研究課題/領域番号 |
21H01771
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28040:ナノバイオサイエンス関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
柴田 幹大 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (80631027)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | 1分子イメージング・ナノ計測 / ゲノム工学 / タンパク質・酵素化学 / バイオイメージング / 一分子計測・操作 / 1分子イメージング・ナノ計測 / 1分子計測・操作 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、多種多様なゲノム編集ツールCasタンパク質群の分子作動機構を高速AFMによる1分子イメージングにより、統一的に理解することを目的とする。我々はこれまでに、SpCas9が標的DNAを探索・結合・切断する過程を一分子レベルで撮影することに成功してきた。この研究成果を基盤とし、様々なCasタンパク質やその巨大複合体へと高速AFMの適用範囲を拡げ、DNA切断ドメインの揺らぎ・構造変化・物性のさらなる理解を深める。得られる研究成果は、Casタンパク質群の分子作動機構を根底から理解することとなり、さらに高度化された新たなゲノム編集ツールの開発を促進することが期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究は、ゲノム編集ツールである様々なCasタンパク質酵素に高速原子間力顕微鏡(以下、高速AFM)を適用し、Casタンパク質がDNAを切断する瞬間を1分子イメージングすることで、その分子作動メカニズムを統一的に理解することを目的とする。2017年に我々は、Casタンパク質の中で最も研究の進んでいるSpCas9に高速AFMを適用し、SpCas9が標的DNAを探索・結合・切断する一連の過程を1分子動画撮影することに成功した。この研究成果を基盤とし、様々な種に存在する多様なCasタンパク質、および、その巨大複合体に対し高速AFMを適用し、DNA切断ドメインの揺らぎ・構造変化・物性を網羅的に解析する。2年目は、黄色ブドウ球菌に由来する小型のSaCas9を用い、sgRNAやDNAのデザイン、および、SaCas9が機能できる高速AFM基板条件と観察バッファー条件の最適化を行った。その結果、SaCas9が標的DNAに結合し、切断する瞬間を捉えることに成功し、論文発表を行った。特に、RNA結合状態において,開いた構造と閉じた構造を遷移する様子や,SaCas9がDNA切断後すぐにDNAから離れる様子をリアルタイムで可視化することに成功した。これまでの研究成果と合わせて,本研究成果はCas9のDNA切断分子作動メカニズムの深い理解につながり,ゲノム編集技術のさらなる高度化を目指した基盤研究となることが期待される。次年度は、さらに別の種(Francisella novicida)由来のCas9やRNA切断酵素Cas13aに対して高速AFM観察を試み、Casタンパク質の核酸切断機構における統一的な分子作動機構の解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初に、SaCas9単体(RNAもDNAも結合してない状態)での高速AFM観察を行った。Cas9タンパク質はタンパク質の中でいくつかのドメインが正しく重なることで立体構造を形成するが,SaCas9単体では,安定な立体構造をとらず,非常に柔軟な構造をとることが分かった。一方,SaCas9を標的DNA配列まで運ぶ役割を担うRNAと結合した, SaCas9-RNA複合体においては,2つの球状ドメインが互いに向かい合う構造をとることが分かった。このRNAによるCas9の立体構造の安定化は,SpCas9でも見られ,RNAがタンパク質の立体構造の安定化に重要な役割を担うことを強くサポートする。また,SaCas9では,2つの向かい合った球状ドメインが閉じたり開いたりする動きを持つことが分かった。さらに,標的DNAに結合したSaCas9-RNA-DNA結合状態では,三つ葉のクローバーのような構造を形成し,全てのドメインにおいて,安定な構造を形成することが分かった。過去に報告したSpCas9の場合では,DNA切断に重要な「ハサミ」部分であるHNHドメインがフラフラとよく動く様子が観察されていたが,SaCas9ではそのような様子は見られず,固く安定した立体構造を形成することが分かった。さらに,DNAの切断時には,HNHドメインが切断部位まで移動し,DNA切断後すぐにDNAから離れる様子が観察された。これまでの研究から,SaCas9は1分子において何度もDNAを切断できる機能を持つことが報告されており,高速AFMでとらえた現象は,SaCas9の機能をサポートする結果である。これらに加えて,高速AFM基板上でSaCas9-RNA複合体が標的配列DNAへ結合する瞬間もとらえ,SaCas9における新たなDNA結合メカニズムの可能性も示した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、FnCas9やCas13aに対してDNA切断における構造変化の直接観察を試みる。FnCas9は他のCas9と異なり、DNA切断部位をstaggered(凹凸のある切断面)に切断する機能をもつ。FnCas9の高速AFM観察から、staggeredな切断がなぜ生じるのかを明らかにする。特に、これまでの結果を受けて、高速AFM基板の最適化を行う。所属研究所内の高分子を専門とする研究者と共同研究を行い、ピラーアレーンを高速AFM基板へ適用し、Casタンパク質の機能性ドメインの動きは制限されず、DNA切断の瞬間を再現性良く捉えることを試みる。 また、近年注目度の高いRNA切断Casタンパク質であるCas13aの高速AFM観察を試みる。sgRNAをタンパク質内部に取り込み、標的DNAを切断するCas9とsgRNAを用いてRNAを切断するCas13aのナノ動態を比較することで、切断する基質の違いが、Casタンパク質のどのような構造変化に違いを生むのかを詳細に議論する。
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