研究課題/領域番号 |
21H01534
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24010:航空宇宙工学関連
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
宮村 典秀 明星大学, 理工学部, 教授 (50524097)
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研究分担者 |
五十里 哲 明星大学, 理工学部, 主任研究員 (00802977)
横堀 慎一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 学術専門職員 (10898860)
中須賀 真一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40227806)
川端 洋輔 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (80803006)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2021年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | フォーメーションフライング / 能動工学 / 補償光学 / リモートセンシング / 小型衛星 / 能動光学 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、低軌道から1m近い高分解能を実現する地球観測衛星が開発されており、今後は高頻度観測が課題である。本研究では、森林火災検知などで求められる10分程度の高観測頻度と高空間分解能の両立に向けて、静止軌道周辺に超小型衛星を配置する「静止リモセン」の学術分野を切り開くことを目指し、高空間分解能の実現に求められる大口径光学系を、複数の超小型衛星によって構成する「合成開口望遠鏡」の実現手法を提案する。実現に向けたキー技術として、超高精度フォーメーションフライト、能動光学、補償光学と、これらの協調制御に着目し、要素技術の確立と「合わせ技」による合成開口望遠鏡の地上実証を行う。
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研究実績の概要 |
近年の超小型衛星技術の進展と利用の展開は目覚しく、地球観測でも低軌道から1m近い高分解能を実現する衛星が開発されている。低軌道衛星の課題は高頻度観測であり、たとえば森林火災検知などで求められる10分程度の高頻度の実現には数百機を超える衛星群が必要となる。本提案では、そのような非常に高い観測頻度を実現するための「発想の転換」として、静止軌道周辺に超小型衛星を配置することで「静止リモセン」の学術分野を切り開くことを目指す。静止軌道からの地球観測は空間分解能の点で不利であり、高い空間分解能の実現には巨大な口径の光学系を必要とするが、それを複数の超小型衛星が共同して光学系を構成する「合成開口望遠鏡」の実現手法を提案する。そのためのキー技術は超高精度フォーメーションフライト、能動光学、補償光学、そしてこれらの協調制御である。 これまでに、超高精度フォーメーションフライトにおいて、従来実現されている精度と、補償光学で実現される波長以下の精度との間のギャップを埋め、超高精度なFFを構築する「PSF最適化手法」を提案した。今年度は、合成開口望遠鏡のハードウェアシミュレータの設計および開発を行った。さまざまな外乱要因を考慮に入れた場合でも、最終的に波長以下の精度を実現し、合成開口画像が得られることを実証した。 また、FFSATを構成する鏡衛星、撮像衛星の熱構造モデルを構築し、軌道上運用を想定した解析を行った。光学系の保持方法、光学特性を適切に設計することにより、最悪ケースであっても補償光学により補正可能な程度の変形に抑えることが可能であることを示した。 さらに、これらの成果を受け、合成開口望遠鏡の光学系の配置誤差、鏡衛星の配置を考慮に入れ、静止軌道から地上観測を行った際に得られる画像の数値計算を行った。ミラー配置の最適化と配置誤差の低減により、高い空間周波数の情報が得られることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は4つ課題を計画し研究を進めた。以下のように概ね計画通り進捗している。 (1) 超高精度フォーメーションフライト(FF)によるmm級精度の達成には、どのようなセンサやアクチュエータ、アルゴリズムが必要かを研究した。合成開口望遠鏡のハードウェアシミュレータの設計および開発を行った。さまざまな外乱要因を考慮に入れた場合でも、提案したPSF最適化手法によって、最終的に波長以下の精度を実現し、合成開口画像が得られることを実証した。 (2) 能動光学を用いたμm級精度の達成に向けて、合成開口望遠鏡を構成する分割鏡を直接制御する能動光学によって光学系の相対精度を高める手法を研究した。上記実験において、PSF最適化手法により、主鏡を構成するミラーを直接制御する能動光学により光学系の相対精度を高めることを実証した。 (3) 補償光学による観測波長の数分の1精度の達成に向けて、補償光学手法を用いた最終フェーズの調整手法を研究した。FFSATの熱構造モデルを構築し、数値計算によって補償光学により補正可能な程度の変形に抑えることが可能であることを示した。また、合成開口望遠鏡の光学系の配置誤差、鏡衛星の配置を考慮に入れ、静止軌道から地上観測を行った際に得られる画像の数値計算を行い、ミラー配置の最適化と配置誤差の低減により、高い空間周波数の情報が得られることを示した。 (4) 統合システムの構築と地上実証に向けて、光学定盤上に光源とコリメータを用いた無限遠観測システムと、鏡衛星と撮像衛星と各種センサ・アクチュエータをモデル化したFFSATのハードウェアシミュレータを構築した。さらに、数値シミュレータによる衛星のダイナミクス、軌道上外乱、熱入力を基に、ステージによる外乱を与え、コリメータを用いて無限遠を観測しながら、能動光学により目標精度を達成する手法を実証した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を統合し、静止軌道周辺に超小型衛星を配置することで「静止リモセン」の学術分野を切り開くことを目指す。静止軌道からの地球観測は空間分解能の点で不利であり、高い空間分解能の実現には巨大な口径の光学系を必要とするが、それを複数の超小型衛星が共同して光学系を構成する「合成開口望遠鏡」の実現手法を提案する。そのためのキー技術は超高精度フォーメーションフライト、能動光学、補償光学と、これらの協調制御である。本研究では要素技術を確立し、「合わせ技」による合成開口望遠鏡の地上実証を行う。 これまでに、恒星のような点光源の観測に対する、超高精度フォーメンションフライト、能動光学の実証実験を達成した。この技術によって、定期的な恒星観測や、地上の参照点の観測など、運用方法を工夫することによって、当初の高精度FFと能動光学の目的を達成することは可能である。今年度は、点光源の観測を前提とせず、地上の任意の地点を観測しながら目的を達成する手法を研究する。これにより、FFSATによる地球観測の柔軟性、即時性を大幅に高めることが可能である。 さらに、今年度構築したハードウェアシミュレータを用いて、補償光学による最終精度の実現の実証実験を行う。
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