研究課題/領域番号 |
21H01575
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
伊東 啓 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (80780692)
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研究分担者 |
守田 智 静岡大学, 工学部, 教授 (20296750)
山本 太郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70304970)
和田 崇之 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (70332450)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 社会的ジレンマ / 薬剤耐性 / 感染症 / 進化 / 疫学 / ゲーム理論 / AI |
研究開始時の研究の概要 |
抗生剤の使用と耐性菌の出現・拡散の間に起こる社会的ジレンマの存在に目を向け、Web調査と数理モデリング(マルチ・エージェント・シミュレーションの構築)を組み合わせることでヒトの行動が創り出す病原体の進化動態を理解し、耐性菌の拡散リスクを数理的に明らかにする。これにより、現代社会の一大脅威である薬剤耐性菌の世界的拡散を効果的に封じ込める戦略を総合的にデザインし、抗生剤の処方・使用方法の在り方を再検討する。
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研究実績の概要 |
研究計画の通り、日本(2回)・アメリカ・イギリス・スウェーデン・台湾・オーストラリア・ブラジル・ロシアにおいてWeb調査を実施し、計41,978人から回答を得た。回答結果の分析から、各国・地域の約15~30%の回答者が「自分は抗生剤の使用を我慢したくないが、他人には我慢してほしい」という社会的ジレンマに曝されていることが分かった。また国や地域に依らず、回答者の約半数(約50%)は「自分も他人も抗生剤の使用を控える必要はない」と回答した。これは半数の回答者が、世界的な薬剤耐性問題よりも個々人の健康を尊重して優先していることを意味しており、抗生剤の過剰使用に歯止めがかからない背景の一端が浮き彫りになった。特に性別と年齢による回答傾向の違いが観察され、男性よりも女性で、若齢層よりも高齢層で、耐性菌問題の解決よりも個人を最優先する治療を求める傾向があった。興味深いことに、少なくとも日本では新型コロナウイルス感染症の蔓延前後で回答傾向に変化がなかった。抗生剤使用の背景にある社会的ジレンマの存在を確認したのは本研究が初であり、成果はScientific Reports誌に掲載された(Scientific Reports 12: 21084, 2022)。研究成果は長崎大学のプレスリリースを通じて世間に公表され、新聞やインターネットメディアでも報じられた(ABEMAヒルズ、ABEMA TIMES、日本経済新聞、日経産業新聞)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既に述べた通り、社会的ジレンマの存在が確かめられ、成果を論文(Scientific Reports. 12: 21084, 2022)として発表することができた。また研究成果が各種メディア(ABEMAヒルズ、ABEMA TIMES、日本経済新聞、日経産業新聞)で報じられたことは本研究の社会的意義を裏付けており、望外の大きな成果となった。
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今後の研究の推進方策 |
マルチ・エージェント・シミュレーションの開発にも取り組みつつ、まだ論文化していない調査結果の発表を目指す。具体的には調査結果のうち、「社会にはどちらのAIに普及してほしいか」は、AI普及の社会的ジレンマであることから、現在執筆中の別論文で成果を発表する予定である。 また、研究過程で明らかになりつつある点だが、薬剤耐性問題は一般市民(患者側)の中にある社会的ジレンマだけでなく、薬の処方権を持つ医師側のジレンマも同時に解消しなければ解決できない複雑な問題である可能性が出てきた。上記の内容に加え、医師側の社会的ジレンマを観測する手法を考えていくことで研究の拡張を模索する。
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