研究課題/領域番号 |
21H01754
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
姚 閔 北海道大学, 先端生命科学研究院, 名誉教授 (40311518)
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研究分担者 |
尾瀬 農之 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (80380525)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2021年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 結晶核形成 / タンパク質 / BLLナノ構造 / 核剤 / 相転移 |
研究開始時の研究の概要 |
タンパク質の結晶化には、基本的に大量な試行錯誤での条件探索が必要であり、タンパク質結晶構造解析法のボトルネック技術となっている。申請者は金属有機構造体の繰返し構造を利用したタンパク質結晶核形成技術を研究し、バランスト・ラティス・レッジ (BLL) と名付けたナノ構造がタンパク質の結晶核形成に非常に有効であることを見出した。本研究では、BLLナノ構造を持つ核剤が誘発する、タンパク質の「液液相分離を経た液結晶相転移メカニズム」を研究することによって、より汎用性のある有効な核剤の設計法を開発し、構造生物学分野だけではなく、医学や材料科学分野にも波及する結晶核形成過程制御技術の開拓をめざす。
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研究実績の概要 |
タンパク質の結晶核形成は、低頻度で制御困難な、タンパク質溶液-結晶相転移過程を経て進む。その核形成過程は、タンパク質分子の形態学上の複雑性(多様なサイズ、不規則な形状、様々な表面電荷、表面形状の動的な特徴など)に依存する。そのためタンパク質の結晶化は、結晶構造解析技術が非常に速い勢いで発展している現在においても、依然として,越えなければならない大きな壁として立ちはだかっている。本研究では、我々が開発したBLLナノ構造を持つ核剤がタンパク質分子の配列規則性を誘発し、分子の自己組織化・結晶性パッキングを引き起こす過程(溶液-結晶相転移過程)を促進するメカニズムを解明する。核剤の設計に理論的な基盤を提供することで、より汎用性のある、有効なタンパク質結晶化の核剤の設計・創製を可能にし、溶液-結晶相転移の制御を実現することを目指す。 本研究の目的を達成するため、2021年度では、 1.促進メカニズムについて、既に開発していた、効果のあるBLL核剤2種類を熱処理や、超音波処理によって人工的に表面レッジを作り、TEMで確認したところで、形状を良く保っている1種類の核剤を使用することにした。その核剤を用いて標準タンパク質を結晶化した。その結果、核剤は結晶化溶液過飽和相(核形成領域)を変化させることを見出した。 2.BLL核剤の汎用性について、1で選んだBLL核剤を当研究室に行われた結晶化に問題があるタンパク質Mps3(NTD)、AOD、SelU-tRNAなどへ適用するため、それらのサンプルの大量発現・精製などの調製を行った。BLL核剤を加えて、結晶化を試みた。そのうち、Mps3(NTD)とAODの初期結晶を得た。また、BLL核剤の使用方法の検討も行って、結晶化プレートへコーデング、タンパク質溶液との混合のときに、BLLの濃度と効果を検討した結果、最適条件を見つけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BLL材料が蛋白質結晶の核形成の促進メカニズムを解明するため、2021年度では、まず、計画の通りに、既に開発していたBLL核剤のレッジ効果の検証を実施した。その結果、超音波処理にファイターろ過を加えて、核剤のレッジ形成を再現性がよく、安定にコントロールできた。そのように作製したBLL核剤を用いてLysozyme、Trypsin、Lysozyme、Trypsin、GatCABを結晶化した。その結果、BLL核剤の使用による結晶化溶液過飽和相(核形成領域)の変化を見出し、レッジの結晶化効果の検証ができることが分かった。つまり、タンパク濃度、沈殿剤の濃度、およびBLL核剤濃度の調整によって見積した結晶化溶液過飽和相の変化は、Cryo-EM、HS-AFM測定によってレッジが引き起こしたLLPS変化の観察より、最も速く簡単にレッジ効果を検証できることが分かった。 また、BLL核剤の汎用性について、研究室で行われた結晶化に問題があるタンパク質Mps3(NTD)、AODへ適用し、初期結晶を得た。また、BLL核剤使用として、結晶化プレートへのコーデング、およびタンパク質溶液との混合条件も確立した。
以上の結果から、本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の実験結果から、申請当初の計画を変更しながら、下記の方針で実験を実施する. 1.促進メカニズムについて:2021年の研究では、Cryo-EM、HS-AFM測定によってレッジが引き起こしたLLPSの観察より、結晶化溶液過飽和相(核形成領域)の測定は、最も速く簡単にレッジ効果を検証でき、実験コストも削減できる、今後、Cryo-EM、HS-AFMの代わりに、タンパク質結晶化溶液の過飽和相の測定を実施する。また、層板状な結晶性材料の破壊処理によって、材料のレッジ構造の状態(レッジの数)が変わることは、TEM観察で分かった。したがって、2022年度では、材料の破壊処理条件によってレッジ構造の状態を変更し、結晶化への影響を検証する。 結晶化用のタンパク質サンプルについて、計画通りに昨年と同様に市販のLysozyme、Trypsin、および大量調製が確立しているグルタミンアミドトランスフェラーゼCAB複合体(GatCAB,、MW=110kDa)を使用する。 ラティスサイズ影響の検証については、計画通りに、ケンブリッジ結晶構造データベースや、論文からBLLを持つ新規の核材の候補を選択し、合成する。 2.BLL核剤の汎用性について: 2021年度ではBLLリッチな核剤を用いて、結晶化に問題があるサンプルMps3(NTD)、AODの初期結晶を得たので、引き続き、構造解析ができるレベルまで、Mps3(NTD)、AOD の結晶条件を最適化する。また、膜タンパク質BcsC-Cや、ウイルス感染における免疫防疫に関わるタンパク質などへも適用する。サンプルは当研究室にて大量調製を行う。
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