研究課題
基盤研究(B)
ルチル型酸化物RuO2薄膜における超伝導の発見は、単純な二元系化合物において可能となる巨大なエピタキシャル歪みが、遷移金属酸化物における強相関電子の自由度の変化と超伝導をはじめとする物性の制御に極めて強力なツールになることを示唆している。本研究では、この巨大エピタキシャル歪みが誘起する新奇超伝導の学理構築を目指す。
本研究では、ルチル型酸化物RuO2の薄膜において発見された超伝導の研究を深め、巨大エピタキシャル歪みが誘起する電子格子状態の変化の解明と新奇超伝導の学理の構築を目指した。同じ基板方位及び膜厚で超伝導を示す薄膜と超伝導を示さない薄膜を作りわけたのち、X線吸収分光によってRuサイトの軌道準位とOサイトとの混成強度の変化を明らかにした。具体的には、もともと等価であった2種類のRuサイトが巨大なエピタキシャル歪みによって非等価になり、フェルミレベル近傍の軌道状態が大きく変化することが明らかになった。さらに、薄膜に対し外部から歪みを印加する手法を開発し、RuO2薄膜の超伝導転移温度の変化を明らかにした。
新しい物性を開拓していく上で、結晶の格子定数ないしボンド長を変化させる歪みは極めて重要なパラメータである。一方で、3%以上の巨大なエピタキシャル歪みを遷移金属酸化物に適用し物性開拓を進めた研究はこれまでほとんどなかった。本成果は、巨大なエピタキシャル歪みによってルチル型酸化物RuO2の電子格子状態が劇的に変化し超伝導が誘起されることを示しており、今後様々な酸化物への研究展開が期待される。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件)
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