研究課題/領域番号 |
21H01531
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24010:航空宇宙工学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
稲守 孝哉 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50725249)
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研究分担者 |
川嶋 嶺 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (80794429)
杵淵 紀世志 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90648502)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | 宇宙プラズマ / 人工衛星 / 軌道制御 / 磁気トルカ / 軌道力学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,低軌道プラズマによる人工衛星の軌道摂動を解明し,プラズマによる力を利 用した複数衛星の新たな編隊飛行手法を構築する.はじめに,これまで未解明であった低軌 道プラズマと衛星の電磁コイルの相互作用に着目し,プラズマの運動量変化より生じる反作 用力の発生メカニズムを実験的に解明する.次に,慣性が小さくプラズマ力の影響を受けやすい小型衛星の軌道摂動を検討する.従来,保存力のみを考慮することが可能であった軌道摂動を非保存力であるプラズマ力でも扱えるよう拡張し,プラズマ力による相対軌道摂動を明らかにする.得られた成果より複数衛星による編隊飛行の維持手法を構築し次世代宇宙システムの創出につなげる.
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研究実績の概要 |
本研究では、低軌道に存在する宇宙プラズマと人工衛星に搭載された磁気トルカによる相互作用の現象に着目し、軌道制御への応用を目的としてプラズマの運動量変化より生じる反作用力(プラズマ力)の発生メカニズムを実験的に解明することを目的とする。今年度は小型衛星のエンジニアリングモデルに2.5Am2の磁気トルカを4本搭載し、軌道上の衛星コンフィグレーションと近づけた構成で実験を行った。実験では電気推進機よりプラズマ流を生成し,レーザー変位計によりプラズマ力を計測した。1年目と同じくイオン・電子質量比が軌道上環境と近く取り扱いが容易なアルゴンを用いた。その結果、イオンはローレンツ力により曲げられず磁化されないが,電子は軌道上と同程度磁化される環境を実験室環境で確認した。イオンが磁化されない環境ではあるが、抗力が発生することが分かった。Full-PIC法によるシミュレーションと比較するとシミュレーションの結果と比較して、実験結果の方が抗力が小さい結果が得られた。これらの実験の理由については考察を進めている。 また、衛星パネル面の電位を計測し、電位が上昇することを確かめた。これは磁気トルカから磁場を出力すると電子が磁化され軌道が曲げられるため衛星面に電子が流入しにくくなったためと考えられる。ただし磁場の方向によっては上記と異なる結果が得られており考察を進めている。また宇宙実証実験に向けて、衛星表面電位を計測する系の小型衛星への実装を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、小型衛星のエンジニアリングモデルに2.5Am2の大きさの磁気トルカを4本搭載し、軌道上の衛星コンフィグレーションと近づけた構成で実験を行った。実験では電気推進機よりプラズマ流を生成し,レーザー変位計によりプラズマ力を計測した。また、衛星パネル面の電位を計測し、電位が上昇することを確かめた。これらの結果より、イオンはローレンツ力により曲げられず磁化されないが,電子は軌道上と同程度磁化されることを実験室環境で確認できたと考えている。イオンが磁化されない環境ではあるが、抗力が発生することが分かった。また、Full-PIC法による数値シミュレーションを実施し、実験結果と数値シミュレーション結果の比較を行い考察を進めている。また宇宙実証実験に向けて、衛星表面電位を計測する計測系の準備を行い、小型衛星への実装の検討を進めている。 以上のように当初の予定通り、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、Full-PIC法による実験環境におけるシミュレーションを実施し、シミュレーション結果と実験結果を比較し、発生原理の確認を行う。また、プラズマ密度や流速、衛星磁気モーメントといったパラメータを軌道上環境の設定とし、Full-PIC法による数値シミュレーションを行う。 また、2年目に実施した実験結果をもとに、さらに磁気モーメントが大きな場合における衛星のパネル面の電位を計測し、電位がどの程度上昇するかを確かめ、この結果についてもシミュレーション結果と比較して考察する。これらの結果から本現象がどの程度の軌道摂動を生じさせ、軌道制御に用いることができるのか、軌道力学の観点からも考察を行う。 また、軌道上で磁気トルカがイオンに影響を及ぼすことができることを示すことを目的として、軌道上実験の準備を進める。プラズマによる力より相対軌道変更を行う電磁コイルと、電磁コイルに電力を供給する電源系を準備する。
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