研究課題/領域番号 |
21H01815
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
庭野 道夫 東北大学, 歯学研究科, 学術研究員 (20134075)
|
研究分担者 |
但木 大介 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (30794226)
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科, 教授 (50292222)
馬 騰 東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (10734543)
岩田 一樹 東北福祉大学, 総合マネジメント学部, 准教授 (20515457)
山口 政人 東北福祉大学, 健康科学部, 教授 (50326724)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
|
キーワード | ナノバブル / バブル合体 / ナノ反応場 / 界面反応 / 界面構造 / 赤外分光法 / 電子スピン共鳴法 / 核磁気共鳴法 |
研究開始時の研究の概要 |
ナノバブルは超微小サイズの気泡で、通常の気泡にはない特異な性質を有する。特に粒径量子化現象や特異な「バブル合体(Coalescence)」現象に注目し、合体時のナノバブルの気液界面構造、原子分子レベルのバブル合体機構、合体に伴う特異な気液・固液界面反応を、多重内部反射赤外吸収分光法や電子スピン共鳴法、顕微鏡観察法、蛍光分析法などを駆使して多角的・系統的に解明し、ナノバブル特性理解の深化を目指す。特に、特徴的なバブル合体現象は、バブルの安定性やバブル特有の反応に大きく関与していると考えられ、バブル合体現象を切り口として、バブル合体が関わる新規ナノ反応場を開拓することを目的とする。
|
研究実績の概要 |
本年度は前年度に引き続き、ナノバブル界面構造、バブル合体機構、ナノ反応場の解明の研究を進めた。 ・界面構造の研究では、赤外分光計測結果とクラスター計算結果の詳細な比較を行い、界面を構成する水分子クラスターの配列構造とクラスター間に働く相互作用を解明した。クラスター間の相互作用は、クラスターの自由OH基が持つ双極子モーメント間に働くことを明らかにした。この成果は、これまでその成因が解明されていないところの界面張力(水面の表面張力と同じものである)の理解を深めるものである。界面構造に関する一連の研究成果は論文として纏め、現在投稿中である。 ・合体機構については、前年度に提唱した合体物理モデルに基づいてナノバブルの長寿命性の原因を明らかにした。粒径が100nm程度以下に小さくなるとナノバブルの合体が抑制され、この抑制がナノバブルの長寿命化の一つの要因であることを明らかにした。実際に、100nm以下の粒径のバブルは1カ月以上の寿命があることを実験的に確認した。以上の研究成果も論文にまとめ、現在投稿中である。 ・ナノバブルの界面反応の研究では、ナノバブル同士が合体するときに発生する活性酸素について、その発生メカニズム解明のための研究を行い、二酸化炭素内包ナノバブルの場合に活性酸素生成が顕著であることを再確認した。特筆すべき成果としては、水を超音波照射した場合にもナノバブルが大量に発生し、そのナノバブルにも除菌効果があることを確認したことである。この結果は、ナノバブルを活用する上で非常に有用な知見である。また、アルコール中や重水中のナノバブルの粒径分布を計測した結果、これらの溶液中ではバブル径が水に比べて数倍大きくなることが判明した。この結果は、水以外の溶液中では界面構造が水の場合と異なることを示唆している。現在、有機溶剤中ナノバブルの界面構造解明のための研究を鋭意遂行中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・界面構造の解明と合体機構の解明は前年度と同様にほぼ予定通り進展した。一連の研究成果を論文としてまとめ、現在投稿中である。 ・界面反応の研究に関しては、ナノバブルの合体の際に発生すると推測される活性酸素の発生メカニズムの研究を進め、概ね順調に研究が進展した。電子スピン共鳴法や蛍光分析法を駆使して、ナノバブルの合体に伴うと推測される活性酸素発生の内包ガス依存性や粒径依存性を明らかにできた点は期待以上の成果である。 ・本年度の特筆すべき成果としては、水を超音波照射した場合にもナノバブルが発生し、そのナノバブルにも除菌効果があることを確認したことである。これは、これまで報告がない新規性のの高い研究成果である。今後、超音波照射の条件を最適化すればバブルの発生量を向上できると考えている。また、超音波で生成したナノバブルの寿命や粒径分布の調査も現在進めている。さらに、ナノバブルが生成する活性酸素量の計測も蛍光分析法や電子スピン共鳴法で詳細に調べている。通常であれば活性酸素は寿命が短いが、ナノバブルの場合には活性酸素がある程度長期間保持されているという特異的な現象を見出した。この現象はナノバブル特有のものであり、現在その原因解明のための研究を鋭意進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
・界面構造と合体機構に関しては、これまでの研究成果をまとめて論文に投稿中であるが、投稿した論文の査読結果に対する対応を、追加実験も含め迅速に行う必要があると予想されるため、次年度はそれに集中的に取り組む。 ・今後の重要研究テーマの一つは、有機溶媒(アルコールなど)中のナノバブルの挙動の解明である。特にアルコール中のNB界面構造の解明を主に赤外分光法を用いて究明していく予定である。現在用いている赤外分光装置はナノバブルを発生しながら界面反応を計測できるシステムにはなっていないため、ナノバブル界面反応のその場観察できるシステムに改造する予定である。 ・活性酸素発生のメカニズムの解明も重要な研究である。新規購入した蛍光顕微鏡を用いて活性酸素がどのように発生するかを究明する。活性酸素はナノバブルが合体するときに発生するか、あるいは他の成因があるかを、今年度新規購入した蛍光顕微鏡を用いて明らかにする。例えば細菌にナノバブルが付着するときに活性酸素が発生するならば、細菌の周辺部に蛍光が観察されるはずである。
|