研究課題/領域番号 |
21H01618
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
磯部 敏宏 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (20518287)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | 熱膨張 / 相転移 / 結晶構造解析 / フィラー / 元素置換 / コールドシンタリング / セラミックス / 熱膨張率 |
研究開始時の研究の概要 |
負の熱膨張率を有する材料は、Society 5.0や超スマート社会に必要なデバイスに必要とされている材料である。広い温度域で巨大な熱収縮を示し、可能な限り安価で安全な組成であることが求められている。しかし、これらの条件を十分に満足する材料はこれまでに報告されていない。Zr2SP2O12は、広い温度域が特長のフレームワークモデルと巨大な熱収縮が特長の相転移モデルを併せ持つことで、これまで達成できなかった広い温度域と巨大な熱収縮の両立を実現できる可能性がある。本研究は、Zr2SP2O12の熱収縮メカニズムを解明、およびこの材料の温度域と熱収縮を極限まで高めることを目的とするものである。
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研究実績の概要 |
昨年度のメカニズムの解明に関する検討を通じて、Zr2SP2O12の熱膨張率はZrサイトを元素置換することでより低下させる(高機能化)させることが可能と結論づけ、Zr2-xMxSP2O12を複数した。今年度は、これらの物質の熱膨張率を測定した。フレームワークモデルで収縮する303~373 Kで最も体積熱膨張率が低かった組成は、M=Y(イットリウム)、x=0.3であり、その値は約-27.2 ppm/KとZr2SP2O12より約18%低かった。本組成は、453~673 Kでも約-16.2 ppm/KとZr2SP2O12の体積熱膨張率(-14.8 ppm/K)より低かったことから、広い温度域で、高機能化できるとわかった。M=Nb(ニオブ)、x=0.6も303~373 Kで-23.6 ppm/K、453~673 Kで約-23.3 ppm/Kと同様に高機能化に成功した。一方、イットリウムと同じ3価のAl(アルミニウム)を置換した物質では、あまり熱膨張率に変化が見られなかった。このことから、フレームワークモデルで収縮には、イオン半径が影響すると考えられた。また、これらの元素置換は373~453 Kの相転移にも影響した。これは、Zrイオンが相転移に大きく関与することが示唆された。 また、結晶構造解析から熱膨張率の算出はできたものの、それ以外の熱的性質や、電気的性質は未解明である。これらの解明にはZr2SP2O12の焼結体を作製する必要があるが、高温で分解するZr2SP2O12の焼結体の作製は極めて困難である。今年度は、コールドシンタリング法の装置を自作した。その装置を用いて、Zr2SP2O12の緻密化に取り組んだところ、相対密度約90%のZr2SP2O12を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年の検討結果をもとにフレームワークモデルに影響を与えるZr元素を部分置換することで、高機能化することに成功したため。また、Zrが相転移のキーとなることも示唆されたことから、メカニズムの解明に大きく前進できたため。また、材料の基本的な性質である電気的性質や機械的性質を測定するためには、バルク体の作製が必要となるが、コールドシンタリング法が有効であると見出すことができ、また、その装置の組み立てに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度検討できなかった元素をZrサイトに置換することで、広い温度域と巨大な熱収縮を併せ持つ物質を創製に取り組む。また、コールドシンタリング法によりバルクのZr2SP2O12を作製し、その電気的性質、機械的性質を評価する。さらに、Zr2-xMxSP2O12についても、電気的性質、機械的性質を評価することで、元素置換が電気的性質、機械的性質に与える影響を考察する。
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