研究課題/領域番号 |
21H01864
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
阿部 穣里 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (60534485)
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研究分担者 |
中谷 直輝 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (00723529)
波田 雅彦 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 特任教授 (20228480)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | 相対論的電子相関プログラム / アクチノイド化合物 / 多参照摂動論 / 密度行列繰り込み群法 / CASPT2 / 相対論 / 量子化学 / 電子状態 / 多配置摂動論 |
研究開始時の研究の概要 |
アクチノイド化合物の電子状態は、顕著な相対論効果と複雑な電子相関効果に支配され、補正としての相対論効果や密度汎関数法による電子相関の取り扱いでは記述不能である。一方、福島第一原発事故で生じた放射性廃棄物(燃料デブリ)は、アクチノイド化合物で形成されていると考えられるが、デブリの組成や物性解明に役立つ理論・計算的手法が未確立という問題がある。そこでアクチノイド化合物の電子状態・物性計算を可能とするための、高精度無限次2成分相対論法と多参照摂動論に基づいた相対論的電子相関理論・プログラム開発(2成分-DMRG-CASPT2法)を新規に行う。
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研究実績の概要 |
アクチノイド化合物の電子状態は、顕著な相対論効果と複雑な電子相関効果に支配され、補正としての相対論効果や密度汎関数法による電子相関の取り扱いでは記述が困難となる。本課題では、アクチノイド化合物の電子状態・物性計算を可能とするための、厳密2成分相対論法(X2C法)と多参照摂動論であるCASPT2法に基づいた相対論的電子相関理論・プログラム開発を行っている。1年目はDIRACプログラムとCASPT2プログラムを連携することに成功し、X2C-CASPT2法の計算が可能になった。また並列化対応にも成功したので、UO22+分子を実時間で計算することができるようになった。 2年目の2022年度は、improved virtual orbital法(IVO)の実装を行った。一般のCASPT2法は、CASSCF法やMCSCF法を参照関数とするが、2,4成分の相対論法では計算コストがかかるため、CASCI法を参照関数としている。しかしHF法で得られる仮想軌道をそのまま使うと、CASの中に重要な軌道が入らない可能性がある。そこで、基底状態のHOMOから1電子励起した状態に対してより最適な仮想軌道を生成するIVO法でこの欠点をカバーする。N2分子のポテンシャル曲線において、IVOの適応によって分光学的定数がより実験値に近づき、正しく実装されていることが確認できた。これにより、より高精度に基底・励起状態の計算が可能なった。また活性空間を大きくとるためにRASCI-RASPT2法への拡張も行った。DMRG開発については、非相対論DMRGプログラムの相対論化に取り組み、小さな分子系においては合理的な全エネルギーを得ることができた。少し系が大きくなるとエネルギー値が不安定になるので、引き続きプログラム構成に対して詳細な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IVO-CASCI-CASPT2、IVO-RASCI-RASPT2が可能になったため、UO22+の基底状態・励起状態のポテンシャル曲線を小さい基底関数系で計算した。今後、計算機資源を確保して、大きな基底関数系を用いた高精度計算を行う。またRASの取り方をフレキシブルにすることで、内殻励起の記述ができるようにした。軽い分子においては内殻励起エネルギーの実験値に対してよい一致を示している。DMRGの開発ではハバードモデルを用いた検証をすることでデバッグをし、小分子系への適応に成功した。以上より実用計算に向けた開発が着実に進んでおり、次年度からより具体的な応用計算に取り組めるため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
DMRGに関しては引き続き、デバッグやチューニングを行い重原子系の計算ができるようにする。一方で、Stefan Knecht博士も独立に相対論的DMRGの開発を行っているため、Knecht博士との共同研究・議論を開始し、DMRG-CASPT2の実現のために、CASPT2側で必要な変更を先に施すこととした。特に大量の密度行列データを用いてCASPT2の計算をするために、現在のアルゴリズムを大きく変更する必要がある。また分子軌道変換とその影響を受けた密度行列の作成、密度行列の表現の違いについての修正等、細かな変更点が多いため、その実装に取り組む。最終年度の3年目には、RASCI-RASPT2プログラムの一般公開、論文発表、アクチノイド化合物への定量レベルの応用計算を行う。さらにDMRG-CASPT2のテスト計算ができることを目指す。
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