と22日に実施した。予備実験では、両日とも参加者を2チームに分け、越谷市旧日光街道越ヶ谷宿エリアで、ガイド付きまち歩きとガイド無し(ガイドが付かない)まち歩きを体験してもらい、まち歩き前後の主観的健康感の変化を計測した。実験で得られたガイド付きまち歩きとガイド無しまち歩きの主観的健康感の変化を比較した結果からは、ガイド付きまち歩きの方が主観的健康感を向上させることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つステップのうち、「Step1 技術開発と普遍化」については、ガイド付きまち歩きと主観的健康感に関するウェブアンケートの分析より、「主観的健康感と環境認知量との関連」について成果を得ることができ、学会論文として発表することができた。 加えて、越谷市旧日光街道越ヶ谷宿エリアでのガイド付きまち歩きを計画するにあたり、同地で歴史的建造物の保存活用やまちづくりに取り組む戸建住宅主体P社や、地元のまちづくりや歴史ガイドに取り組む住民からの協力も得られ、豊富な場所の文脈情報を得ることができた。これらにより、「Step1 技術開発と普遍化」については、当初の目標達成することができた。 さらに、本研究では「Step2 社会実装と検証」のうち、ガイド付きまち歩きによる介入実験が重要な調査となる。これについて、Step1での調査を元にガイド付きまち歩きを計画し、 予備実験の実施まで、今年度は行った。予備実験の結果からは、ガイドが付かないまち歩きに比べ、ガイド付きまち歩きが主観的健康感を向上させる傾向がみられた。これは本研究当初の研究仮説である、「まちの文脈を編集し共有するノウハウが蓄積された「ガイド付きまち歩き」は、参加者の空間認知量を増やし、精神的疲労の回復のみならず、「主観的健康感」の向上に寄与する」ことの実証性を高める結果であった。これをふまえ、現在は、最終年度に実施するガイド付きまち歩きによる介入実験の実施に向けた準備を進める段階に至っている。これら内容より、本研究は現段階において、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は、「Step2 社会実装と検証」において、2023年度の実験結果をふまえ、ガイド付きまち歩きによる介入実験を実施する。具体的には、予備実験と同じく越谷市旧日光街道越ヶ谷宿エリアを対象地として、一般からの参加者を募集し、ガイド付きまち歩きとガイド無しまち歩きの比較実験を実施する。それぞれのまち歩きの前後には、心理的反応と生理的反応の計測を行う。この実験の成果を分析することで、ガイド付きまち歩きが主観的健康感の向上に寄与しているという本研究当初の仮説を実証することを目指す。なお、実験の実施にあたっては、予備実験の成果をふまえた被験者設定やまちあるきの条件設定を行う。 また、ガイド付きまち歩きを設計するにあたっての、①ルート選定、②ガイドスポット選定、③ガイド内容の編纂といった設計手法について整理・検証することで、場所の文脈情報の編集技術の普遍化と共有化を目指す。 さいごに、「Step1 技術開発と普遍化」と「Step2 社会実装と検証」の研究成果をふまえ、「Step3 提言」として、「場所の文脈情報」を発信しやすい都市デザインのあり方を検討する。
|