研究課題/領域番号 |
21H01703
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27020:反応工学およびプロセスシステム工学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川尻 喜章 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20811087)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
|
キーワード | ベイズ推定 / 化学プロセスモデリング / 二酸化炭素 / 吸着分離 / プロセスモデリング / 吸着 / 分離プロセス / 統計 / 化学工学 |
研究開始時の研究の概要 |
化学プロセスを設計し運転するため、数式モデルを計算機に実装し、その性能を予測することが行われる。この数式モデルを作るためには、多くの実験を行うだけでなく、経験と経験を持った研究者の判断に頼ることが多い。この過程をシステマティックに行い効率的にするため、本研究ではベイズ統計技術を応用する。更には、二酸化炭素吸着分離を例に取り、モデルの信頼性を高めるために最も効率的な実験方法を見出す。
|
研究実績の概要 |
ベイズ推定を吸着分離プロセスに適用し、モデリングを効率的に行う手法を開発するための有望な研究成果が得られた。(1)破過試験およびパルス注入試験を実施し、様々な濃度、圧力、流速における実験データを取得した。更に、このデータが吸着分離プロセスモデルに含まれるパラメータの推定に利用出来ることを確認した。(2)吸着分離プロセスモデルを実装することに成功した。このモデルは物質収支式と熱収支式、および吸着等温線(平衡関係)から構成される。同モデルは時間と距離に関する非線形偏微分方程式で表され、数値計算手法により解を得ることに時間がかかる。本研究では、十分な計算精度を維持しながら計算時間を短縮することを検討した。(3)逐次モンテカルロ法を改良し、上記の吸着分離プロセスに適用可能であることを確認した。過去の研究で他の化学プロセスのために採用したモデルパラメータ推定および不確実性定量化手法である逐次モンテカルロ法を見直し、吸着分離プロセスにも適用できることを確認した。吸着分離プロセスモデルのパラメータの推定および不確実性定量化のためには上記のプロセスモデルを繰り返し解くことが必要になるが、逐次モンテカルロ法はこの計算を効率的に行えることを確認した。(4)上記のように改良と見直しを行った逐次モンテカルロ法を、気相(二酸化炭素)吸着分離プロセスだけではなく液相吸着分離プロセスにも適用し、プロセスモデルのパラメータ推定および不確実性定量化が更に効率的に行えることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況として、おおむね順調に進展していると考えられる。具体的な理由は以下の通りである。(1)破過試験およびパルス注入試験を実施し、様々な濃度、圧力、流速における実験データを取得することに成功した。これにより実験データの蓄積も順調に進んでいると考えられる。(2)上記に加えて、吸着分離プロセスのモデルを実装することにも成功し、更には十分な計算精度を維持しながら計算時間を短縮することが出来ることがわかった。特に、物理現象を正確に記述しながら計算コストが低いモデルを選択し、更に効率的な偏便分方程式の数値解法を適用した。(3)逐次モンテカルロ法の改良により、吸着分離プロセスへの適用が可能であることを確認し、同手法の適用へ可能性が十分にあることもわかった。特に、複雑な非線形偏微分方程式で表される吸着プロセスモデルを繰り返し解かなければならない逐次モンテカルロ法の計算時間の長さが課題であったが、十分に現実的な計算時間で収束することも確認された。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、以下を挙げる。(1)得られた実験データに逐次モンテカルロ法を適用し、モデルに含まれるパラメータの推定とその不確実性定量化手法の確立を行う。特に、異なる条件で行われた複数の実験データセットを、同時にパラメータ推定の中で扱うことを試みる。このように複数の実験データセットを扱うのにかかる計算コストを減らすため、逐次モンテカルロ法アルゴリズムを幅広く探索し最適化する。また、同手法を並列計算として実装し複数のプロセッサを同時に使うことで、計算時間の更なる短縮化を目指す。(2)モデルパラメータを正確に推定し不確実性を最小化する効率的な実験を見いだすことにも取り組む。特に、注入濃度と体積を変化させ、モデルパラメータの不確実性がどのように減少するかを確かめることで、注入濃度と体積の最適化を試みる。(3)上記の検討に必要な実験データを取得するため、追加の破過試験およびパルス注入試験も行う。
|