研究課題/領域番号 |
21H01697
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27020:反応工学およびプロセスシステム工学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 厚 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60357366)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
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キーワード | 選択酸化反応 / 活性酸素種 / 速度論解析 / 触媒フリー / フローリアクターシステム / 低温大気圧プラズマ / 選択酸化 / 速度論モデル / 貴金属触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
空気中の酸素のみを使って有機化合物を選択的に酸化することは、経済性、環境性、持続性から理想的な反応である。これまで不均一系触媒の使用が検討されてきたが、経済性や有限資源利用による持続性を考慮すると、触媒なしでの選択酸化技術の確立も今後重要となる。本研究では、水溶液への低温大気圧プラズマ照射により生成する活性酸素種を活用し、速度論解析による活性種の寿命予測と反応器のフローシステム化を組み合わせた活性種空間再配置型フローリアクターシステムを新たに構築し、触媒フリーで所望の選択酸化反応のみを進行させる手法を確立する。
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研究実績の概要 |
本年度は、バッチ式プラズマ照射システムを用いてまず水のみに対する反応を行い、生成する過酸化水素と溶存酸素濃度の経時変化から、活性種生成挙動を把握を行った。その結果、液相中の溶存酸素濃度は、照射時間に伴い減少するものの、生成物である過酸化水素の生成挙動には影響を及ぼさないという重要な知見を得ることができた。この知見により、選択酸化達成に向けて活性種生成を制御するための因子を絞ることができ、反応条件最適化のための方針を得ることができた。得られた実験結果に基づき、OHラジカル、Oラジカル等寄与の大きいと想定される反応を考慮しモデルを構築した。その結果、初期溶存酸素濃度あるいはpHを変化させた際の溶存酸素ならびに過酸化水素濃度の経時変化を良好に表現することができた。これにより、水中でのプラズマ照射下での活性種生成メカニズムを把握することができた。そこで、モデル有機化合物としてグリセリンを用い、前述の水のみを対象とした速度論モデルに、Au触媒を用いたグリセリン酸化反応のメカニズム検討から明らかにした反応を加えることで、本系の酸化反応の速度論モデルを構築した。その結果、種々のpHならびに初期溶存酸素濃度における目的生成物のグリセリン酸や副生物の生成物の経時変化をおおよそ表現することができた。pHの切り替わりによりグリセリン酸から、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトンに生成物が切り替わる様子についても表現することができた。モデルによるシミュレーションでは、初期は水のみとし、所定時間経過後にグリセリンを投入することで、収率を大幅に向上させうることを示し、フローシステムとした場合の目的生成物の高収率化に向けた装置設計において重要な知見を獲得することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の研究実施計画通りに研究を進めることができた。「項目①プラズマ照射器を取り付けたバッチシステムによる活性種の生成・消滅挙動の定量的な把握」については、バッチシステムを用いて水に対するプラズマ照射実験を行い、溶存酸素と過酸化水素濃度の経時変化を測定した。その結果、溶存酸素濃度は照射時間に伴い減少するものの、過酸化水素の生成挙動には影響を及ぼさないという重要な知見を得ることができた。これは、プラズマ研究でもあまり認知されていない知見であり、目的活性種生成の最適条件を獲得するための重要な知見となった。得られた実験結果に基づき、活性種としてOHラジカル、OOHラジカル等寄与の大きいと想定される反応を抽出し、モデルに考慮したところ、前述の実験結果を良好に表現することができ、水中での活性種生成メカニズムを把握することができた。 「項目②モデル有機化合物の酸化挙動に及ぼすプラズマ照射条件の影響の評価とフローリアクター設計」については、モデル有機化合物としてグリセリンを対象として、①で構築した速度論モデルに、前年度でAu触媒を用いたグリセリン酸化反応のメカニズム検討から明らかにした反応を加えることで、グリセリン酸化反応の速度論モデルを構築した。その結果、種々のpHならびに初期溶存酸素濃度におけるグリセリン酸や副生成物の経時変化をおおよそ表現することができた。特に、前年度に見出した中性pHで生成するグリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトンの生成についても表現することができた。モデルによるシミュレーションでは、初期は水のみへ照射することで目的酸素種であるOOHの濃度を高めることができ、その後、グリセリンを投入することで、グリセリン酸の収率を2倍近く高める可能性を示した。これは、今後構築するフローリアクターシステムにおいて、反応物導入位置などの設計ガイドラインとなりうるものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、目的の活性種を利用できる活性種空間再配置型フローリアクターの設計・製作と選択酸化進行の評価を目的として、前年度までに見出した酸化に関わる活性種について存在濃度の経時変化などの動的挙動を把握するために、プラズマ照射下で、水のみ、あるいはグリセリン水溶液中での速度論モデルによるシミュレーションを行い、選択酸化に有効な活性種の挙動を定量的に把握するとともに、その活性種の存在が最大となる条件(キャリアガス、温度、溶存酸素濃度、pH、照射時間等)を抽出し、触媒フリーの選択酸化の進行可能性を評価する。それを踏まえて、速度論モデルをバッチ系からフロー系へと変換し、さらに前述の情報を基に、流量や反応原料添加のタイミング、照射場所や照射時のガスなどを最適化し、フローリアクターを設計する。この設計を基にフローシステムのモデル実機を構築し、実験を行い、このシステムによる選択酸化の実証を行う。生成物測定は、すでに所有しているHPLCで行うとともに、同学電子工学専攻の金子研究室の協力のもと、活性種の挙動についての検証を行い、フローシステムモデルにフィードバックすることで、最終的な触媒フリーでの選択酸化に向けた知見蓄積へと繋げる。
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