研究課題/領域番号 |
21H01634
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26030:複合材料および界面関連
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
植松 英之 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (80536201)
|
研究分担者 |
杉原 伸治 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (70377472)
福島 啓悟 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (50725322)
山根 正睦 福井大学, 産学官連携本部, 非常勤講師 (60755263)
田上 秀一 福井大学, 繊維・マテリアル研究センター, 教授 (40274500)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2021年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
|
キーワード | 高分子構造 / 界面接着性 / 相互作用 / 結晶構造 / 力学特性 / 高分子の結晶構造 / 強化繊維 / 界面特性 |
研究開始時の研究の概要 |
強化繊維の表面官能基と表面凹凸の影響を分離したモデル的な強化繊維を用い、偏光を含む顕微ラマン分光分析と分子動力学計算を取り入れることで強化繊維周辺での熱可塑性樹脂(高分子)の構造を評価し、高分子と強化繊維との界面接着性に及ぼす高分子構造の影響を明らかにする。破壊靭性に劣る強化繊維を補うタフな高分子特性を活かした繊維強化複合材料を創出するための設計指針を示すことを目指す。
|
研究実績の概要 |
強化繊維近傍の高分子のコンフォメーションが強化繊維との界面接着性と強化繊維近傍での破壊特性、すなわち界面特性に及ぼす影響を明らかにして、繊維強化複合材料の力学特性と界面特性の関係を系統的に明らかにすることが本研究の目的である。CFあるいはGF表面に化学反応性の高い官能基が存在する場合と、そうでないモデル的な繊維を対象として、初年度で見出されてきた界面近傍の高分子のコンフォメーションを分光学的に捉える手法を基軸として2年目は、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド6(PA6)など、様々な種類の高分子と炭素繊維(CF)やガラス繊維(GF)との界面特性を検討した。 溶液に溶かしたPCをキャストすることで形成するPCの結晶は界面せん断強度に寄与しないこと、また、熱処理することで形成されるPCラジカルがCF表面で共有結合をすることで界面接着性が向上することを明らかにした。PVCの熱分解過程に見られるイオンによる乖離が、CF表面での静電相互作用として働くことで界面接着性が向上することを見出した。またPPS鎖の末端官能基の化学反応性が高い場合、CF軸方向のPPSの結晶形成が阻害されること、CF表面との静電相互作用が低下することで、界面せん断強度が低下することが示された。表面粗さや表面官能基が異なるCFを用いてPA6の界面特性と複合材料の力学特性を評価した結果、界面での水素結合などの化学的相互作用が大きくなると、CF間におけるPA6の結晶の均一性が低下することで複合材料の力学特性が低下することが見出された。また、PCあるいはPPSを高分子マトリクスした場合を中心に、界面での高分子のコンフォメーションを検討するための分子動力学計算によるモデルが構築できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
接着性に重要な要素の一つである界面での高分子のコンフォメーションあるいは高分子と強化繊維との相互作用は、分子構造から類推されてきた。しかし本研究では、化学的相互作用の鍵となる高分子ラジカルによる共有結合やイオンによる静電相互作用を分光分析から捉えることに成功した。また界面での相互作用により、強化繊維近傍での高分子のコンフォメーションが変わること、あるいは、界面での相互作用が小さい状態で強化繊維近傍に形成される高分子結晶は界面接着性に寄与しないことが本研究により示された。一方で、界面での相互作用が大きいと、強化繊維近傍での高分子結晶の均一性が低下する要因となることも見出された。得られた結果は、投稿論文としていくつか掲載されている。従って、様々な種類の高分子を用いて界面構造あるいは強化繊維近傍の高分子のコンフォメーションを系統的に捉えることで、界面特性や複合材料の力学特性を制御するために必要となる新たな概念を、高分子構造の観点から見出すことができている。以上より、目的とする高分子特性を活かした複合材料創出のための材料設計の指針を確立する目的達成に向けて順調に進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
界面接着性が高いと複合材料の力学特性は向上することが一般的な認識である一方で、これまでの我々の成果において、界面接着性が高くても複合材料の力学特性は向上しない場合も示されてきた。界面での化学的相互作用と高分子マトリクスの結晶構造のバランスが重要な要素であることが示唆されていることから、化学的相互作用が高分子マトリクスの結晶形成に及ぼす影響を明らかにすることが今後の課題の一つである。またこれまで、モデル的に化学的相互作用が期待できる官能基のある場合とそうでない場合の炭素繊維(CF)やガラス繊維(GF)を用いて、界面特性を検討してきた。一方で、工業的に使用される強化繊維には、繊維を集束するための化合物、すなわちサイジング剤あるいは表面処理剤が塗布されている。従って、今後は、繊維の表面に存在するサイジング剤と繊維表面、あるいは、繊維表面のサイジング剤と高分子マトリクスとの化学的相互作用あるいは破壊場所を特定することに挑戦する。また、CFの前駆体に依存しCF軸方向に沿った凹凸が界面接着性や高分子マトリクスの結晶構造に及ぼす影響を明らかにする。
|