研究課題/領域番号 |
21H01597
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
里深 好文 立命館大学, 理工学部, 教授 (20215875)
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研究分担者 |
権田 豊 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10303116)
内田 太郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60370780)
藤本 将光 立命館大学, 理工学部, 准教授 (60511508)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | 土砂・洪水氾濫 / 流砂モデル / 汎用シミュレータ / 土石流 / 浮遊土砂 / 急激な土砂堆積 / 土砂・洪水氾濫対策 / 浮遊砂 / 数値シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
豪雨時に崩壊等により多量の土砂が河道に流入すると、谷出口より下流の河道内において急激な土砂堆積が生じ、大規模な土砂と泥水の氾濫が引き起こされる。広範囲にしかも大量に氾濫・堆積するため、被害が深刻である。有効な対策のためには数値シミュレーションによる予測が不可欠であるが、土石流や浮遊砂といった従来の流砂モデルは適用条件が限られており、急勾配から緩勾配へと遷移する区間で、幅広い粒度分布を持つ土砂の流れを表現できるモデルは現存しない。本研究では土砂・洪水氾濫対策に有効な数値シミュレーションのエンジン部となる新たな汎用流砂モデルを開発し、水路実験ならびに既往災害への適用を通して妥当性を検証する。
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研究実績の概要 |
幅広い粒度分布を持つ土砂に対し急勾配領域から緩勾配領域まで適用できる流砂モデルを構築するために、研究代表者が開発してきた慣性土石流の統一モデルをベースとして、研究分担者らが開発してきた土石流中の細粒土砂のフェーズシフトのモデルと、急勾配河川における浮遊砂モデルとを組み入れることにより、土石流から掃流砂・浮遊砂までを対象とする新たな流砂モデルを開発している。新たな流砂モデルの妥当性を検証するために、水路実験を実施してデータを収集した。掃流状集合流動は底面付近の砂礫移動層と表面付近の水流層に分類され、砂礫移動層中には乱流状に移動する細粒土砂と層流状に移動する粗粒土砂が存在し、水流層中には、乱流状に移動する細粒土砂が存在すると考えられるがそれぞれ相互作用・交換については十分に理解されていない。そこで、水路実験を通して、細粒土砂を含む掃流状集合流動の実態を明らかにした。また、勾配変化点における混合砂礫土砂の堆積に関する水路実験を様々な条件下で実施し、従来の数値計算で用いられている堆積速度式の適用性に関して検討した。急こう配の直線水路下流側に緩勾配区間(3度以下)を設けて、勾配変化点周辺の流動況(水流層と土砂移動層の厚さや流速、土砂濃度、境界面および河床面を通じた土砂の移動)を高速度ビデオカメラおよび通常のビデオカメラで記録した。この動画を基に土砂移動過程を追跡し、実験データを得た。実験には粒 0.1mm~3mmの珪砂や粒 5mm~3cmの自然砂礫を使用している。さらに、大型のビーカーと攪拌機を用いた細粒土砂の浮遊、沈降に関する室内実験をあわせて行い、粒径の違いが堆積速度に及ぼす影響や、異なる粒径の粒子同士の河床との交換時の相互作用について調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水路実験での活用を想定し水路側面等から撮影した画像により、非接触で土砂濃度を計測する手法の開発を目指した。その結果、光の消散を理論的に評価することにより、画像が土砂で飽和するまでの範囲で土砂濃度の計測が可能であることを示した。さらに固定床条件の小型水路実験を実施し、同技術を活用し、土砂濃度が高い空間分解能で計測可能であることを確認した。次に、細粒土砂から巨礫まで粒度分布が幅広い桜島有村川流域の土石流を対象に,流出シミュレーションにより、観測されているハイドログラフの再現を行い、土石流を再現性の高いものと、低いものに大別した。前者と比べて後者は、含有する巨礫の径が大きい、河床面の摩擦が大きく流動深が大きい傾向があることがわかった。さらに、粗度が大きく粗度の間に浮遊砂の材料が補足されている条件で実施された浮遊砂流の実験事例を収集し、結果をデジタル化した。勾配変化点における混合粒径土砂の堆積に関する水路実験においては、河床構成材料の違いにより粒径階ごとの堆積速度に大きな違いが生じることを明らかにした。従来の堆積速度式では表しきれない混合粒径特有の現象が生じていることが明確になった。ただし、水路側面からのライティングに課題が残り、2,3mm程度の粒子の移動は十分に追跡できるものの、0.1mmスケールの粒子の運動は不明瞭であったため、十分なデータを得ることは困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、水路側面から撮影した画像から非接触で濃度を計測する手法を活用し、掃流状集合流動に焦点を当て、非定常過程も含めて土砂濃度の計測データを蓄積する。さらに、混合粒径の実験も行い、乱流状に移動する細粒土砂と層流状に移動する粗粒土砂の濃度をそれぞれ計測し、掃流状集合流動の実態把握を進める。勾配変化点における土砂堆積の実験に関してはレーザー光源を導入することにより、0.1mm程度の粒子の移動までを追跡できるようになると考えている。 高濃度の混合粒径からなる土石流や掃流状集合流動に関する抵抗則や堆積速度式に関して従来とは異なる知見が得られることが期待されるため、汎用シミュレーターに組み込むことでより合理的な計算が可能になると考えている。国土交通省等が収集してきた大規模な土砂・洪水氾濫に関するデータも利用できる環境が整ってきたため、シミュレータによる解析結果を実測値と比較することにより、モデルの妥当性を検証できるものと期待している。
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