研究課題/領域番号 |
21H01628
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
竹内 恒博 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00293655)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
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キーワード | 熱電材料 / 電子構造 / 線形応答理論 / 格子熱伝導度 / 電子物性 / ナノバルク / 非調和格子振動 / 無次元性能指数 / ゼーベック係数 / 出力因子 / 電子輸送現象 / 精密物性測定 / フォノン制御 / 電気伝導度 / 熱伝導度 / 電子構造計算 / 不純物準位 / フォノン解析 / 電子構造制御 / 格子熱伝導度制御 |
研究開始時の研究の概要 |
日本が2050年までに実現を目指すカーボンニュートラル社会の構築に寄与する高性能熱電材料を開発するための革新的技術として,本研究では『強散乱極限に達している縮退 半導体のバンド端近傍に不純物準位を形成することで著しく小さな熱伝導度と大きな出力 因子を共存させる手法』を確立する.上記の手法により,世界最高性能の (多結晶状態でZT > 4.0を示す)バルク熱電材料を創製し,省エネルギー技術としての熱電発電のポテンシャルを示すとともに,研究代表者が提案してきた高性能熱電材料設計指針の妥当性を証明する.これにより,熱電材料開発にパラダイムシフトがもたらされることが期待できる.
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研究実績の概要 |
日本が2050年までに実現を目指すカーボンニュートラル社会の構築に寄与する高性能熱電材料を開発するための革新的技術として,本課題研究では,『強散乱極限に達している縮退半導体のバンド端近傍に不純物準位を形成することで著しく小さな熱伝導度と大きな出力因子を共存させる手法』を確立することを目的とする.計算科学的手法(線形応答理論を用いた物性予測,第一原理計算(バンド計算,クラスター計算)による電子構造評価)と,先端的計測手法(高分解能レーザー励起光電子分光法,バルク敏感な硬X線光電子分光,放射光構造解析,中性子非弾性散乱測定)を駆使した解析を行う.また,多彩な手法で作製した試料に対して, 電子構造改質の影響を検証するために,2-1000 Kに亘る広い温度領域での精密熱電物性測定を実施する. 2022年度に実施した研究では,Si-Ge系熱電材料を高性能化する指針として,ボールミルにより作製したナノ結晶を低温高圧焼結にて粒成長することなく高密度化するプロセスの高度化を行った.このプロセスでは,粒径が極めて小さいことにより粉末状態での試料表面が大きくなり,ボールミルのポットから試料をとり出し,パルス通電焼結を行うまでの間に酸化することが問題となっていた.酸化の度合いは,1at.%以下から最大で5at.%にも達し,酸素濃度の増大に伴い比抵抗が著しく増大することで熱電性能を下げることを明らかにした.プロセスにおける酸化をできるだけ少なくする方法を開発することで,酸素濃度が1at.%以下の試料を作製することに成功した. 次に,非調和格子振動により0.5Wm-1K-1以下の格子熱伝導度を示す化合物半導体であるAg2SxSe1-xを研究対象とした.電子構造計算から予測した不純物準位を利用することで,熱電性能を20%以上向上させることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づき,計算科学的手法(線形応答理論を用いた物性予測,第一原理計算(バンド計算,クラスター計算)による電子構造評価)と,先端的計測手法(高分解能レーザー励起光電子分光法,バルク敏感な硬X線光電子分光,放射光構造解析,中性子非弾性散乱測定)を駆使して,固体物理学の知見に基づき,材料の熱電性能を向上させることを明確に示す例を次々に示すことができている.目標とする性能(多結晶状態でZT > 4.0)を示すバルク熱電材料の創製に向けて,計画通り,着実に研究が進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
現在,Si-Ge系材料,Ag2(S,Se,Te)系材料.Ag4.5Te3系材料の熱電物性の改質を行っている.いずれも,格子熱伝導度が著しく小さい化合物半導体であるが,バンド端の電子構造に良好な特徴を示さないために熱電性能が他の熱電材料を凌駕する域に達していない.これらの性能を向上させるためには,電子構造の建設的な制御が必須であるため,電子構造計算による予測と,実験に因る検証を続けている.その結果,すでに記載したように,熱電性能の著しい向上に成功している. 上記の物質群の性能をさらに向上させるとともに,新たな材料系での探索も始めた.現状で,薄膜材料ではあるが,目標とする性能を得られる可能性が高い材料の特定に至っており(特許申請を準備中),最終年度である2023年度に行う研究において,高性能化の物理を明確にし,バルク材料で同様の性能を示すことを目指す. 上記の研究により,省エネルギー技術としての熱電発電のポテンシャルを示すとともに,申請者が提案してきた熱電材料設計指針の妥当性を証明する.
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