研究課題/領域番号 |
21H01772
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28040:ナノバイオサイエンス関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
内橋 貴之 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30326300)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
|
キーワード | 高速原子間力顕微鏡 / タンパク質 / 一分子 / 一分子計測 / 脂質膜 / 応力印加 / BIN1 / 力学負荷 / ダイナミクス / 微小管 / キネシン / 動態解析 / 機械ストレス / 一軸伸長機構 |
研究開始時の研究の概要 |
メカノバイオロジーの進展により、様々なタンパク質が機械的刺激を感知して機能を変化させることが明らかになってきた。しかしながら、機械的負荷に対するメカノセンサータンパク質の構造/力学応答と機能変調を単分子スケールで計測する手法はなかった。本研究では、高速AFM技術を基盤として、タンパク質に引張/圧縮による力学負荷を印加しながら、構造および力学特性の動態を解析できる技術を確立する。細胞骨格タンパク質フィラメントへの応力印加による構造・力学応答とフィラメント構造の安定性や結合タンパク質との親和性変化、細胞膜変形タンパク質の膜結合や集合体形成能と膜張力との関係を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
前年度に開発した一軸伸張機構付き探針走査型高速AFMを用いて、脂質膜の曲率を感知して膜に結合する分子であるBIN1の曲率依存的な膜への結合を観察した。PDMS基板に応力を加えると、基板表面に応力印加方向とは垂直方向に沿って表面リップル構造を曲率を制御して作ることができた。次にBIN1の脂質膜への結合ダイナミクスを観察したところ、平坦な脂質膜へは明らかな結合は確認できなかった。親和性の高いCNM関連変異体K436Xであっても観察できず、BIN1と平板脂質との相互作用はAFM探針からの外乱で容易に解離するほど弱いか、少なくとも結合時間は最速0.1秒/フレームのイメージング速度を用いた高速FMの時間分解能よりはるかに短いことを示している。一方、曲率を持つ脂質膜表面では0.5秒/フレームのイメージング速度でも、BIN1の脂質膜への結合が明確に観察された。ほとんどのBIN1分子は、脂質で覆われたリップル構造の頂上付近で安定に結合し、側面や底面ではあまり結合しておらず、正の曲率領域への優先的な結合が示唆された。異なる曲率での単分子の脂質膜上での滞留時間のヒストグラムを作り、単指数減衰関数でフィッティングしたところ、脂質膜の曲率が5.59μm-1での時定数は1.83±0.09秒、414.27μm-1での時定数は3.77±0.06秒となった。これは、脂質曲率の違いにより親和性に2倍近い差が生じることを示している。これまでの研究では、BIN1と脂質の相互作用は、脂質の曲率の違いによるBIN1の結合による蛍光強度の変化としてしか解析できなかったが、今回開発した一軸伸張機構付き探針走査型高速AFMにより、脂質の曲率に依存した結合・解離のダイナミクスを1分子レベルで直接測定することができるようになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一軸伸張機構付き探針走査型高速AFMの開発がほぼ終了し、微小管の屈曲、アクチニンのアクチンへの結合やBIN1の脂質膜への結合など、当初予定したサンプルに対する実験を行えることを確認でき、これらの成果をReview Scientific Instrumentsに論文として発表することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
当初2022年度に予定していた、アクチン線維と結合タンパク質のアクチン繊維の屈曲による親和性変化についての実験が、脂質膜とBIN1の測定で予定よりも時間がかかったためにあまり進めることができなかった。最終年度はこの実験を集中して行う。弾性シート基板表面にビオチン化脂質を含んだ平面脂質二重膜を展開し、一部ビオチン化したアクチン線維をストレプトアビジン分子を介して脂質膜に固定する。アクチンストレスファイバーを模すために、α-アクチニンによるアクチン線維の架橋とバンドル化を行い基板に固定する。溶液中にはコフィリンあるいはミオシンIIのアクチン結合部位であるS1部を入れておく。弾性基板の引張でアクチンネットワークに力学負荷をかけながら、アクチン線維の構造変化(らせんピッチとG-アクチンの間隔)とコフィリンおよびS1の結合・解離を観察し、アクチン線維の局所構造の張力依存的変化と結合タンパク質の親和性変化の相関を明らかにする。
|