研究課題/領域番号 |
21H01752
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28020:ナノ構造物理関連
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
福本 恵紀 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任准教授 (20443559)
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研究分担者 |
草部 浩一 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (10262164)
石田 邦夫 宇都宮大学, 工学部, 教授 (40417100)
奥田 太一 広島大学, 放射光科学研究センター, 教授 (80313120)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 光電子分光 / 超高速 / 計算科学 / トポロジカル絶縁体 / 顕微分光 / スピン / スピン流 / 第一原理計算 |
研究開始時の研究の概要 |
トポロジカル表面状態(Topological surface state: TSS) は,スピン偏極しており,高い電子易動度をもつことから,スピントロニクスへの応用が期待されている.本研究では,スピントロニクス素子の情報媒体となるスピン流の空間的ダイナミクス観測を目的とする.本研究では,時間,空間,エネルギー分解能で半導体中に光励起した電子ダイナミクスのイメージングが可能である時間分解光電子顕微鏡の光源を改良し,スピン分解能を付与することで,スピン流ダイナミクスを可視化することを目的とする.また,表面終端の原子配列をパラメータとする第一原理計算によりTSS バンド構造と光電子放出強度との関係を明らかにする.
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研究実績の概要 |
研究代表者は,これまでに,フェムト秒光電子顕微鏡(femtosecond photoemission electron microscopy: fs-PEEM)を利用して半導体中の電子ダイナミクスを高い時間・空間・エネルギー分解能を利用してイメージングを行ってきた.本研究の目的は,fs-PEEM利用によるスピンダイナミクス観測である.スピンダイナミクス観測に先立ち,典型的なトポロジカル絶縁体であるBi2Se3単結晶表面の電子ダイナミクス観察を行った. fs-PEEM測定により,Bi2Se3表面は,数10ミクロンサイズのドメインで形成されていることが観測され,それぞれのドメインで光電子スペクトルの形状と電子ダイナミクスが異なる結果が得られた.研究分担者らによる第一原理計算で得られたバンド構造から,へき開された表面を終端する原子層は不均一であることが明らかとなった.また,光照射によるバルクバンドギャップを超えて励起された電子が,ある表面状態(Se膜が最表面にくるS1表面)では,ディラック状態を経由して,基底状態に戻ることを確認した.ディラック点での再結合を経由するために他の表面状態と比較して10倍程度再結合時間が長いことが分かった.これは,ディラック状態を利用するデバイス開発に重要な情報となる.この成果は,論文投稿準備中である. トポロジカル絶縁体表面のスピンダイナミクス観測円滑に遂行するために,2021年度に修理した光電子顕微鏡を設置するための真空チャンバーを設計し,その動作確認が完了している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スピンダイナミクス観測専用のfs-PEEMの立ち上げを行ったため,当初計画と比較して,やや遅れがある.他機関から譲渡されたPEEM装置の修理立ち上げが繰り越し予算により完了している.一方で,スピンダイナミクス観察に先立ち行った電子ダイナミクス観察に関しては,理論計算を担当する分担研究者との協力により,その詳細が明らかとなったきた.fs-PEEM測定では,入射光の光子エネルギーを紫外光領域で掃引することで,光電子スペクトルを取得する特殊な装置である.そのスペクトルの再現に成功している.これにより,3次元トポロジカル絶縁体を機械剥離した表面は,表面終端する原子層がミクロンスケールで不均一であり,とトポロジカル表面状態が局所的に異なることが明らかとなった.スピンダイナミクス観察を行う上で必要な成果が得られており,論文投稿準備中である. 初年度と次年度でfs-PEEMが立ち上げたため,最終年度はスピンダイナミクス観察を行う.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,fs-PEEMによるスピンダイナミクス観測を目的としており,初年度予算で譲渡されたPEEMの修理,次年度予算で,PEEM用真空チャンバーを作製した.フェムト秒パルスレーザーの偏光度(直線偏光,および,円偏光)に依存する光電子顕微鏡像を取得するシステムは完成している.これにより,時間,空間,エネルギー,スピン分解した計測が可能となっている.最終年度は,測定試料として,当初予定のトポロジカル絶縁体だけでなく,半強磁性体やマルチフェロイクス材料の観測を会誌する. fs-PEEMを利用して,典型的な3次元トポロジカル絶縁体であるBi2Se3単結晶表面を観察した結果,表面にはミクロンスケールのドメインが形成されることが分かっている.研究分担者による第一原理計算の結果から,機械剥離によるBi2Se3表面は,終端する原子層がミクロンスケールで不均一であることが明らかとなった.まら,推定されるバンド構造から電子ダイナミクスが表面終端に影響されていることが明らかとなった. 今後,多次元で取得する膨大な量のPEEM像から埋もれている物性を抽出する機械学習の手法を開拓し,高いスループットで上述した様々な材料に展開する.
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