研究課題/領域番号 |
21H01665
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅原 優 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40599057)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
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キーワード | 水素侵入 / 水素マッピング / 鉄鋼材料 / 大気腐食 / エレクトロクロミズム |
研究開始時の研究の概要 |
水素エネルギー社会の実現や自動車の燃費向上に不可欠な材料の水素脆化を防止するため、材料中への水素侵入分布をリアルタイムでモニタリングする技術が求められている。そこで本研究では、エレクトロクロミック特性を有する酸化物薄膜を用いた材料中の水素分布の高位置分解可視化モニタリングシステムを確立することを目的とする。そしてこの水素検出システムを用いて、鋼材への水素侵入に及ぼす材料因子、腐食因子の影響を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、エレクトロクロミック特性を有する酸化物薄膜(例としてWO3)を用いた材料中の水素分布の高位置分解可視化モニタリングシステムを確立すること、そしてこの水素検出システムを用いて、鋼材への水素侵入に及ぼす材料因子、腐食因子の影響を解明することである。その目的を達成するため、本モニタリングシステムの課題である位置分解能や応答性、検出感度の向上に取り組んだ。これまで代表的なエレクトロクロミック材料としてWO3を使用してきたが、Tiなどのさまざまな酸化物薄膜でも水素が侵入すると色調が変化することが明らかとなり、いくつかの酸化物ではWO3よりも高い水素応答性や検出感度を有することが分かった。感度の高い電流計測による水素検出(電気化学的水素透過法)と同等の水素応答性を有する、水素検出用酸化物薄膜を見出すことができた。酸化物の違いによって水素検出が応答性が異なる原因について、固体化学的なアプローチから解析を進めており、今後の水素検出用の酸化物の選択において指針を見出したいと考えている。 また、腐食環境での水素侵入モニタリングに本手法を適用し、鉄鋼材料の腐食過程における水素の検出を試みた。炭素鋼試験片における塩化物イオンを含む水溶液中での自然浸漬状態での腐食や、乾湿繰り返し環境での腐食に伴う水素侵入の分布計測に成功した。 本手法での水素の検出には、鋼と水素検出用の酸化物薄膜の間にPd中間層が不可欠であり、前年度にはこのPd中間層の最適化に取り組み、めっき法による成膜が有望であることを示した。一方で、めっき法では膜厚のばらつきが水素の分布検出で大きな問題となることが避けられないことが明らかとなり、スパッタ法によるPdの成膜が適切であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題で研究している材料中の水素分布の可視化システムにおける水素応答性、検出感度等を向上させ、本手法を用いて、腐食に伴って侵入する水素の分布計測に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究によって、腐食に伴って鋼材へ侵入する水素を検出することができたことから、本水素検出法における定量性の実現に向けて取り組む。水素が酸化物薄膜に入ることで発生する相変化について明らかにし、薄膜の色調の変化によって水素濃度が把握できる手法へ改善させる。さらに、本手法を用いて、腐食に伴う鋼材への水素侵入機構の解析と、鋼材における水素の侵入・拡散に及ぼす金属組織の影響の解析を行う。
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