研究課題/領域番号 |
21H01773
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28040:ナノバイオサイエンス関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
伊藤 健 関西大学, システム理工学部, 教授 (50426350)
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研究分担者 |
小嶋 寛明 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 上席研究員 (00359077)
岩木 宏明 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (00368200)
田中 重光 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (20509822)
永尾 寿浩 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 総括研究員 (30416309)
田中 秀吉 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所, 室長 (40284608)
富成 征弘 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 研究員 (90560003)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | ナノ構造 / 抗菌 / 殺菌 / 相互作用 / 単一細胞 / 殺菌性 |
研究開始時の研究の概要 |
ナノ構造が発現する抗菌、殺菌作用を解明するために、電気化学インピーダンス分光法と蛍光顕微鏡観察を組み合わせることで電極表面と細胞の相互作用を単一細胞レベルで評価する技術を開発すると共に、高速AFMを用いた単一細胞レベルの形態変化のタイムラプス観察法を構築する。 また、生物側の要因を追及するため多種の細菌及び疑似細胞としてリポソームを利用し、それらがナノ構造上でどのような挙動を示すかを評価する。 これら2つの結果をもとに抗菌、殺菌作用を推察する。
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研究実績の概要 |
ナノ構造に付着した細菌は、ナノ構造と細菌の物理的相互作用により細胞外皮が損傷し、やがて死に至ると考えられている。しかし、その詳細なメカニズムについては明らかになっていない。本研究では、メカニズムを解明するために単一細胞レベルでの評価を実施している。 具体的には、(A-1)電気化学インピーダンス分光法(EIS)と蛍光顕微鏡観察を組み合わせることで電極表面と細胞の相互作用を単一細胞レベルで評価する技術を開発すると共に、(A-2)高速AFMを用いて単一細胞の形態変化のタイムラプス観察する手法を構築することを目的としている。A-1では微細加工技術を用いて周期的ナノ構造を有する電気化学計測用電極を作製し、サンプル溶液を保持できる測定用のセルを作製する必要がある。A-2では、そもそも大腸菌やリポソームがどのくらいの硬さを有しているかを評価する必要がある。 また、生物側の要因を追及するため(B-1)多種の細菌及び(B-2)疑似細胞としてリポソームを利用し、それらがナノ構造上でどのような挙動を示すかについても上述した評価法を用いて解析することを目指した。そのため、B-1では、大腸菌が自己溶解する機能(オートリシス)に着目し、それを発現する酵素が欠損した細菌での評価を実施した。また、B-2ではリポソーム作製方法の構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗が遅れているのはコロナ感染症による共同研究の推進の遅れにあるが、一部において論文発表を行うなど研究成果も得られている。研究概要に記載した各項目についての進捗を記載する。 A-1:金薄膜を形成したシリコン基板に電子線(EB)描画装置を用いてナノホールパターン形状を作製し、パルスメッキを用いてそのホール内に金ナノ構造を析出させた。このナノ構造はセミの翅にあるナノ構造を模倣し、規則的に配列されて電極である。また、有効な電極面積を規定するために、上記金ナノ構造電極に対して再度EBリソグラフィを用いて直径100または20µmの電極とした。この電極を作用極とし、対向電極、参照電極をガラス基板上にフォトリソグラフィを用いて形成し、PDMSシートを挟んで対向させマイクロセルを作製した。PDMSシートにはマイクロ流路を形成し、サンプル溶液の注入、回収に成功した。 A-2:大腸菌、及びリポソームの硬さを評価するため、マイカ表面にそれぞれを滴下し、乾燥後のサンプルに対してAFMを用いたフォースカーブから硬さを評価することに成功した。 B-1:大腸菌のオートリシス関連酵素を欠損させた菌株(ΔmltA,ΔmltB,Δstl70)を用意し、それらの細菌がナノ構造表面に付着した後の膜損傷の経時変化を蛍光顕微鏡を用いて評価した。その結果、Δslt70を欠損させたものは他の菌株と比べて著しく膜損傷が減少することが分かった。このことから、殺菌作用は細菌独自のオートリシスに大きく由来していると考えられる。 B-2:A-2とも関連するが、DOPCを用いたリポソームの形成とそのサイズをDLSを用いて評価した結果、細胞サイズ(約1µm)と同等のリポソームの作製に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の結果を受けて各項目に対して、以下のように研究を進めていく。 A-1:実際に細菌やリポソームをマイクロセルに注入し、EIS及び蛍光顕微鏡の同時観察を行う。 A-2:様々なカンチレバーを購入し、大腸菌、リポソームの平坦及びナノ構造あり基板での挙動を高速AFMを用いて評価する。 B-1:大腸菌以外の細菌でも同じようなオートリシス関連酵素の影響があるかを評価するため、グラム陽性菌である枯草菌にターゲットを充てて評価を試みる。 B-2:A-1実験に展開する。
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