研究課題/領域番号 |
21H01626
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
兵頭 健生 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (70295096)
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研究分担者 |
上田 太郎 長崎大学, 工学研究科, 助教 (10524928)
清水 康博 長崎大学, 工学研究科, 教授 (20150518)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 12,090千円 (直接経費: 9,300千円、間接経費: 2,790千円)
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キーワード | 吸着燃焼式ガスセンサ / 触媒活性 / 揮発性有機化合物 / 膜厚制御 / ガスセンサ / 吸着燃焼式 / ダイナミック応答 / 触媒 / 酸化活性 / アセトン / エタノール / 吸着脱離特性 / 生体ガス / 吸着・脱離 |
研究開始時の研究の概要 |
生体ガスのうち,疾病等に由来する揮発性有機化合物(VOCs)を高感度・高選択的に検知できる革新的な「吸着燃焼式マイクロガスセンサ」創製のための基盤技術を確立する。ガス検知層の「表面状態,内部組成や微細構造」を精密に制御することで,「急速昇温で生じるVOCsのフラッシュ吸着燃焼・脱離挙動に由来する非定常ダイナミック応答プロファイル」をVOCs毎に最適化するとともに,作動メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
本年は,種々の量のPtを担持したγアルミナ触媒を用いた吸着燃焼式ガスセンサについて,様々なVOCに対する応答特性を評価するとともに、ガス選択性の向上につながるセンサ作動条件を探索することを目的とした。 まず,エタノールに対するダイナミック応答 (積分値,IDRと表記) は他よりも明らかに大きな値であった。これは,エタノールは他のVOCに比べてベース温度 (150℃) での吸着量が多いためと考えられる。一方,スタティック応答 (積分値,ISRと表記) はトルエンが最大値を示した。これは,トルエンは触媒の表面上で酸化されたときの燃焼によって生じる温度変化が大きかったためと考えられる。以上の結果より,センサの作動条件をIDRとISRの結果をもとに最適化することで選択的なガス検知の可能性が示唆された。そこで,ベース温度が応答特性に与える影響を評価した。エタノールに対するIDRはベース温度が150℃の場合に極めて大きな値を示したが,200℃以上にすると大きくIDRが低下した。一方,アセトンに対するIDRは200℃で,トルエンやキシレンなど芳香族化合物に対するIDRは250℃で,それぞれ最大値を示した。ISRは,いずれのガスにおいてもベース温度による影響が小さかった。これは,今回の作動条件ではパルス温度がすべて等しかったためである。その中でも,トルエンに対するISRは安定して高い値を示すことが明らかとなった。 このように,VOCの種類の違いによってIDRとISRの応答挙動に異なる特徴がみられたことから,この違いを利用することでVOCの選択的な検出が可能と考えられた。 なお,エタノールを含む各種アルコールに対する詳細な応答挙動も合わせて評価できた。担持する貴金属の種類(Pt or Pd)が各アルコール応答値に大きく影響することを明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記した通り,Pt担持γアルミナ触媒を用いた吸着燃焼式ガスセンサについては,各種VOCに対する応答挙動が徐々に明らかになっている。ただ,上には記していないが,Pt担持量を多くしたときに,逆に応答特性(特にIDR)が低下する挙動が確認された。これは,これまでの挙動とは全く逆のセンサ特性(Pt担持量依存性)であることから,現在,この解釈をどうすればよいか,検討しているところである。現時点では,作製した触媒層の膜厚に大きく影響された(すなわち,Pt担持量が多く膜厚が厚い場合,膜表面で被検ガスの多くが燃焼してしまい,その熱が効果的に触媒層下部のPtヒーターまで届かなかった)と推察している。昨年度のPt担持γアルミナの触媒活性試験からも,Pt担持量が多いほど触媒活性は高くなっていることはわかっており,妥当な考え方と言える。 このように,触媒特性がセンサ性能に与える影響が徐々に明確になっており,それが触媒層の構造(おそらく膜厚)にも大きく影響されることが推察できるようになってきた。今年は,さらに触媒の組成を大きく変えることで,センサ特性を大きく改善するとともに,その作動メカニズムが明らかにできると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
現在,センサ素子からの出力を測定するためのセンサパッケージおよび回路を大幅に改修中である。温度変化をより正確に特徴的にコントロールしながら,センサの特性に適した条件で作動できるように,回路を再設計している。それが終了後,触媒組成を大きく変更(PtとPd, Ir, Ag, Ru, Rhなどを共担持するなど)し,それがセンサ特性に与える影響を明らかにする。 膜厚制御や膜表面への他材料修飾を試みる。膜組成全体が高活性であってもセンサ特性が低下する場合がある,という昨年度の知見に基づき,表面の触媒活性を低下させることで,触媒層内部へのガス拡散を促し,応答値(特にIDR)の増大を狙う。 組成最適化とセンサ構造最適化に加え,それらの材料の触媒活性も明らかにして応答特性との関係を明らかにし,センサの設計理論を確立する。 さらに,ベース温度とパルス温度,それらの温度を維持する時間(パルスについてはミリセカンドオーダー)を調整することで,さらなる特性改善を試みる。
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