研究課題/領域番号 |
21H01731
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 道彦 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (00447856)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 核酸増幅検査 / DNA / 等温DNA増幅 / 無電源 / 微粒子 / 誘電泳動 / バイオセンサー / 迅速検査 / DNA分子 / 簡易感染症検査 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、DNA結合が微粒子の親水・疎水性を変化させるという新しい現象の発見を基にする。本研究では、この現象の機序解明と、これを応用した新しい感染症検査手法の開発を目的とする。感染症検査法のうち、検出対象の遺伝子から選択的にDNAやRNAを増幅する核酸増幅検査法は、感度と選択性が他の手法よりも優れている。新型コロナウイルス感染症検査でも多数用いられているReal-time PCR法は、増幅と検出を同時に行うため、迅速に検査が完了するがその一方で、高価な機器や試薬が必要である。より簡便な核酸増幅法として、本研究では無電源で実施可能で、目視によって判定可能な手法を検討する。
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研究実績の概要 |
核酸増幅検査における増幅DNAの目視判定法について、検出の特異性を高めるために、DNAハイブリダイゼーションを用いて微粒子と増幅DNAとを選択的に結合させる方法を開発した。これは、タグ配列を付与したプライマーを用い、そのタグ配列と相補的なプローブDNAを微粒子に結合する方法である。2種類のいちご病原菌について、マルチプレックスPCRを行った後の、増幅産物について、それぞれを選択的に検出できることを示した。微粒子誘電泳動DNA検出法について、等温DNA増幅法と組み合わせた手法を試み、新型コロナウイルス遺伝子を検出できることを示した。この方法は、一定温度で実施できるため、精緻な温度制御が必要なPCRを用いた従来の方法と比べて、安価に実施することができる。 また、微粒子誘電泳動DNA検出法の応用として、心筋梗塞のバイオマーカ候補であるDNase Iの検出について検討した。あらかじめ用意したDNA結合微粒子に対してDNase Iを作用させる手法で、DNase I濃度を計測可能であることを示した。さらに、DNAの目視判定手法の応用として、放電プラズマ殺菌の診断が可能かどうかを検討した。DNase Iの応用と同様にDNA結合微粒子を用意し、それに放電プラズマを作用させる。放電プラズマによって発生するラジカルや活性酸素種などによってDNAが切断されることが、放電プラズマによる殺菌作用と相関があるかどうかを検討した。その結果、両者に相関が見られ、本法により診断できる可能性が示された。 今後は、上で述べた応用について進めるとともに、接触角測定法を用いてDNAの親水性、疎水性の変化を調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核酸増幅検査における増幅DNAの目視判定法において、増幅DNA検出の特異性を高めるために、微粒子と増幅DNAとをDNAハイブリダイゼーションを用いて結合させる方法を開発した。その方法は、DNA増幅に用いるプライマーにタグ配列を付与し、そのタグ配列と相補的なプローブDNAを微粒子に結合するものである。2種のいちご病原菌を検出対象に用いて、マルチプレックスPCRを行い、それぞれを選択的に検出できるかどうか試み、それが可能であることを示した。 等温DNA増幅法を組み合わせた微粒子誘電泳動DNA検出法で新型コロナウイルス遺伝子を検出可能であることを示した。また、微粒子誘電泳動DNA検出法の応用として、DNase Iの検出が可能であることを示した。DNase Iは心筋梗塞症のバイオマーカーとして期待されており、それを高感度に検出できる可能性が示された。 DNAの目視判定手法の応用として、放電プラズマ殺菌の効果を診断する指標として利用できる可能性を示した。これは、放電プラズマによるDNA切断を殺菌の指標に用いようというもので、放電プラズマ照射後に、DNA結合微粒子の凝集が変化することを示した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の大きな目的の一つである懸濁液条件に伴うDNAの親水性、疎水性の変化を調査するため、接触角測定法によってそれを明らかにする。 微粒子誘電泳動DNA検出法を用いたDNase Iの検出、DNAの目視判定手法を用いた放電プラズマの診断といった新たな応用面が見出された。これらについて、検討を進め、現在の手法に対する有効性などを示す。
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