研究課題/領域番号 |
21H01810
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
菅 大介 京都大学, 化学研究所, 准教授 (40378881)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
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キーワード | イオン脱挿入 / 水素 / 酸化物薄膜 / 物性制御 / 固体プロトニクス / 酸化物 / 電界制御 / エピタキシャル薄膜 / イオン注入 / 磁性制御 / スピントロニクス / プロトニクス / 酸化物磁性体 / 磁化制御 |
研究開始時の研究の概要 |
酸化物を対象として、その磁性の制御技術を開発する。固体中へのイオン注入、特にプロトン注入とその動き(固体プロトニクス)を基軸とした磁化制御技術を開発する。プロトン導電体であるナフィオンなど固体電解質を介して、酸化物中へプロトンを注入し、磁気特性(磁気異方性など)がどう変調されるのかを解明する。本研究課題の実施により、固体プロトニクスを活用した磁化制御技術の開発を通して、「マグネトプロトニクス」という新しい学理を構築するとともに、酸化物スピントロニクスデバイス実現のための基盤を形成する。
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研究実績の概要 |
固体中への電気化学的なプロトン脱挿入といった固体プロトニクスを基軸とした無機固体材料の伝導性や磁化をはじめとした物性の可逆的制御に継続して取り組んでいる。パルスレーザー堆積法でエピタキシャル成長させた酸化物薄膜を対象として、エピタキシャル薄膜をチャネル、プロトン導電性を有する固体電解質であるナフィオンをゲート絶縁体とした電界効果トランジスタ構造において、プロトンを電気化学的に脱挿入し、物性制御を行った。異なる配向を有する酸素欠損型ペロブスカイト鉄酸化物薄膜を作製し、その電気化学的プロトン注入に対する振舞いを、構造・物性評価や水素量定量分析によって調べたところ、(100)配向を有する薄膜でのみプロトン注入に由来する構造および伝導特性の変化が観測された。この結果はプロトン拡散・伝導が[100]方向に沿って優先的に起こることを示すものである。また、元素置換を施して電子状態を制御すると、酸素欠損型ペロブスカイト鉄酸化物におけるプロトン拡散を飛躍的に向上させることができ、室温においても短時間でかつ高濃度の水素を注入することができることわかってきた。また、電気化学的なプロトン脱挿入伴う電気化学反応によって物性変調可能な物質探索も行っている。ペロブスカイト類縁構造を有するニッケル酸化物においては、プロトン注入に対する応答が結晶軸ごとに異なっており、異方的な電気化学反応およびそれに付随した物性変化も見出せつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で、プロトンの脱挿入をベースにした物性制御技術や、薄膜中の水素の定量分析技術を確立できた。またこれらの実験技術を活用して、高速でかつ高濃度のプロトン脱挿入、さらには、伝導性や磁性といった物性の巨大変調を実現するするための基盤となるような研究成果も得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立した実験技術や学術的知見に基づいて、固体プロトニクスを基軸とした物性制御や物質開拓を目指した研究を推進する。これまで難しかった、室温における、高速でかつ高濃度のプロトン脱挿入、さらには、伝導性や磁性といった物性の巨大変調を実現を目指す。これらの研究を通して、物性制御に固体プロトニクスを活用するための物質設計指針や学理の構築を目指す。
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