研究課題/領域番号 |
21H01867
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31020:地球資源工学およびエネルギー学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
羽柴 公博 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (60456142)
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研究分担者 |
福井 勝則 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70251361)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | ロータリーパーカッション / 岩盤 / 掘削 / シミュレータ / さく岩機 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,ロータリーパーカッション掘削の複雑な機構のうち,「応力波の高速伝播機構」と「ビットによる岩盤の衝撃破壊機構」を解明する.それらの機構をモデル化し,申請者が開発したロータリーパーカッション掘削のシミュレータに組み込む.さらに,シミュレータによる感度解析により,ロータリーパーカッション掘削の高度化に適した条件を抽出し,その結果を試作品により検証する.
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研究実績の概要 |
地下深部の探査や開発,科学的調査において,ボーリングによる速く正確で効率的な岩盤掘削技術が求められている.打撃と回転により岩盤を掘削するロータリーパーカッション掘削は,強固な岩盤に適用可能であるが,軟岩用のロータリー掘削に比べると速度は遅く,直進性や耐久性に劣る.そこで本研究では,ロータリーパーカッション掘削の高度化(高出力化,高効率化,高精度化)を目指した検討を行っている. 令和4年度は,令和3年度に実施した複数のボタンチップが埋め込まれたビット(ボタンビット)の岩石への衝撃貫入試験の結果をもとに,ビット先端に加わる荷重とビットの岩石への貫入量の関係(荷重-貫入量曲線)をモデル化した.さらに,これまでに行われてきたボタンビットの岩石への一打撃試験を実施して,衝撃貫入試験の結果と比較することで,実際の穿孔過程の解明において重要な,荷重-貫入量曲線におよぼす回転の影響を明らかにした.それと並行して,1つのボタンチップが埋め込まれたビット(1チップビット)を用いて静的貫入試験と衝撃貫入試験を実施した.静的貫入試験においては,種々の直径の1チップビットを単独で貫入させた場合の荷重-貫入量曲線を取得するだけでなく,貫入によってできた孔に隣接させて貫入させることで,孔間での亀裂の発生やその荷重-貫入量曲線への影響についても調べた.衝撃貫入試験では,種々の直径の1チップビットを用いた試験装置を新たに製作し,荷重-貫入量曲線におよぼすチップ径の影響を明らかにした.これらの試験結果を再現するため,ビットの岩石への貫入挙動の3次元数値シミュレーションプログラムの開発に着手した.これらの成果は雑誌論文や国内学会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において,令和3年度は(1)応力波の高速伝播機構の解明,(2)ビットによる岩盤の衝撃破壊機構の解明,を実施する予定であった.そのために,まず,実際のロータリーパーカッション掘削を模擬し,さらに,これまでよりも大きな打撃エネルギーによる衝撃貫入試験を実施するための装置を開発した.(1)応力波の高速伝播機構の解明においては,当初予定していたチューブ式ロッドでの試験までには至らなかったが,これまでに得られていない条件下での応力波の伝播特性や減衰特性に関する高精度なデータを取得することに成功した.(2)ビットによる岩盤の衝撃破壊機構の解明においても,ボタンビットの貫入特性を解明するために重要な荷重-貫入量曲線を,精度良く求めることができるようになった.令和4年度以降は(3)要素モデルの構築とシミュレータへの組み込み,(4)ロータリーパーカッション掘削の最適設計と試作品による検証,を実施する予定であった. (3)要素モデルの構築とシミュレータへの組み込みにおいては,令和3年度に取得した試験結果をもとに,実際の打撃穿孔におけるボタンビットの荷重-貫入量曲線をモデル化した.さらに,1チップビットの静的貫入試験と衝撃貫入試験を実施し,種々のチップ径や種々の貫入間隔での亀裂の発生やその荷重-貫入量曲線への影響について多くのデータを取得した.これらの試験結果をもとに,(4)ロータリーパーカッション掘削の最適設計と試作品による検証へとつながる,ビットの岩石への貫入挙動の3次元数値シミュレーションプログラムの開発に着手した.これらの成果より,研究全体としてはおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,令和4年度に引き続き(3)要素モデルの構築とシミュレータへの組み込みと(4)ロータリーパーカッション掘削の最適設計と試作品による検証を進め,研究の最終年度として,成果を取りまとめる. 要素モデルの構築とシミュレータへの組み込みに関しては,令和4年度までに整理・分析したボタンビットの衝撃貫入試験の結果に加えて,令和4年度に実施した1チップビットの静的貫入試験および衝撃貫入試験の結果と,1チップビットを隣接させて複数回貫入させた試験の結果を整理・分析し,岩石へのビットの貫入過程を精密にモデル化する.構築したモデルは3次元の数値シミュレーションプログラム,さらには,過去に開発したさく岩機のシミュレータに組み込み,シミュレーションの高精度化を図る. ロータリーパーカッション掘削の最適設計と試作品による検証に関しては,構築したシミュレータにより,種々の条件下での穿孔過程の感度解析を行う.変化させる条件としては,打撃エネルギー,推力,ロッド径,ビットのチップ径とチップ配置などを考えている.さく岩機本体については,現状の機種のモデルがすでにシミュレータに組み込まれているので,それを用いる.感度解析の結果をもとに,ロッドとビットの試作品をいくつか製作し,令和3年度に開発した衝撃貫入試験装置により性能を評価するとともに,シミュレーション結果の検証を行う. これらの成果を,今後のロータリーパーカッション掘削の高度化に資する情報として取りまとめるとともに,雑誌論文や国際学会,国内学会において広く発表を行う.
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