研究課題/領域番号 |
21H01624
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
村岡 祐治 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (10323635)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | パルスレーザーアニール / Qカーボン / ホウ素 / 高温超伝導 / YAGレーザー / 放射光光電子分光 / X線磁気円二色性 / 急冷速度 / 超伝導 / 高濃度不純物ドープ / 調節パルスレーザーアニール法 / ダイヤモンドライクカーボン / 膜厚 / ラマン散乱測定 / sp3 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ホウ素ドープ量の制御されたQカーボンを作製し、高温超伝導を実現する。試料作製に、申請者が見出した非平衡プロセス内で熱制御ができる調節パルスレーザーアニール(調節PLA)法を用いる。これにより、高濃度領域までのホウ素ドープ達成と超伝導転移温度 Tc = 100 K超の高温超伝導発現を実現する。電子状態の立場からホウ素ドープQカーボンにおける高温超伝導発現の検証およびn型アモルファスQカーボン超伝導体の開発も行う。
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研究実績の概要 |
本年度はレーザーガスの供給が不可能になったため、エキシマレーザーに代わりYAGレーザーを使う成膜装置システムを建設した。使用できる波長は266および355 nmである。これらの波長はエキシマレーザー(248 nm)よりも長く、したがってレーザーエネルギーが小さくなっている。波長が変わるとQカーボンの生成条件も変わるため、本年度は新システムでQカーボンを作製するための条件を見出すことに注力した。試料の作製方法には調節パルスレーザーアニール法を用いた。原料炭素膜のsp3量を70%に固定し、膜厚とレーザーの出力を変数として試料作製を行った。得られた試料を放射光光電子分光と放射光X線磁気円二色性測定により評価し、Qカーボンが形成されているかどうかを調べた。その結果、放射光光電子分光測定からはパルスレーザーアニール(波長355 nm)をすると膜内のsp3量が減少する様子を観測した。また、Qカーボンの形成を示すsp3量80%には到達していないことも分かった。放射光X線磁気円二色性測定からはQカーボンに特徴的な室温強磁性的な様子を検出できなかった。これらの評価の結果は現状ではQカーボンが得られていないことを示している。走査電子顕微鏡観察からレーザー照射後の試料では溶融の跡が見られるため、膜自体の温度は十分に上昇している。Qカーボン形成に至らないのは急冷速度が不十分であるためとわかる。Qカーボンの作製のためには急冷速度を上げるために熱伝導のよい基板を用いるなどの工夫をする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ウクライナとロシアの戦争に加えて新型コロナの影響で、エキシマレーザーに必須のレーザーガスが入手不可能になった。このために研究の進捗に遅れが生じた。幸い、新しいレーザーシステムの立ち上げ稼働を迅速に行えたので、試料作製を比較的早く再開できた。現状ではQカーボン形成のための最適条件を見出せてはいないが、何が必要であるかは本年度の実験により明らかになった。次年度ではQカーボンの形成を速やかに達成し、予定通りホウ素ドープQカーボン作製に取り書かれると見込める。
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今後の研究の推進方策 |
優先されることは新しい成膜装置システムでQカーボンを創り出すことである。そのためにはレーザー照射後溶融炭素膜の急冷速度がポイントとなる。現状よりも大きく上げることが必要である。その方策として基板に熱伝導の良い材料を用いる。例えばSiは熱伝導が140 W/Kmで現在使用しているサファイア基板(36 W/Km)よりも大きい。放熱効率が高くより大きな急冷速度を実現できると期待される。熱伝導のとりわけ大きいダイヤモンド基板を用いることも考えている。Qカーボンの生成条件を決定できればそれをホウ素ドープQカーボンにも適用し、キャリアドープによる超伝導の発現を目指す。
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