研究課題/領域番号 |
21H01613
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 一誓 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (60821717)
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研究分担者 |
柳 博 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30361794)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | 太陽電池 / SnS / ホモ接合 / スパッタリング / 薄膜太陽電池 / 硫化スズ |
研究開始時の研究の概要 |
SnSは、豊富で安全な元素からなり、光を吸収する能力が高いため、次世代の化合物太陽電池材料として期待されている。SnSは通常p型半導体であるため、CdSなどのn型半導体と組み合わせることで太陽電池が研究されてきたが、その変換効率は5%で頭打ちとなっている。本研究では、代表者らが最近作製に成功したn型SnS薄膜と、従来のp型SnS薄膜を組み合わせることで、高効率なSnS薄膜太陽電池の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度の研究では、おもに2つの成果を得た。一つは、SnS単結晶とMoO3薄膜を接合することで高い変換効率を示す太陽電池が得られることである。変換効率は4.2%であり、SnS太陽電池の最高値(4.8%)には及ばなかったものの、開放電圧は430 mVに及び、従来のSnS太陽電池の最高値を上回った。このような高い変換効率は、SnS単結晶のダングリングボンドのない劈開面を用いたことに起因することを明らかにした。したがって、原理的にダングリングボンドのないホモ接合によってSnS薄膜太陽電池を構成すれば、高い開放電圧が期待できることを示した。 もう一つは、p型SnS薄膜の堆積条件を明らかにしたことである。SnS薄膜の堆積においては、成膜圧力がモフォロジーに極めて大きな影響を与えること、および、より良いモフォロジーを得るには成膜圧力が低いほうが良いことを明らかにした。本研究では、ターゲット表面にスパッタガスを吹き付ける新しい構造のスパッタリングカソードを用いているが、これによって従来のスパッタ装置では実現できない低い成膜圧力にて成膜を行っており、このような方法が特にSnS薄膜の堆積には有効であることを示した。また、硫黄の蒸気圧が高いことからSnS薄膜の組成は一般的に硫黄欠損となることが知られているが、成膜中にプラズマ化した硫黄を供給することでSnS薄膜の組成をコントロールできることを明らかにした。加えて、SnSのスパッタリングにおいてはターゲット表面の組成が変化しやすく(硫黄が欠損しやすく)、この組成変化が得られるSnS薄膜のモフォロジーに大きな影響を与えることを発見した。このようなターゲット表面の硫黄欠損の傾向は、硫黄の蒸気圧を考慮すると当然のことではあるが、従来の研究報告では全く意識されていなかった。成膜前に研磨によりフレッシュなターゲット表面を準備することで安定して同じモフォロジーの薄膜が得られることも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SnS薄膜の堆積に関して、ターゲットの寸法によりプラズマが安定しないことや、スパッタリングによりターゲットの組成が変化することなどの問題があり、これの解決に時間を要したため、進捗はやや遅れている。すでにSnS薄膜を安定して堆積する条件は確立しているため、順次、素子の作製をすすめる。
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今後の研究の推進方策 |
P型SnS薄膜の成膜条件が明らかとなったため、順次ドーパントを導入してホモ接合素子を作製し、その性能の評価と解析を行う。特に、P型およびN型SnS薄膜のキャリア密度は性能に影響する重要なパラメーターである。N型SnS薄膜のキャリア密度の制御についてはこれまでに全く研究例がないことから、フォーカスして調べる。 また、n型SnS単結晶を用いて、MoO3薄膜、および、p型SnS薄膜と接合した素子を引き続き作製する。従来の解析結果から、単結晶中の余剰なドーパントによって界面での再結合が増加していることが示唆されるため、ブリッジマン法を用いてドーパント量を精密に制御した単結晶の合成を試み、素子へと用いる。
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